大企業が組織として新規事業創出を支援する取り組みが広がっている。代表的なアプローチとしては、社内アイデアソンなどのコンテスト形式によってアイデアを募り、育成していく形などがある。2月18日、19日に開催された「CNET Japan Live 2020」で、NTTコミュニケーションズグループ内で行われている新規事業創出の枠組みの中で、企画運営側に属するコンテストの責任者と、コンテストに優勝し、新規事業に取り組むプレイヤーの両者が登壇し、講演を行った。
講演は、まず支援側の立場からNTTコミュニケーションズ 経営企画部 ビジネスイノベーション推進室 担当課長の渡辺昌寛氏が、新規事業創出のための取り組みや仕組みをどう作り上げて改善しているのかについて語り、後半に現場で新規事業創出に取り組んでいるNTTPCコミュニケーションズ サービスクリエーション本部 第一サービスクリエーション部 サービスクリエーション担当の飯田嘉一郎氏が、自らが取り組んでいる新規ビジネスの内容や、社内組織的にどのように取り組んでいるのかについて説明した。
渡辺氏が所属するビジネスイノベーション推進室では、大きく2種類の新規ビジネス創出に向けた取り組みを行っているという。1つめは、「Open Innovation Program」。これは文字通り、NTTコミュニケーションズが保有するリソースと、社外のさまざまなアイデアや技術を組み合わせ、オープンイノベーションによって新しい価値を生み出すような共創プログラムで、「PoCなどを通じて最終的に事業化する事がゴール」(渡辺氏)となっているとのこと。
2つめが今回の中心的トピックスである社内向けの新規事業支援プログラム「Business Innovation Challenge」である。渡辺氏が責任者を務め、現在は2期目である。Business Innovation Challengeの前段として、同社ではデジタルトランスフォーメーションやイノベーションに対してチャレンジする「DigiCom」というグループ内コンテストを5年前から実施。今年度は100チーム、600人超の参加者があり、「参加者からの『コンテストで終わらせたくない』『本気で新規事業に取り組みたい』という声に押されてBusiness Innovation Challengeの仕組みができた」(渡辺氏)という。
目指すところは、世界で一番多くの新規事業を生み出すこと。「社内起業家を組織化し、強い個への進化とやり切る覚悟を伴う当事者意識を育てる。最も重要視しているのが、失敗経験の容認と活用。何回でも失敗し、それを周りが称賛し何度でもチャレンジできる文化を作っていきたい」と渡辺氏は語る。
採用する手法は、「今どきのもの」(渡辺氏)である。リーンスタートアップやデザイン思考という「人間中心」の発想で、プロのメンターによる「メンタリング」で仮説検証を繰り返しながら、「シリアルチャレンジ」としてすぐ世の中に出して軌道修正やピボットを繰り返して進めていくという形だ。
取り組みを進めていくにあたって、「事業アイデアの仮説優位性」「事業アイデアの実現性・有効性」「ビジネスモデル仮説の有意性」「ビジネスモデルの実現性・有効性」「事業計画」という5つのステージを用意。それぞれにゴールとしてゲートを設定し、ゲートを超えるごとにリソースを増やしていき、成功する確率を高めていく。追加されるリソースは、資金、メンタリング、稼働を確保するための体制、活動を支援するコミュニケーションツールなどである。
このほかに、Business Innovation Challengeならではの特徴的な部分として渡辺氏は、「世に問うこと」と、「実現したい『世界観』の重視」との2点を挙げる。前者では、アイデア発想フェーズでも積極的に展示会に出展するなどでユーザーニーズを確認し、アイデアのブラッシュアップを図るとする。後者の「世界観」とは、「世の中にどんなインパクトを与えたいか」というものだ。
「サービスに目が行きがちであるが、サービスは世界観を実現する手段の一つにすぎないという位置付け。Business Innovation Challengeは、社内・社外の人々が、『これを実現したい』と、心を一つにして集まるような場所にすることが理想と思っている」(渡辺氏)
さらに、ビジネスイノベーション推進室は自らプレイヤーとしての顔も持っていて、業務の50%以上を新規事業創出業務に充てるなど、自らの活動を通じて使いやすい制度作りを心掛けているという。それを踏まえてBusiness Innovation Challengeでは、「口も出せば手も出す、出過ぎた伴走を行っている」と渡辺氏は説明する。各チームにメンバーがアサインされ、時には自分の人脈からコネクションを紹介したり、自らメンバーになって動いたりすることもあるという。
そのなかで仕組みも継続的に発展的改善を加え、ゲートの審査基準を緩和したり、費用支援を柔軟にしたりなど工夫をして制度作りをしている。このチャレンジの中から誕生したサービスには、ソーシャル機能やAIを活用したスポーツ観戦アプリ「SpoLive」、外出先でカフェと連携して空き時間を有効に活用する「Workplace as a service Dropin」などがある。
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