それほど遠くない昔、何人かのテクノロジー評論家が、われわれがパーソナルコンピュータ(PC)として認識しているものは2020年までに絶滅すると予測した。PCの死亡日時を特定することさえできる。Steve Jobs氏が「iPad」を披露するためにサンフランシスコのステージに登壇した、太平洋時間の2010年1月27日午前10時だ。著名なテクノロジー評論家のNicholas Carr氏がその瞬間を「The New Republic」の「PCは今日、完全に死んだ」という印象的なタイトルの記事で紹介した。
その数カ月後、「CNN Money」がデータを添えた独自の追悼記事「デスクトップPCの(本当の)終えん」を公開した。
数年飛んで2013年の4月、「Forbes」は「PCの死は誇張ではない」という記事を公開した。2015年7月には、「Wired」が同じ決まり文句(作家のMark Twainが自分が死んだという誤報についてコメントしたとされているもの)に微妙な副詞を添えて「PCの死はそれほど誇張ではない」という見出しを使った。
そして2017年、論争を恐れぬメディア「The Inquirer」が、患者がどうやらまだ生きていると認めた。「PCはまだ死んでおらず、その市場は安定している」と書いた。
そして、PCの死亡宣告から10年後の今、毎年2億5000万台以上のPCが販売されている。余命宣告より10年生き延びた業界にしては非常に好調だ。
PCが絶滅を逃れた理由はおそらく、環境に適応してきたことと、PCが処理してきたすべてのタスクを競合する後続のプラットフォームが引き継げなかったことだろう。
2020年に向けて、何が違ったのかを見てみよう。まずはタイムマシンに乗って2010年に戻ってみることにする。
2010年のテクノロジー業界のトレンドを見るために、著名評論家になる必要はない。モバイルデバイスの台頭で、それまでPCで行っていた多くのタスクをモバイルで迅速にこなせるようになった。この技術の移行はビジネス向け需要にはほとんど影響しなかったが、消費者向けの需要が大幅に減った。
需要減少の最初の犠牲者は「ネットブック」だった。これは、非力な「Atom」プロセッサーを搭載し、ディスプレイは一般的なエントリーレベルのノートPCよりも小さかった。消費者は性能の違いに気づかないだろうという目論見で開発されたものだ。
ネタバレすれば、消費者は違いに気づいた。ネットブックは安いが遅くて不格好で、あと100ドル出せばまともなノートPCが買えることを思い出させるリマインダーとなった。このカテゴリーは、いつの間にかひっそりと消えた。
その間、PCメーカーは少なくとも2種類の顧客が高価格なPCを買うことに気づいた。ビジネスユーザーとゲーマーだ。そこで、これから見ていくように、PCメーカーはこの2種類の顧客のために重点的に投資し始めた。
デスクトップPC(タワー型やそれより小さいもの)の状況はこの10年間、ほとんど変わっていないが、ノートPCはかなり変わった。10年前のノートPC市場を思い出すためにタイムマシンに乗る必要はない。「Laptop Magazine」の編集者、Mark Spoonauer氏が選んだ2010年のベストノートPCの優れたまとめ記事を見てみてほしい。
2010年と現在のPCテクノロジーを比較して気づいたことを列記してみる。
この10年間、すべてのPCメーカーが真似しようとしてきたのは、間違いなくAppleの「MacBook Air」だ。実際、「The Laptop」はこの1.06kgあるいは1.32kgの製品を「途方もなく軽い」と評して2010年の「ブレイクスルーデバイス」に選んだ。今では、ほとんどのハイエンドWindows PCはこのスペックと互角または上だ。バッテリーとキーボードによる物理的な制限によってそれ以上小さく、軽くするのは難しいが、少なくとももう光学ドライブは必要ない。
2010年に戻ろう。Microsoftはタッチ対応の「Windows 7」搭載PCを打ち出したが、iPadの発売ですぐにかすんでしまった。2015年までには、タッチ対応はさまざまな形状に変化する2in1デバイスで定着した。WindowsノートPCでは今やタッチスクリーンは一般的になったが、Appleの「MacBook」シリーズにはない。
2010年には回転式のハードディスク(HDD)が主流で、7200rpmのHDDを搭載するデバイスが絶賛されたものだった。その後数年間はSSDは高価なオプションとみなされたが、価格が劇的に下がった今日では、HDD搭載のノートPCを見つけるのは難しい。
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