新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの人々が集まるリアルイベントの開催が難しくなってから久しい。そのため、多くの企業はこれに代わるオンラインセミナーを開催したり、今後開催しようと考えているのではないだろうか。
しかし、オンラインセミナーツールも多種多様だ。どのツールが自社のイベントに適しているのか、判断できず二の足を踏んでいる企業もあるだろう。そこで、CNET Japanがメディアとして自社イベントを開催することで、さまざまなオンラインセミナーツールを自ら体験。それぞれの使い勝手や各種機能の使い方などを解説していく。
今回紹介するのは、Adobeが提供しているビデオ会議システム「Adobe Connect Webinar(アドビ コネクト ウェビナー)」。その特徴は何と言っても、ウェビナー画面を自分好みに“カスタマイズ”できることだ。たとえば、事前にスライドや動画をサーバーにアップロードして、2つの資料を同時に表示したり、それぞれの窓の配置をドラック&ドロップで直感的に変えたりすることができる。
CNET Japanでは「コロナで加速する『遠隔』のビジネスやライフスタイル ~距離や身体の“制限”から解き放つ~」と題したオンラインセミナーを開催。ここでツールスポンサーという形で、500名まで視聴できるAdobe Connect Webinarのライセンスを使わせてもらえることになった(通常の料金は年額52万円※税別メールベースのサポート込み)。
そこで、セミナー本番までの設定方法や、当日の操作方法などについて紹介していこう。なお、CNET JapanがオンラインセミナーでAdobe Connect Webinarを使用した後に、新バージョンが公開されている。そのため、UIや機能など記事でご紹介する内容と一部異なる箇所があることをご理解いただきたい。また、新バージョンの変更点は記事後半にてご紹介する。
まずは、Adobe Connect Webinarの設定方法について紹介しよう。同ツールには集客機能なども備わっているが、CNET Japanでは自社で別途集客をしているため、今回はウェビナーの設定と開催にフォーカスする。
まず、Adobe Connect Webinarの管理者ページ(ホーム画面)にログインし、「セミナー」→「共有セミナー」→「フォルダ」→「新規セミナー室」の順にアクセスする。すると会議情報の入力という画面に遷移するため、そこでセミナータイトルや概要、過去のテンプレートの利用の有無、アクセス権限など詳細を入力する。アクセス権限については、登録ユーザーのみ、URLを知っているすべての人、許可されたゲスト、など運営スタイルによって選ぶことが可能だ。
また、Adobe Connect Webinarでは、セミナー主催者とパネリストはPCアプリのインストールが必須となる(最新バージョンでは不要になった)。視聴者もPCアプリが最も快適に視聴できるが、ウェブブラウザからも参加できる。ブラウザ視聴を可能にしたい場合には、「参加者向けにHTMLクライアントを有効化」にチェックを入れよう。そのまま必要事項を入力していくと視聴者向けのセミナーURLが発行される。
セミナーURLをクリックすると、Adobe Connect WebinarのPCアプリが立ち上がる。デフォルトは「スタンバイモード」となっており、最大10名しか入れないようになっている。Zoomウェビナーの「実践セッション」をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。本番を開始するまではパネリストや関係者だけで、ビデオや音声、スライド投影のテストなどができる。
パネリストなど登壇者が揃ったら、メニューから「会議」→「アクセス入室」→「保留」を選ぶことで、新たなゲストが参加できなくすることが可能だ。準備が整ったら画面右上にある「本番開始」ボタンを押すことで、視聴者も入れるようになる。なお、セミナーの詳細を登録するタイミングで、事前にセミナー開始時間を予約設定して本番に臨むことも可能だ。
このほか、ウェビナー画面のメニューから「会議」→「録画の開始」を選ぶことで開催中の模様を録画することもできる。
続けてAdobe Connect Webinarの特徴であるウェビナー画面のカスタマイズについて紹介したい。Adobe Connect Webinarでは、視聴者が見るウェビナーの画面内の配置を、その内容にあわせて自由に変えることができる。たとえば、スライドの表示位置を画面左寄せ、その下に動画、右にはQ&Aとチャットと投票の小窓、といった具合だ。また、最初から用意されているレイアウトのテンプレートを使うことも可能だ。
このそれぞれの機能を備えた窓のことを、Adobe Connect Webinarでは「ポッド」と呼んでおり、画面上部のメニューから好みのポッドを選んで画面上に表示できる。また、それぞれのポッドをドラッグ&ドロップで動かしたり、窓のサイズもマウスを使って大きさを変えることができる。ここまで自由度の高いウェビナーツールは中々ないだろう。
なお、セミナー主催者とパネリストの画面には視聴者は見ることのできない、専用のポッドが表示される。出席者一覧やプレゼンター(パネリスト)専用のチャット、そして視聴者の参加度を可視化するダッシュボードだ。こちらはアプリからの視聴者のデータに限るが、Q&Aや投票への参加率が把握できる。主催者はこれらのポッドを活用しながら、セミナーを進行できるというわけだ。
