シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏は3月3日、社内イントラネットを通じて社員向けにメッセージを発信した。今回のタイトルは「変化への機敏な対応で足元の難局を乗り切り、新たなステージへと歩みを進めよう」とし、米中貿易摩擦の長期化や新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動への影響がある中、現在の経営状況について報告。2020年度から始まる新たな中期経営計画の方向性などを示しながら、社員の奮闘を期待するものとなった。
「シャープは、日本政府からの要請を受け、新型コロナウイルス対策の一環として、三重工場(多気)のクリーンルームを活用し、マスクの生産を開始することを決定した。今後も、日本企業として、政府との連携をより密にし、日本社会の安心、安全に貢献していきたい」と述べた。
冒頭、戴会長兼社長が触れたのが業績についてである。2月4日に発表した2019年度第3四半期(2019年10~12月)業績は、売上高は前年同期比1.2%減の6349億円、営業利益は38.5%増の294億円、経常利益は64.9%増の310億円、当期純利益は13.1%増の250億円となった。
「売上高はわずかに前年を下回ったものの、営業利益が前同比約40%増、最終利益についても前同比2桁伸長を達成するなど、大きな成果をあげることができた」と総括。「事業部別に見ると、前期に引き続き赤字部門の数が減少するなど、各部門の業績は着実に回復基調にある」と位置づけた。
そして、新たに導入した年3回の賞与についても触れ、「3月25日には、マネージャーを対象にした新業績評価制度を導入して、初の四半期賞与支給を控えている。今回の業績を受け、全社評価はもとより、約半数の部門の評価ランクが前期よりアップする結果となった。皆さんの努力に感謝する」と述べた。
一方で、2019年度通期業績予想については、「米中貿易摩擦の長期化などを要因として、『量から質へ』の方針に沿った利益確保優先の事業展開を行うべく、売上高を下方修正した。だが、足元では新型コロナウイルスの感染拡大による中国工場の稼働停止や物流の混乱、さらには経済活動全般の停滞などから、企業業績への大きな影響が懸念されており、先行きはますます不透明になっている」とした。
「自社拠点の人員や部品確保の状況、生産委託先の稼働状況などを日々チェックするとともに、全社をあげて迅速な対策を講じ、業績への影響を最小化すべく取り組んでいる。また、当社は競合他社に比べてASEAN工場の生産ウエイトが高いことから、今後、他社に先んじて生産を正常化することにより、シェア拡大に貪欲に取り組んでいきたいと考えている。足元の事業環境は極めて厳しく、先が見通せない状況にあるが、このような時にこそ、迅速かつ適切な情報収集を行い、素早く次の一手を打つことが重要である。2019年度の着地まで残り1カ月を切ったが、全社一丸となってこの難局を乗り切ろう」と呼びかけた。
さらに、次期中期経営計画についても言及した。「想定外の事態で、業務が輻輳(ふくそう)する中でも、次の3カ年における新たな成長シナリオ、事業変革の実現に向けた全社戦略の構築を加速すべく、まずは各事業本部長とともに事業別の成長戦略について議論を重ねてきた。その方向性がおおむね固まりつつあることから、2月22日に全事業本部長出席のもと、発表会を開催し、商品事業本部を中心にそれぞれの具体的戦略について共有した。今後は各本部の戦略を一層ブラッシュアップするとともに本部間の連携をより深め、全社の8K+5G戦略、AIoT戦略のさらなる高度化へとつなげていく」との考えを明らかにした。
そして、「次期中期経営計画での取り組みを通じて、当社の持続的成長をより確かなものとするためには、初年度となる2020年度に、着実に成果をあげていくことが重要となる。中期経営計画の審議と並行して、2020年度のより具体的な執行計画の立案も進めていく」と述べた。
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