三菱地所は1月22日、東京丸の内エリアにおける防災の取り組み「災害ダッシュボード3.0」の実証実験を公開した。エリア内に約100台設置されたデジタルサイネージ「丸の内ビジョン」を通じて、ローカル情報を含めた発信をするほか、PCやスマートフォンから利用できる「WEB版」を用意し、帰宅困難者受け入れ施設の開設、満空情報などを流す。
三菱地所では、2019年1月に災害時の状況俯瞰、負傷者搬送対応等に活用するプラットフォーム「災害ダッシュボード2.0」を発表。今回の災害ダッシュボード3.0は、機能をさらに強化した最新版になる。
東日本大震災が発生した平日の午後3時を想定すると、同エリア内の帰宅困難者は約4万2000人と想定され、加えて、約28万人の就業者がいる計算になるという。エリア内には21棟の受け入れ施設を用意しており、うち15棟は三菱地所が所有。これらの受け入れ施設は千代田区と協定を結んだ施設になる。
災害ダッシュボード3.0では、デジタルサイネージ版となる丸の内ビジョンと、PCやスマホから閲覧できるウェブ版の2つから、災害時の情報を発信することで、混雑、混乱状況を避け、速やかな避難を促す。
丸の内ビジョンは通常、エリア内のCMや街の情報を配信しているが、東日本大震災時はすべてのデジタルサイネージをNHKのニュースに切り替えたとのこと。三菱地所 開発推進部統括の澤部光太郎氏は「広域情報を取得するのにテレビは重要なメディア。しかし自分の周辺を考えた時、どこに避難すればいいのかといったローカルの情報を知りたい。災害ダッシュボード3.0ではテレビによる広域とローカルの情報をミックスして画面に出す実証実験をしている」と話す。
丸の内ビジョンでは、同日の10時21分から実証実験として、NHKのニュース画面とともに、ライブカメラが捉えたエリア内のリアルタイム映像、テキスト情報による避難受け入れ施設の開設情報などを表示。画面下に表示された二次元バーコードを読み取れば、地図アプリが開き、近くの避難場所の地図が現れる仕組み。「スマートフォンを持っていない人や電池切れになってしまった人も画面を見れば、どういう状況になっているのかわかる」(澤部氏)ようになっているという。
実証実験では、千代田区災害対策本部等から発信されるテキストを自動翻訳により日英中韓4カ国語でも配信。自動翻訳機のため、翻訳にかかる時間はわずか。ほぼリアルタイムで更新されていた。
ウェブ版では、NHKの国際サービス「NHKワールド」のニュース映像、丸の内エリアの現地ライブ映像、千代田区等からのテキストメッセージ、帰宅困難者受け入れ施設の開設情報や満空情報などで構成。帰宅困難者受け入れ施設の開設情報や満空情報が確認できるほか、千代田区、交通機関など各社のツイッターもまとめて見られる。
エリア内のライブ映像はライブカメラを設置して対応。実証実験時には9台のカメラを駅構内や、エリア内を巡回するバス車両などにつけて対応していた。カメラは「iPhone」にモバイルバッテリーをつけたもので使用しており、4Gや周囲のWi-Fiを使って映像を送信できるほか、位置情報を取得できるため、採用したという。
今回の実証実験は、千代田区災害対策本部と連携し実施したもの。千代田区、三菱地所のほか、東日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、東京地下鉄、東京都交通局、日の丸自動車興業、サンケイビル、森トラスト、読売新聞東京本社、聖路加国際病院・聖路加メディローカス、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会などが参加している。
実用化のメドは今のところ未定で、発生時の要員確保なども具体的に決まっていないとのこと。澤部氏は「今回の参加者とともに今後とりまとめて、どういう体制が築けるかを進めていきたい」とした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス