麻倉怜士のデジタル時評--4K8K勢ぞろい、テレビ最新事情【シャープ、東芝、LG編】 - (page 3)

LG、積極果敢にテレビ市場に取り組む--「有機ELで8K」の意義

 8KはNHKが開発した放送フォーマットだが、8Kテレビをリードしているのは、むしろサムスン、LGエレクトロニクスといった韓国メーカーだ。最も早く、2018年9月のIFAで8Kテレビを発表したのはサムスンで、現在3シリーズ11モデルを欧米で展開している。しかしサムスンは日本でテレビを展開しておらず、日本で韓国ブランドの8Kテレビを購入できるのはLGエレクトロニクスのみ。LGはサムスンに劣らず、2019年秋に世界初の8K有機ELテレビを発売し、先んじている。

 世界初の8K有機ELテレビとなった「Z9」シリーズは、韓国、英国、独国、日本、米国などで発売。当時8Kチューナーが適切な価格で入手できなかったため、8Kテレビではなく8Kディスプレイとして登場した。LG内部でもチューナーを搭載せず、「アップコンバート専用機」として発売することについてはかなり議論がかわされたらしいが、最終的に「世界初の8K有機ELを、この時期に出すことが、戦略的に必要」と判断し、BS8Kが放送されている日本市場にもあえて、チューナーなしの8Kテレビを投入したのである。

 この時期、日本市場における8Kテレビはシャープが2018年11月に発売していた「AQUOS 8K AX1」シリーズのみ。8Kチューナーは非搭載だったとは言え、有機ELの8Kテレビが発売されたことに業界はかなり驚いた。

 2020年に入り、8Kチューナーを搭載した有機ELテレビ「OLED ZX」シリーズが登場。あわせて8Kテレビの液晶モデル「NANO 99」シリーズも発売した。これにより日本国内では計4モデルの8Kテレビをラインアップしている。これは、シャープの8K液晶「AQUOS 8K 8T-C70CX1/C60CX1」、ソニーの8K液晶テレビ「BRAVIA KJ-85Z9H」を凌駕。数では日本最大の8Kテレビメーカーということになる。

「OLED 88ZXPJA」
「OLED 88ZXPJA」
「75NANO99JNA」
「75NANO99JNA」

 8Kテレビとしての質も良い。一般的に液晶では、8Kらしい精細感を感じるのは意外に難しい。画素数と解像感の関係を考えると、SDからHDへは大幅にジャンプし、精細感が目に見えて増したが、4Kから8Kでは、その「有り難みカーブ」が寝てくる。画素数は4倍になるのだが、画素サイズも小さくなり、それだけでは、画素数が増加することによる精細感向上の有り難みはなかなか感じられない。

 そこで必要になるのがコントラストだ。テレビメーカーの画質つくりの最前線では「高画素数とコントラストは表裏一体」という考えが浸透しつつある。微小信号に確実にコントラストが付くことで、その部分の白と黒の対比感が増し、見た目には精細感に効く。だから黒に強い有機ELは、8Kを介けるのである。その意味では、有機ELは8Kの本命ディスプレイだ。「有機ELで8K」の意義がそこにある。

 その意義は、ZXの画質にもありありと表れている。しっかりとしたコントラストに支えられ、微少な部分も明解に造形する。シネマモードで視聴したが、無理して精細感を出すのではなく、生成りの情報を有機ELが持つコントラストを利用して、あるがままに出すという絵作り。自然でかつ上質な精細感が感じられる。暗部の階調表現は2018年のZ9より向上し、新8Kパネルそのものの性能も上がっている。「有機ELで8K」実現したLGの課題はアップコンバート。明らかに国産ブランドの後塵を拝している。要改良だ。

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