CNET Japanでは、最先端のテクノロジービジネスを生み出す業界のキーパーソンと読者が交流できる場として、年に数回にわたり数百名規模のビジネスカンファレンスを開催している。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、ご多分に漏れず、当面はリアルイベントの開催が難しくなってしまった。
とはいえ、この状況を嘆いていても仕方ない。ピンチをチャンスに変えるべく、CNET Japanとして初となるオンラインセミナーを5月に開催することにした。初回のテーマは、まさに新型コロナウイルスの影響を最も大きく受けている「飲食業界」にし、飲食店をテクノロジーでいかに支援できるかを議論するイベントにした。
ライブ配信ツールに選んだのは「Zoomウェビナー」。すでに同ツールの使い方についてはさまざまな記事が見つかるが、メディアとしての体験レポートはまだ少ないため、CNET Japanではどのような設定でZoomウェビナーを利用したのか、当日はどんな機能を使ったのか、配信の際に何を気をつけたのかなどその一部始終を紹介しよう。今後、オンラインセミナーの開催を検討している人の参考になれば幸いだ。
オンラインセミナーを開催するにあたり、一番悩んだのがライブ配信ツールの選定だった。「V-CUBE セミナー」や「Cisco Webex Events」「YouTube Live」などさまざまな選択肢がある中で、どのツールが適しているのかを、使ったことのない状態で見定めるのはなかなか難しい。
今回のオンラインセミナーでは、(1)新型コロナウイルスの感染を防ぐため、登壇者がそれぞれの拠点から参加する多拠点でのパネルディスカッションであること、(2)視聴者は不特定多数ではなくある程度どのような人が参加してくれたかを把握できること、(3)投票アンケートやQ&A機能によって、適度なインタラクティブ性があることなどを重視した。ただし、無料イベントだったため、有料チケット機能などは必要なかった。
これらの条件を満たしているツールはいくつかあったが、CNET Japan編集部として、すでに社内外のウェブ会議に「Zoom」を利用しており、最低限の使い勝手が分かっていたこと。また、月額2000円の有料版のZoomを契約していれば、月額2万円ほどの追加料金で500名までのオンラインセミナーを開催できる点などを考慮して、Zoomウェビナーを最初の配信ツールに選んだ。
ここからは基本的な設定方法を紹介しよう。Zoomウェビナーに契約すると、Zoomにサインインした際のホーム画面左側に「ウェビナー」の項目が追加される。これを選び「ウェビナーをスケジュールする」というボタンをクリックする。この際に、過去に開催したウェビナーの設定を保存したものがあれば、それをテンプレートとして使うことも可能だ。
ウェビナーの設定画面は、基本的にはZoomミーティングと変わらない。トピック(イベントタイトル)、説明、開催日時、登録が必須かどうか、パスワードの有無、入室時のビデオと音声のデフォルト設定などを選んでいく。
Zoomミーティングでは、入室時に参加者をミュートにする、待機室を有効にするといった細かな設定ができる「ミーティングオプション」があるが、ウェビナーでは質疑応答や、認証されているユーザーのみ参加できるといった「ウェビナーオプション」を選べるので、セミナーの内容に応じて変えるといいだろう。
今回のセミナーでは、視聴者のパスワードを必須にし、質疑応答を有効、自動的にウェビナーを録画(ローカル保存)する設定にした。また、当日のオペレーションやスライド切り替えもモデレーターの私が実施するスタイルにしたので、ホストの代わりにウェビナーを開催できる「代替ホスト」は設定しないことにした。
一通り設定を終えて「スケジュール」ボタンを押すと、ウェビナーの管理画面に移行する。この状態で「このウェビナーを開始」ボタンを押せば、すぐにオンラインセミナーを開始することができるが、この管理画面でより詳細な設定をすることができる。
管理画面下部には、「招待状」「メール設定」「ブランディング」「投票」「質疑応答」「統合」「ライブストリーム配信」といった項目が並んでいる。
まず「招待状」では、パネリストとして招待したい相手のメールアドレスを入れて保存することで、パネリストを招待できる。また、参加者に知らせるための招待状情報をコピーできる。
「メール設定」では、登録者への確認メールや、参加者へのリマインダーメール、フォローアップメール、欠席者へのフォローアップメールなどを送ることができる。「ブランディング」では登録画面にバナーやロゴを入れたりすることができる。今回のセミナーでは、自社サイトやメール配信システムを使用して集客やメール配信をしたため、これらの機能は使わなかった。
「投票」はセミナー中に参加者に対してアンケートができる機能で、事前に設問を設定する必要がある。ここでは、2つほどアンケートしたい内容を設定した。
「質疑応答」はQ&A機能を使う際に、匿名での質問を許可するか、他の参加者に質問を閲覧可能にするかといった設定ができる。今回のセミナーでは、匿名での質問を許可し、他の参加者の質問もみられるようにした上で、賛成する質問には「いいね」を押せるようにした。
「統合」ではセールスフォース・ドットコムが提供するマーケティングオートメーションツール「Pardot(パードット)」によって、参加者情報から見込み顧客を把握することができる。ライブストリーム配信では、Zoomウェビナーの模様をYouTube Liveなどでより多くの人に視聴してもらうことができる。これらの機能は今回は不要だったため使わなかった。
ウェビナーの設定後もいろいろと準備は必要になる。Zoomに限らずウェブ配信ツールを使ったオンラインセミナーでは、スライドを投影することが多いと思うが、いちいち登壇者ごとにスライドの画面共有を切り替えていると、環境によってはうまく表示されないトラブルが起きたり、待ち時間に視聴者が離脱してしまいかねない。そのため、スライドは事前に登壇者から送ってもらい、進行にあわせて運営が統合したスライドを、モデレーターやホストが切り替えていくスタイルがいいだろう。
また、オンラインセミナーでは、当然ながらリアルのイベントのように来場者用の受付けスペースはない。そのため、開演まで参加者の画面に表示する“ウェルカムスライド”を1枚用意しておくといいだろう。今回のセミナーでは「開演前にこちらをチェック」と記載し、冒頭に投票機能を使ったアンケートをすることや、質問を随時Q&Aに受付けること、またSNS投稿用のハッシュタグを設けていることなどをアナウンスした。
さらに、Zoomでは「バーチャル背景」を設定できる。その日のイベントを象徴するようなバーチャル背景を事前に用意し、登壇者全員に設定してもらうと、多拠点でのパネルディスカッションでも一体感を作りやすいのでオススメだ。
また、少しでも配信中の画質を上げるため、それぞれの登壇者のZoomのビデオ設定を「HDを有効にする」に変えることも忘れないでおきたい。
もちろん、PC内蔵のカメラでも配信はできるが、より高画質を求めるのなら、別途ウェブカメラを設置したり、デジタル一眼レフカメラを「ウェブカメラ化」したりするといいだろう。
今回のセミナーでは編集部スタッフの配信機材(HDMIキャプチャーデバイス:BlackMagic DesignのATEM Mini、カメラ:α7RII、レンズ:SEL28F20、マイク:ZOOM H2n)を使用することで、高画質・高音質な環境を構築することができた。
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