シャープ戴社長が説くトランスフォーメーション進化の必要性--「全社あげて業績向上へ」

 シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏は12月9日、社内イントラネットを通じて、社員宛にメッセージを配信した。「年末商戦を全社一丸となって戦い抜き、2020年の成長につなげよう」と題し、残り4カ月となった中期経営計画の達成に向けて、社員の奮闘を呼びかけるとともに、2020年度以降に向けて、トランスフォーメーションを進化させる必要性について説いた。

賞与とは別枠の社長ファンド「COCORO MEMBERSクーポン」支給

 最初のテーマとしたのが、12月10日に支給される2019年度冬季賞与の支給についてだ。

 シャープでは、賞与の支給を、従来の年2回から3、6、12月の3回に変更することを打ち出しており、今回が、新たな賞与制度では最初の支給となる。

 戴会長兼社長は、「『四半期ごとの部門業績をタイムリーに反映する』、『部門業績により重点をおく』、『より厳格な信賞必罰を実施する(赤字の場合は部門業績連動賞与ゼロ)』の3つをポリシーとした新たな賞与制度に基づいて支給される初めての賞与になる。だが、今回は新制度を導入したばかりということもあり、第1四半期が赤字であっても、通期で黒字を達成した部門、通期が赤字であっても、第2四半期では黒字化した部門については、部門業績連動賞与ゼロを免除するなどの緩和措置をとっている。一方、一般社員は、従来の制度に基づいた上期業績に対する賞与として支給する」と説明した。

 「今回の賞与の前提となる上期の業績は、11月1日の決算発表の通り、米中貿易摩擦の長期化などを背景に厳しい事業環境が継続している。だが、2018年度第4四半期を底に、2019年度第1四半期、第2四半期と着実に回復を続けている。とくに、第2四半期では、売上高、営業利益ともに前年を上回る水準にまで改善した。こうした結果を受け、市場の見方にも良い変化が表れている。社員の努力に感謝する」とする一方、「事業別の業績に目を向けると、前年や前期と比べて赤字部門の数が減少しており、全社業績を押し上げる要因となった。これは、一人ひとりの努力はもちろんだが、新しい賞与制度が機能したという側面もあると考えている」と分析した。

 その上で、「上期トータルでは売上高、営業利益ともに前年割れ、業績予想未達と決して満足のいく結果ではない。加えて、通期業績予想は変更しておらず、残された期間を、全社をあげて、さらなる業績向上に取り組む必要がある。そこで、2019年度の着地に向けて一層のがんばりを期待して、賞与とは別枠の社長ファンドとして、『COCORO MEMBERSクーポン』を国内勤務者対象に支給する。残り4カ月間、ともにがんばろう」と、新たな賞与制度に加えて、社長ファンドを設定することで、社員の奮闘を期待した。

 2つめのテーマが、日本国内において、8Kの放送を開始してから、1周年を経過したことだ。

 「2019年12月1日に、国内で8K放送がスタートしてから1年を経過した。スポーツや音楽ライブ、芸術・自然ドキュメンタリーなどのさまざまなコンテンツが、8Kで制作、放映されており、8Kによるドラマや時代劇の撮影も広がるなど、8K放送の普及に向けたコンテンツ制作が着実に進んでいる。また、日本、欧州、米州、中国と世界各国で開催されている主要な展示会では、各メーカーから8Kや5Gに関する展示が行われており、テレビやカメラ、編集機器など、8K+5G関連機器を手掛ける企業が、日に日に増加している」と、昨今の8Kを取り巻く状況を俯瞰した。

 シャープとソフトバンクが共同で実施した「バスケットボールの国際試合の8K映像を、5Gを活用してマルチアングルでライブ伝送する実験」や、フランスのテレビ局が行った「テニスの全仏オープンの8K映像を5Gで配信するデモ」など、放送インフラに依存しないインターネット配信の観点から8K映像の配信環境構築に向けた動きが、各地で着々と進んでいることを紹介した。

 「このような取り組みは、2020年の東京オリンピックに向けて益々加速していく見通しであり、今こそ、8Kのリーディングカンパニーであるシャープが先頭に立って、8K市場の拡大を力強く牽引していかなければならない。こうした狙いのもと、国内では11月9日に、需要をより一層喚起する価格を実現したAQUOS 8Kの新製品『BW1シリーズ』を発売。オーディオ&ビジュアル専門誌の『HiVi』では、『冬のベストバイ2019』のひとつに選ばれるなど、高い評価を得ている。11月30日からは、AQUOS 8Kとしては2年振りとなるテレビコマーシャルを開始し、テレビやウェブ、店頭などのさまざまなチャネルでプロモーション活動を全面展開し、『BW1シリーズ』の販売拡大を後押ししている。営業部門には、なんとしても、これを大きな成果につなげてほしい」とした。

