2020年3月、AppleはMacBook Airをマイナーチェンジした。基本的には2018年10月にフルモデルチェンジした13インチRetinaディスプレイを搭載したモデルがベースとなっているが、今回新たにMagic Keyboardが搭載されたこと、そしてプロセッサの選択肢が拡がったことで、製品としての完成を見た、といってもいいだろう。
MacBook Airは、Appleで最も人気のある、販売台数が多いMacだ。しかしAppleが「最も人気があるコンピュータ」と言わない理由は、すでにAppleはiPadを「コンピュータ」カテゴリに格上げしているからだ。
Appleの歴史は、コンピュータの民主化の歴史でもある。1984年、モニタ一体型でマウス操作が可能なコンピュータ、Macintoshからスタートした。これにより、買ってきてキーボードとマウス、電源さえつなげばすぐに利用できるため、パソコンに関わるセットアップ、そして使い始める際のハードルは極めて下がった。
昨今Appleが「コンピュータの標準機」へ昇格させたiPadはどうだろう。iPadも、1枚の板で本体とタッチスクリーンが完結し、基本的にはこれだけで操作できる。
しかし少し何かやろうとすると、アクセサリに頼ることになる。まず、自立しない。またキーボードは画面内に再現され、実際慣れればそれなりのスピードでのタイピングも可能ではあるが、多くの人に反論されるだろう。新たにマウスに対応しているが、これも外部装置が必要だ。
デバイスの目的が違うとはいえ、iPadでPCの代替をしようとする場合、アクセサリによるトランスフォームが必要となる。もちろんアクセサリの多様化で可能性は広がるが、その分シンプルさは失われていくことになる。
その観点でいくと、MacBook Airはスタイルこそ、画面と本体、キーボード部分を折りたためる現代のノートパソコンのそれだが、初代Macintosh以来のハードウェアのシンプルさを極めた製品と評価できる。
買ってきてディスプレイを開けばセットアップが始まり、15分程度で使い始められる。バッテリーも11時間持続するため、持ち運ぶ際も、ACアダプタなしにノートパソコン1つを持っていけばいい。筆者みたいに白い画面に文字を打ち込んでいく仕事であれば、使う人の方が根負けするほどだ。
2018年、Appleは長らくアップデートしてこなかったMacBook Airを全面的に刷新し、RetinaディスプレイとThunderbolt 3ポートを備えるモダンなノート型Macへ進化させた。
MacBook Airは教育目的での利用から、オフィスユース、一部プロユースまでカバーするマシンとなっていた。例えばスモールビジネスを展開する出張の多い経営者にとっては、メインマシンとして壊れにくく、十分なパフォーマンスを備えるマシンだったし、アプリ開発を行うエンジニアにとっても、打ちやすいキーボードと外部ディスプレイ接続の拡張性から人気があったのだ。
しかし2018年モデル、価格改定された2019年モデルには、プロセッサの選択肢が1.6GHzで動作する第8世代デュアルコアIntel Core i5しか用意されていなかった。少しでもパフォーマンスを求めようとすると、MacBook Proを選ばなければならず、MacBook Airは非常に消極的な選択肢となってしまっていたのだ。
2020年モデルではこの問題が解決された。ベースモデルは1.1GHzデュアルコアIntel Core i3を搭載し、これに加えて1.1GHzクアッドコアIntel Core i5、さらに1.2GHzクアッドコアIntel Core i7も選択できるようになった。いずれもIntleの第10世代プロセッサで、グラフィックスはIntel Iris Plusとなり、前のモデルに比べて8割強化され、6Kディスプレイへの出力にも対応した。
そのため、たとえば1.1GHzクアッドコアIntel Core i5、メモリ16GB、ストレージ512GBといった構成にしておくことで、簡単なビデオ編集を含むほとんどの作業を快適にこなすことができるだろう。この構成での価格は15万4800円(税別)だ。
ただし、性能のいいプロセッサを選ぶ必要があるか?といわれるとそうでもない。
筆者がレビューしているのは、10万4800円(税別)、学生や教育関係者向けには9万3800円で販売される1.1GHzデュアルコアIntel Core i3とメモリ8GB、256GBストレージのベースモデルだ。
この原稿を書きながらAdobe Lightroom CCで写真を調整し、SlackとZoomでコミュニケーションをとりながらKeynoteで資料を作るなどしているが、今のところ、ファンが回る機会はほぼなく、快適に使い続けている。一通りアプリを入れて、アプリのデータが蓄積されるiCloud Driveや「写真」ライブラリは必要なので全て同期しているが、OneDriveやDropboxの同期が賢くなったことで必要なファイルのみの動機となっており、ストレージも150GB近くが利用可能な状態で残っている。
筆者は最近主にiPad Proで作業をしているが、もし他にメインマシンがあったり、リモートワーク向け、あるいは遠隔授業向けに家に1台コンピュータが必要という人にとっては、おそらくベースグレードでも十分対応できる。
ただ、次の原稿で触れるキーボードの快適さからお気に入りのマシンになる可能性が高い。他にマシンがない場合は、長く使っていくことを前提に、前述のクアッドコア、メモリ16GB、512GBストレージの構成を選択するとよいのではないだろうか。
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