NPO法人ジャパンハートは5月1日、オンライン記者会見を開催し、医療現場へ最適な物資を最速で届けて医療崩壊を防ぐためのプロジェクト「ジャパンハート ソーシャルネットワーク」を始動したことを発表した。オンラインを通じて医療・介護現場の在庫を正確に把握し、自治体や支援企業から適材適所に必要な物資を届ける。
ロート製薬や日本交通など7社の支援企業の代表者が支援内容を紹介したほか、医療従事者からは逼迫する医療現場の課題が共有された。
国際医療NGOであるジャパンハートは、ミャンマーやカンボジア、ラオスにおいて無償で子どもの診療・手術をしているほか、ASEAN圏内で大規模災害時の医療支援チーム派遣、日本国内でも僻地・離島への医療者派遣などを実施している。
今回の新型コロナウイルス感染拡大を受け、ジャパンハートは4月中旬に「#マスクを医療従事者に」プロジェクトを実施。約1週間で、支援者は約1万5000人に上り、クラウドファンディングやチャリティオークションを通じて、約1億5000万円を“爆速”で調達した。
ジャパンハート最高顧問 兼 ファンダーの吉岡秀人氏は、「ワクチンができるまでは、医療者が最後の砦となる。守らなければならないと考え、集まった資金で医療用マスクを200万枚用意した。609の医療機関に配布予定だ」と話した。
しかし、このプロジェクトを通じて、新たな課題が見えたという。それは、防護服やPCR検査時にも使用する綿棒や手袋など、マスク以外の物資の圧倒的な不足、在庫管理体制や外部との連携体制の混乱、介護施設や在宅医療施設などでの物資不足の深刻さなどだ。
「いままではとにかく医療者にマスクを届けることを優先していたが、今後は、医療や介護の現場に医療物資をもっと適切にタイミングよく配布するという戦略に切り替えていく」(吉岡氏)。医療・介護現場の在庫を正確に把握し、適材適所に必要な物資を届けることをミッションとして、新たなプロジェクト「ジャパンハート ソーシャルネットワーク」が始動したのだ。
仕組みはこうだ。病院や介護施設などが、ジャパンハート ソーシャルネットワークに在庫状況などを発信。政府機関や自治体、医師会、支援者(法人・個人)が緊急度を確認し、必要に応じて最適な物資を届ける。また、平時においても医療コミュニティとして機能するように、参加者同士の日々の情報交換やコミュニケーションの場を提供する。
ジャパンハートは、医療機関と利害対立のないNPOだ。登録医療従事者数は1600名以上で、多様な医療機関とのつながりがある。このポジションとリソースを活用し、需要と供給をタイムリーにつなぐ情報ネットワーク構築を目指す。
背景には、東日本大震災の時の反省があるという。吉岡氏は、当時を振り返って、新たな仕組み作りの必要性をこう語った。
「物資がないときは全然ない、届き始めたら余るほど届く。現地を訪れた医療ボランティアが、医療を必要とする人や地域にたどり着けない。マッチングがうまくいかず、“善意の力が無駄になる”ということが起きた。私たちは、東日本大震災やコロナウイルスを経験して、もう何が起きてもおかしくはないことに気づいたはずだ。戦争や南海トラフの地震など、今後どういうことが日本で起きるのか、予想はできない。だからこそ、医療と支援企業を組み合わせて、有事の際に対応できる仕組みを、誰かが作っておかなければならない」(吉岡氏)
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