いまや世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルス。電子的な行政システムを取り入れ「電子国家」と呼ばれているエストニアでも、日本と同じく緊急事態宣言が出されたが、そんな中でユニークな取り組みが実施された。「新型コロナウイルス」をテーマにしたオンラインハッカソンだ。
2016年にエストニアに移住し、現地のタリン工科大学を卒業した筆者(27歳)が、このオンラインハッカソンが実施された経緯や、世界各国への広がりについて解説する。ただし、あくまでも筆者の実体験に基づく内容であることをご理解いただきたい。
新型コロナウイルスが世界へ与えた影響は計り知れない。複数人が1つの空間に集まることへの制限によって、世界中で多くの行動や経済活動が制限された。エストニアでも、3人以上での一緒の外出について警告された。
この危機的状況から脱却すべく、エストニアから誕生し、欧州へと波及をしたムーブメントが「Hack The Crisis」だ。
Hack The Crisisとは、エストニア政府主導のInnovationラボであるAccelerate Estoniaが提案し、ハッカソン運営団体であるGarage48や、スタートアップコミュニティ、経済団体、政府などが実施したオンラインハッカソンである。
緊急事態宣言が出されてから、突然の開催だったにもかかわらず、このオンラインハッカソンには20カ国以上から約1300人が参加した。そこには、新型コロナウイルスの影響で危機的状況になった現状を変えるべく、ビジネスや教育など、あらゆる分野で活躍する人材が参加した。
エストニアの国づくりにおけるテックコミュニティは、エストニア政府にとっても今の電子国家を作り上げてきた歴史で、極めて重要な存在である。実際に、現エストニア大統領であるケルスティ・カリユライド氏も、地元のハッカソンに顔を出したことがあるなど、政府とテックコミュニティは深い関係が根付いている。筆者も過去に参加したハッカソンで、現エストニア大統領を目にしたこともあった。
優秀賞に選ばれたチームは、Accelerate Estoniaから賞金5000ユーロ(約59万円)と2カ月間のブラッシュアップ期間が獲得できる。また、2カ月後もそのプロジェクトが継続していれば、さらなる支援を受けることができる。
Hack The Crisis は3日間開催され、約80ものアイデアが誕生した。その中から優秀賞を獲得したのは以下の5チームだ。
また、このような優秀なチームがアイデアを実現するために、多くのコミュニティとスポンサーが支援を提供した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」