また、私がAdobe Connect Webinarを使って感じた最大の魅力は、前述したようにプレゼンに使う投影資料を事前にサーバーにアップロードできることだ。たとえば、ZoomウェビナーではパネリストのローカルPCに保存されているPowerPointなどのスライドを画面共有してもらうことになるが、画面共有の操作中に誤ってデスクトップ画面が映ってしまったり、そもそも画面共有に失敗してしまったりするリスクがあり、本番当日まで不安が残る。
その点、Adobe Connect Webinarなら事前にPowerPointやPDFなどの資料や動画ファイル(mp4形式)をアップロードして、ポッド上に表示しておけるので安心だ。また、ポッドの大きさを調整すれば、たとえばスライド1つと、動画2つを同時に表示するといったことまでできてしまう。さらに、事前に共有したスライドや動画は、パネリストであれば誰の資料であっても自由に操作ができるため、話者を交代するタイミングで、もたつくといったことも避けられる。
リアル会場で聴くセミナーと違って、視聴者がいつでもすぐに離脱できてしまうウェビナーでは、こうした資料の切り替えにかかる数秒の時間も非常に重要になってくる。事前アップロード機能によって、この心配を解消できるのは嬉しい。
ただし、注意点もある。画面上に表示するファイルが多いほど負荷がかかるため、主催者PCのマシンスペックがある程度ないと動作が重くなることがある。とはいえ、あまり画面上に資料や動画があると視聴者のストレスにもなるので、表示する数はほどほどがいいだろう。
また、PowerPoint内に埋め込んだ動画の再生には対応していないため、使いたい場合は動画のポッドが必要になることもお伝えしておきたい。このほか、スライドは枚数が多いと、めくった際に少し読み込みに時間がかかることがある。こちらは本番開始前に、一度すべてのスライドを読み込むことをお勧めする。
そして、いよいよウェビナー本番。主催者は管理画面から対象のセミナーを選んで、画面下の「セミナー室に入る」を押すとAdobe Connect Webinarアプリが立ち上がる。
Adobe Connect Webinarでは、出席者一覧の中からパネリストとして招きたい人を選んで、ステータスをプレゼンターに切り替えることで、パネリストに加えることができる。
また、入室してもいきなり自分の顔が表示されることはなく、「Webカメラを開始」→「共有の開始」という二段階を経て、顔が表示されるようになっている。自分がどのような映り方をしているかを事前に確認できるのはありがたい。同様にマイクもデフォルトではオフのため、手動でオンにしよう。パネリストの表示方法も、全員を同じサイズで並べるか、話者だけを拡大表示するかの2パターンから選べるので、事前に設定しておこう。
この日は、avatarin代表取締役CEOの深堀昂氏と、イトーキ 先端研究統括部 統括部長の大橋一広氏の2名をパネリストとして迎え、私がモデレーターを務める形で3名で進行した。それぞれの自己紹介のあと、各社が提供する遠隔ソリューションについての取り組みやコロナ禍の事例、今後の展望を語ってもらい、最後に視聴者からの質問に答えていくという流れだ。
事前にパネリストと操作方法も含めたリハーサルをしていたこともあり、本番中は大きなトラブルもなくスムーズに進めることができた。特に事前にアップロードしたスライドめくりや動画再生などは、3名でまわしていても切り替えがとても楽で、期待以上に操作性の良さを感じることができた。また、視聴者からも多くの質問が寄せられ、盛況のままウェビナーを終えることができた。
Zoomウェビナーとの違いが、Adobe Connect Webinarではセミナー終了後もルームが残り続けることだ。そのため、チャットやQ&Aに寄せられたコメント、当日に使用したスライドや動画なども、配信時と同じレイアウトのまま振り返りつつ、改善すべき点などを確認できる。
また管理画面では、次回開催のために便利な機能も多数備わっている。参加者のログデータを確認できるのはもちろんのこと、録画した動画をそのまま編集できるほか、アップロードしたスライドなどを次回のセミナーのために残しておくことができる。さらにウェビナーの設定をテンプレート化して次回すぐに適用することも可能。この辺りの機能は、ぜひ活用したいところだ。
CNET Japanがウェビナーを開催した際には「Adobe Connect Webinar 10」を使用していたが、現在提供されている「Adobe Connect Webinar 11」では、UIがより先進的になっただけでなく、いくつかの機能面での改善点があるため、こちらもご紹介しよう。
最も大きなアップデートが、これまでアプリのインストールが必須だった主催者やプレゼンター(パネリスト)も、視聴者と同様にウェブブラウザだけでウェビナーを開催できるようになったこと。ポッドの配置やレイアウト変更、録画の開始・停止といった操作もブラウザのみで完結できる。
また、これまでは主催者のみが可能だった、PowerPointファイルや動画ファイルのアップロードや共有、Q&Aの管理などを、パネリストもできるようになった。録画エディターやセミナーカレンダー、イベントレポート、ダッシュボードなど、これまでFlashベースだったすべてのインターフェイスはHTMLに更新されている。
そのほか、ノートポッド内にハイパーリンクを追加する機能や、会議中に誤ってポッドを移動することを防ぐレイアウトロック機能、録画のアラーム設定の追加や、mp4ビデオの自動バッファー設定の追加、といったアップデートが実施されている。
最大25名まで参加できる30日間の無償体験版も用意されているので、ぜひ進化したAdobe Connect Webinarを試してみていただきたい。
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