ディスプレイ技術を一段と磨き上げ、世界をリード

 また、海外での展開も紹介。12月初旬には、マレーシアおよび台湾で、メディアや取引先を対象にした新製品発表会を開催し、AQUOS 8Kや120型8K液晶ディスプレイ、小型8Kビデオカメラ、5Gスマートフォンなど、8K+5G Ecosystemを構築するシャープの最先端技術や製品をアピールしたほか、AIoT家電やdynabook、オフィス機器なども展示し、B2CおよびB2Bの両面から幅広い製品群を来場者に体験してもらったという。

 「シャープへの期待の声を数多くもらい、大きな反響があった。こうした取り組みをテコにして、海外においても、事業ビジョン実現の要となるAQUOS 8KやAIoT機器群の販売拡大を加速しよう」と述べた。

 ここでは、ディスプレイ技術についても言及した。「シャープ独自の特長技術であるIGZOを強みに、8Kテレビはもとより、スマートフォンやPC、車載など、さまざまな分野に液晶ディスプレイを展開している。この技術は、まだまだ大きな進化を続けることができる。さらなる低消費電力化や表示性能の向上、デザイン性の革新を実現していく。加えて、シャープが持つあらゆる液晶技術を応用し、反射型ディスプレイやシースルーディスプレイのように、新たな用途提案も強化したい」と述べた。

 一方、「シャープが保有するディスプレイ技術は液晶だけではない。OLEDをはじめとした自発光型ディスプレイの技術開発にも積極的に取り組んでおり、11月8日には、NHKと共同開発したローラブル(巻取型)の『30V型4KフレキシブルOLEDディスプレイ』を発表し、Inter BEE 2019では、多くの来場者の注目を集めた。今後もこうしたディスプレイ技術を一段と磨き上げ、世界をリードする独自の商品やソリューションを生み出していく」とした。

 3つめのテーマにあげたのが、「時代に合わせて進化する多象限経営」だ。12月7日に、「時代に合わせて進化する“多象限経営”」というテーマで社内勉強会を開催したことを報告。戴会長兼社長が、シャープで実践してきた「持続的成長を実現する企業経営」の5つのポイントを常務執行役員の橋本仁宏氏が説明し、各責任者からは直近の具体的事例が紹介されたという。

 ここでは、次の5つのポイントが示された。

  • (1)「業界でのポジショニング」や「強みと弱み/事業機会と脅威」など、事業環境を多角的に分析すること
  • (2)事業環境の変化に合わせ、新たな事業や新たな市場、異業種展開など、事業変革の方向性を「創意」を持って多象限で検討・決定し、「誠意」を持ってその道筋を描き実践すること(WHATとHOW)
  • (3)「強い決心」を持って困難に立ち向かうこと
  • (4)「スピード」を高めるとともに、強力な「執行力」を発揮すること
  • (5)多様な「プロフェッショナル人材」と幅広い経験を持つ「経営人材」を育成し、強い組織を創ること

自らの事業を見つめ直し、次の成長シナリオ構築につなげてほしい

 戴会長兼社長は、「企業が事業活動を行うなかでは、市場変化や顧客の価値観の変化、さらには競合他社との熾烈な競争などにより、厳しい局面を迎えることが多々ある。しかしながら、ピンチとチャンスは表裏一体であり、ピンチを次の成長のチャンスに変えていくこと、つまり、新たな象限へと事業を拡大していくことこそが、企業の持続的成長の鍵を握る。シャープは、この3年間、こうした考え方のもと、トランスフォーメーションを進めてきたが、これも事業環境の変化に合わせて進化させていかなければならない。次期中期経営計画の本格検討に入るこの時期に、いま一度、すべての事業本部、事業部で自らの事業を見つめ直し、次の成長シナリオの構築につなげてもらいたい」とし、シャープのトランスフォーメーションへの取り組みをさらに進化させる必要性を訴えた。

 最後に戴会長兼社長は、「現中期経営計画も、いよいよ最終局面を迎えた。まずは、今期の着地に向けて、足元の年末商戦を全社一丸となって戦い抜こう。そして、当初の計画で示した通り、各事業本部とも、2019年度中に、トランスフォーメーション(事業変革)にきっちりと道筋をつけ、2020年度からの『次の100年に向けた持続的成長ステージ』に舵を切るための総仕上げに取り組み、さらなる業績向上を実現しよう」と呼びかけた。

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