カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」を運営するワンモアが、エンターテインメント業界に新たな支援の仕組みを打ち出した。始めたのはTポイントを使って、好きなコンテンツを応援できるポイントファンディング「GREEN×Tポイント」。貯めたTポイントをアーティスト・キャラクター・クリエイター・スポーツチームなどのプロジェクトへ支援し、起案者はポイントの60%をCCCからキャッシュバックとして受け取れる。支援者は、Tポイントを貯めることで、「sTone」と呼ばれる石を獲得でき、10個石を集めればプロジェクトのガチャを入手できる。
ワンモア 代表取締役CEOの沼田健彦氏は「オンラインでの投げ銭など、好きなコンテンツを応援するツールはいくつかあるが、現金ということで尻込みしてしまうファンもいる。ポイントを貯めるという日常の行動がそのまま支援につながる、ライトな仕組みを作りたかった」ときっかけを話す。
すでに半年程度の実証期間を経ており、一定のファンから支持を集めているとのこと。このタイミングで本格始動へと踏み切ったのは、新型コロナウイルス感染拡大を受け、コンサートやライブなど、エンターテインメントコンテンツが軒並み休止せざるを得ない状況に追い込まれているからだ。
「2月に入ってからエンタメ業界の状況は本当にまずい。あらゆるイベントが中止になり、新たな収益源の確保が必要になっている」(沼田氏)と支援策の1つとしてポイントファンディングを打ち出す。
沼田氏がCEOを務めるワンモアは、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」を運営。本やゲーム、映画といったエンターテインメントコンテンツから、ガジェットなどのプロダクト、スポーツ、アートといったものまで幅広いジャンルを取り扱う。
会社の設立は2011年だが、2014年に開催されたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループのベンチャー企業向けの支援プログラム「T-VENTURE PROGRAM(TVP)」に参加し、優秀賞を獲得。資本業務提携を経てCCCのグループ会社となった。すでにGREEN FUNDINGにおいてもTポイントを使っての支援が可能で、支援金額に応じてTポイントが貯まる連携を実施している。
「競合サービスも登場してくる中、ポイントはお得以外の価値が求められる時代に突入してきた。ワンモアと出会うことで『誰かを支援するためにポイントを使う』という価値をTポイントに追加できた」と、カルチュア・コンビニエンス・クラブ 取締役CHROでワンモアの社外取締役も務める田代誠氏は、CCCとワンモアの相乗効果を説明する。
Tポイントは、TSUTAYAや蔦屋書店のほか190社以上と提携し、ポイントが貯まる店鋪は全国約20万店。ファミリーマート、ウエルシア、マルエツなど、日常の買い物をする店鋪でもポイントが貯まり、2020年2月末時点の会員数は約7000万人を数える。
高い普及率を獲得しているが、10代の若年層には浸透が不十分だったり、数百円の買い物では「ポイントは貯めない」といった声もあがったりと、Tポイントを取り巻く環境は変化しているという。
ポイントファンディングGREEN×Tポイントは、震災を機に立ち上がったアニメキャラクター「東北ずん子」、元AKBの指原莉乃さんがプロデュースするアイドル「=LOVE」、といった10~20代にも刺さるプロジェクトでスタート。若年層に対して各コンテンツ、そしてTポイント自身のマーケティング接点として一役買う。
「特に面白いなと感じたのが、ユーザーの方の行動変容。コンビニで数百円の買い物をしてもカードを提示しなかった人が、ポイントファンディングをすることで数百円でも積極的にカードを提示する。さらに同じ買い物をするならばTポイントがつく店鋪で購入しようと行動に変化が起きている。ポイントにそこまで執着していなかった人も、好きなキャラクターやアーティストの支援ためならと、今までとはアクションが変わることがわかった」(沼田氏)とコンテンツ連携のポテンシャルに驚いている。
田代氏も「先述した"お得以外の価値”を提供できる新たなサービス。ポイントの活性化につながることに加え、ユーザーの方に喜んでいただける使い方」と位置づける。
GREEN FUNDINGでは、アイドルやアニメといったエンターテインメントコンテンツも扱うが、ここ最近は新しいプロダクトを世に出す場としての活用が進んでいる。「クラウドファンディングをマーケティングツールとする側面が強くなってきている。一方で、映画・写真集・アート分野のプロジェクトはターゲットは狭いがものすごく熱量が大きい。この熱量をいかしてエンターテインメントの業界を盛り上げたいという思いがずっとあった。また通常のクラウドファンディングでは、返礼品を用意するのが大変という声もあり、デジタル上で自動的に支援者へのお礼が完結するガチャの仕組みは起案者からも歓迎されている」(沼田氏)と、新サービスとしてポイントファンディングGREEN×Tポイントを立ち上げた経緯を話す。
CCCとワンモアは、Tポイントでの連携をはじめ、次世代ショールーム「蔦屋家電+」でクラウドファンディング中のプロダクトを展示し、オンラインとオフラインの環境を創り手に提供することでモノづくりをワンストップでサポートする仕組み「GREEN PLAN」を立ち上げたりと、あらゆる側面でコラボレーションを続ける。
「スタートアップの方と付き合うのは、すごく新鮮。コミュニケーションをとることで、今までとは違う新たな相乗効果が生まれる。TVPは社外のスタートアップとつながるために始めたプログラムだが、最近は社内起業家を育てるプログラムも開始しており、その審査員やメンターとして沼田さんに入ってもらうなど、新たな取り組みも始めた。CCCは小さな事業を大きくすることはできるが、世の中にない事業を始めた経験が少ない。その部分を補ってくれている」(田代氏)と、関係性は新たなフェーズに入ってきているという。
沼田氏は「CCCには多くの事業があるが、それぞれ独立制で動いているような感じ。当初はどこのだれに話をすればよいのかわからなかったが、今はお互いの認知も上がり、グループ内やお取引先様からプロジェクトへの起案者も増えてきている。グループ内に出版社をはじめとして、カメラ、イヤホン、スマホアクセサリー販売店など多彩な会社があることも魅力。グループ内のネットワークからプロジェクトの種を広げていきたい」と、さらなる連携強化を目指す。
現在の課題は、ポイントファンディングの収益化だ。「現在は起案者であるコンテンツ事業者の皆様にTポイント利用に応じたスポンサードを行っている状況。プロジェクトと支援者が増えてくれば、Tポイントの新たなマーケティングツールとしてアライアンス先などに提供したりできるのではと考えている」(沼田氏)と、方向性を模索する。
田代氏は「数字は少ないがコアユーザーが多いジャンル。すでにポイントのつく店鋪で買い物をするなど、行動変容が顕著に変わることもわかってきた。今までは『ポイントがついて得だから』という価値で動く人が多かったが、ポイントファンディングはポイントを貯める価値を提供できるサービス」と期待を寄せる。
今後は、キャラクターやアーティスト・アイドルなどに加え、映画や音楽、さらにはスポーツ、劇団、社会貢献など、ジャンルを拡大していく計画。沼田氏は「ポイントファンディングGREEN×Tポイントは、普段の行動の中から好きなコンテンツを応援でき、それに対してデジタル上のお礼がもらえる。起案者も支援者にも負担が少ないサービスとして一気に拡大はできると考えている」とした。
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