2月18日と19日の2日間に渡って開催されたカンファレンスイベント「CNET Japan Live 2020 企業成長に欠かせないイノベーションの起こし方」。新規事業開発をテーマにしたこのイベントの2日目には、日本を代表する航空会社ANAホールディングスが登壇した。
同社では、既存のルールに囚われることなく新しいチャレンジを模索していくデジタル・デザイン・ラボという部署を設置し、エアラインの枠を越えた斬新な新規事業プロジェクトを次々に展開している。同部署でチーフ・ディレクターを務める津田佳明氏が、その内情を明かした。
デジタル・デザイン・ラボが設立されたのは2016年。初期メンバーの1人である津田氏を含め、同部署に所属する14名の多くがグループ企業から異動してきた。あくまでも社内の1部署ではあるが、その組織構造は他の部署とは一線を画しているという。
エアラインは、言うまでもなく高い安全性や定時運航が求められる企業であり、組織やマネジメント体系もそれに最適化されている。基本は、リーダーを頂点に据えたピラミッド型の組織マネジメントがエアラインのスタイルだ。しかしこのような環境では、従来のやり方を守る意識が働くこともあり、「新しい物に対する感度が低い。どちらかというと拒絶感が強くなりがち」なことが問題となる。
そこで、新しい事業を開発していくにあたり、別働部隊としてデジタル・デザイン・ラボが設置された。当然ながら業務内容はエアラインとは直接関係がなく、仕事の方法も大きく異なる。そのため、メンバー個々人が既存のルールや業務プロセスに囚われず自由に発想、活動できるようフラットな組織とし、ホールディングスの副社長直轄の部署として、既存部署との軋轢も生まれやすいメンバーを後ろから支える逆ピラミッド型のマネジメントを採用した。
デジタル・デザイン・ラボでは、そういった組織的な側面だけでなく、業務における心構えや業務プロセスといった部分でも既存の部署とは異なっている。同部署では、ANAグループの経営理念を遵守してさえいれば、「自分でテーマを作り、自分の好きなこと、やりたいことをやっていい」ルール。
また、日本初か世界初、あるいは最低でもANAグループで誰もやったことのないアイデアに、情熱を持って取り組み続けられるかどうかも重要なルールとして規定している。企画書や事業計画などの提案だけで終わるのではなく、「本当にビジネスをローンチさせるところまで、自分がリードして先頭に立ってやる覚悟がある」ことを決まり事にしているという。
全体での定例会議はせず、打合せは最低限必要なメンバーのみ。出張の際のレポートは不要で、口頭や写真などで印象的なところだけ共有する。これらはいずれも限りあるリソースや時間を無駄にしないためのものだという。
組織としても、常に柔軟に動けるように、余計なしがらみを生みがちなR&Dの機能はもたず、リソースも少ないためCVC(Corporate Venture Capital)やアクセラレータープログラムのような取り組みもしていない。必然的に外部パートナーとの協力が不可欠であり、ベンチャー企業などとの最適なパートナー選びも重要になってくる。
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