ちょっとした手品をお見せしよう。まずは何でもいいのでオンラインでの行動を選び、例えばニュースを読んだり、メールをチェックしたり、ニュースフィードを見たり、ショッピングをしたりしていただきたい。では、あなたが今の操作のために利用した企業を当ててみせよう。ほぼ確実に、Google、Amazon、Apple、Microsoft、またはFacebookではないだろうか。
まあ、種明かしをするほどでもない。結局、これらの5大テクノロジー企業が直接的であれ間接的であれ、インターネットのほとんどの領域をコントロールしていることは誰でも知っている。例えばAmazonだけでも、米国のeコマースのほぼ40%を占めており、同社は2300万件ものIPアドレスを保持しているとされる。
そうした大企業によるオンライン支配の物質的な影響は大きい。SonosやPopsocketsなどの企業のトップは1月17日、下院が開催した独禁法関連の公聴会で、Amazon、Google、Apple、Facebookを非難した。これらのテクノロジー企業が、競合他社を締め出し、新興企業をつぶし、中小企業を利用してその巨大な力と利益を維持することで、さまざまな市場で不公平な支配を行っていると主張したのだ。
だが、問題は経済よりもさらに深刻な領域に及んでいる。これらの大企業は、われわれ人間を劣化させてしまうかもしれない。これらの企業はオンラインでの選択の幅を狭め、自社の利益につながるようわれわれを意図的に囲い込んでいる。彼らの手口はあからさまな強制ではなく、例えばソーシャルメディアでの「いいね」やシェア、リツイートなどの、いくつかの動機付け要因を使って、われわれが特定の行動をとるよう条件付けている。だが、こうした条件付けは思わぬ結果を生んだ。われわれは、より深い価値観ではなく、衝動と経済的な利益に駆られて意思決定するようになるにつれ、良心がむしばまれている。簡単に言えば、われわれは人間として悪化しているのだ。
良い手品というものは、最初に選択にまつわる錯覚を利用する。例えば、約20年前にGoogle検索が誕生した当時、その検索結果は主に関連性を測定する多数のファクターによって選ばれたものだった。当時のGoogleの目標は、ユーザーが求める検索結果を信頼できる情報源から得られるよう支援することだった。
Googleの目標は変わった。
今では、Googleで何かを検索すると、検索結果ページには関連性で選ばれた結果だけではなく、企業が広告として表示してもらうためにGoogleに対価を支払った情報があふれている。17日の独禁法関連公聴会で、ソフトウェア企業Basecampの共同創業者であるDavid Heinemeier Hansson氏は、企業名の検索に対し、その競合企業が広告を出せるようになっていると説明した。つまり、Googleで「Basecamp」を検索すると、その結果のトップにBasecampの競合企業の名前が表示されるかもしれないということだ。
Googleは企業に対し、検索結果で適切に表示されるようにするためだけに「みかじめ料の支払い」を求めていると、Hansson氏は主張する。
Googleは、公平な情報提供者という古いアイデンティティーから大きな利益を得ている。そうしたメリットを享受しているのは同社だけではない。Amazonも、自社のオンラインストアで製品を販売する企業に対して権力を行使している。Amazonに出店している多数の小売業者によると、厳しい条件を押しつけ、追加料金を請求するという。Amazonがプラットフォームと小売りの競合という2役を演じていることは、基本的な利益相反を意味する。同社は簡単な(しかも合法的な)方法で、競合他社を巧妙に弱体化できる。例えば、事前の通知なしにポリシーを変更したり、サポートに追加料金を請求したり、Amazonとの直接取引(その場合、Amazonが価格を設定できる)を要求したりする方法だ。
テクノロジーの巨人による支配は他にもまだある。Appleは「App Store」を支配し、Googleは「Google Play」ストアを支配し、Facebookはコンテンツとユーザーのプライバシーを支配する。いずれのプラットフォームも選択肢を提供していると主張するが、その選択肢は常にかなり誘導的だ。
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