シンガポールがようやく、デジタル銀行の営業免許の交付先を発表した。交付される事業者は、予想されていた5者よりも1者少ない。阿里巴巴(アリババ)傘下のアントグループ、SingtelとGrabによる企業連合、インターネットサービス企業のSeaなどがそれぞれ営業免許を取得し、2022年前半から営業を開始するとみられる。
交付先の決定は、当初6月に予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により約半年延期され、今回ようやく発表された。交付先に選ばれた事業者はまだ、関連する詳細な要件と免許取得の前提条件をすべて満たす必要があり、その後に免許を交付されると、シンガポール金融管理局(MAS)は現地時間12月4日の発表で述べた。
GrabとSingtelからなる企業連合とSeaの2者は、デジタルフルバンク免許を交付される。Greenland Financial Holdings、Linklogis Hong Kong、Beijing Co-operative Equity Investment Fund Managementからなる企業連合とアントグループの2者は、デジタルホールセールバンク免許を交付される。
フルバンクの交付事業者は、金融サービス全般を提供し、個人客からも資産を預かることができる。一方のホールセールバンクの交付事業者は、中小企業など法人にサービスを提供する。これまでは、シンガポールに本社がありシンガポール人が管理する企業のみに、デジタルフルバンク免許の申請資格があった。進出を望む外国企業は、現地企業と合弁企業を立ち上げ、その合弁企業はシンガポールに本社を置き、シンガポール人が管理する必要があった。
MASは当初、市場に多様性をもたらし、非金融機関がデジタルバンキングサービスを提供できるようにする取り組みの一環として、最大5行のデジタル銀行免許を交付する計画を発表していた。これに対し、21件の応募があったという。申請企業の中には、健康やライフスタイル関連サービスを手がける国内ブランドV3 Groupと非接触カード会社EZ-Linkが率いる企業連合や、ゲームハードウェアメーカーRazer、インターネット会社Seaなどの名がある。この候補リストはその後、14陣営に絞り込まれた。
今回の発表では、ホールセールバンク免許の交付枠を1つ残したことになる。
MASによると、選ばれた2事業者は、試験的に導入したというホールセールバンク免許に必要な基準全体で「明らかに他社より優れている」と評価されたという。MASは今後、この免許の交付数をさらに増やすかどうかを検討するとした。
MASはさらに、ビジネスモデルのバリュープロポジション(価値提案)や、テクノロジーの「革新的な利用」による顧客サービスの提供、持続可能なデジタルバンキング事業を管理する能力に加えて、成長の見込みやシンガポールの金融業界への貢献度に基づいて、すべての応募企業を評価したと述べた。
MASでマネージングディレクターを務めるRavi Menon氏は、デジタルバンク免許の交付を受けた企業について、既存の銀行とともに繁栄し、特に現在サービスが十分に行き届いていない事業や消費者に「質の高い」金融サービスを提供することが期待されるとした。
4日の発表を受けて、シンガポールの大手DBS銀行は新たな競合の誕生を歓迎する短い声明を出した。
GrabとSingtelからなる企業連合は、2021年末までに200人で構成される専任チームを置き、2022年初めにデジタル銀行を開業する計画だという。
バンキング、フィンテック、テクノロジーの分野で経験がある専門家チームの構築を始めており、製品、データ、サイバーセキュリティ、テクノロジーを統括する重要な役職は既に埋まっているという。従業員にも、サイバーセキュリティーおよびデータセキュリティー、データサイエンスおよびアナリティクス、ITエンジニアリングの技能を習得させるとしている。
同企業連合の最高経営責任者(CEO)に就任したCharles Wong氏率いるデジタル銀行は、消費者だけでなく、収入が不安定なギグワーカーや、金融サービスを利用しづらい零細企業などにもサービスを提供することを目指している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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