アルヒ「徹底的に不動産業界にフォーカス」--2019年度中に人材紹介会社設立へ

 住宅ローンサービスを手掛けるアルヒが、他社との業務提携を積極的に進めている。10月3日には、じぶん銀行と銀行代理業務に関する基本合意書を締結。10月30日には、みずほ銀行と「フラット35」に関する事務受託を開始することを発表した。大手銀行との連携を深める一方、11月には不動産テック会社であるEQON、Cocoliveとの業務提携を発表。スタートアップやテック企業との積極的に関わっていく姿勢を示した。

 11月7日に発表した2020年3月期第2四半期(7~9月)の連結業績は、営業収益、税引前利益、当期利益がいずれも増加。アルヒ 執行役員CFOの松本康子氏は「全般的に堅調だった。融資実行件数も第2四半期で22.5%の伸び、上期を通しても16.1%増となり、良い数字だと思っている。ただ、第1四半期末に金利が下がり、この時期での実行を考えていた人が第2四半期にずれた。10月には消費増税もあり、第3四半期から第2四半期に前倒しした人いる。前後からの投入を考えると、通常よりは強めの数字になっている」と堅調に推移した背景を話す。

2020年3月期第2四半期決済ハイライト
2020年3月期第2四半期決済ハイライト
融資実行件数(四半期別推移)
融資実行件数(四半期別推移)
2020年3月期第2四半期損益計算書
2020年3月期第2四半期損益計算書

 商品面では、独自の「スーパーフラット」が好調に推移。「下期もスーパーフラット中心にしっかり伸びると思っている。しかし第3四半期分が第2四半期にずれ込んだ部分があるので慎重に見ていきたい」(松本氏)とした。

 市場環境にも追い風が吹く。10月1日にはフラット35の物件価格の上限が撤廃され、無制限になった。アルヒ 代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏は「上限撤廃により高額物件が舞い込んできている。このほか消費増税後の住宅購入支援策もある。駆け込み需要や落ち込みはほとんどないと思っていたが、多少はあった。ただし大変少ない件数だったので、通期計画に影響はない」と説明した。

アルヒ 代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏
アルヒ 代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏

 金利については「全体的に低金利なので、固定と変動は無視できるくらいの差になっている。安心感としてどちらを選ぶか。この金利状況が続けばフラットの競争力は衰えないと考えている」(浜田氏)と優位性を示す。

 現在152拠点を持つアルヒだが、下期に6拠点の出店を計画。「店舗数にはこだわっていないが、ホワイトスペースは埋めていきたい。良い物件とオーナーを見つけてコツコツ増やそうと考えている」(浜田氏)とコメント。さらに、5月に報道されたフラット35の不正使用の疑いについては、5月の段階で不正使用がないことについて明言しているが、その時に発表したAIを活用したリスク管理システムを12月に運用開始予定であることを明らかにした。

 リスク管理システムは、AIサービスを広く手掛けるHEROZとともに開発したもの。「ホークアイ1.0」と名付け、AIを使って不正利用を検知する。「アルヒが持つ住宅ローンの審査データ7万件をデータベースに投入し、ほぼ完璧に不正案件を見つけ出す。ただ、こうした手口は常に新しくなるもの。データベースに投入しているのは過去の案件なので、継続的にラーニングして、検知率を維持したい。不正案件が入ってこないよう全力で防止に努める」(浜田氏)と宣言した。

ITを活用したより厳正な審査
ITを活用したより厳正な審査

 今後の取り組みについては、住まいと暮らしのニーズをマッチングするマルチプラットフォーム企業になると説明。「家をさがしたい、買いたい、住宅ローンを借りたい、生活サービスを利用したいというお客様との接点を持ち、不動産会社にお客様を紹介している。不動産会社にとっても頼れるパートナーになりたい」(浜田氏)とし、「家も住宅ローンも探したいと思ったらスマートスピーカーに話しかけるだけで、見つかるようなサービスにしていきたい」(浜田氏)と将来像を描く。

 同日発表したスタートアップとの提携については「ツールやサービスをいろいろ手掛けているが、正直未完成な部分もある。コツコツと空いている部分を埋めて、お客様にも不動産会社にも助かるサービスを作っていきたい。ただ、一社だけではできず、外のクリエイティブな人たちとコラボする必要がある。その一環として、EQON、Cocoliveとの業務提携を発表した」と活動を推し進める。

 加えて、不動産会社への支援を目的に、不動産テック会社と不動産人材紹介会社の2つを子会社として設立することを発表した。不動産テック会社では仲介業に実際に取り組むとのこと。「目的は自分たちで仲介業を実際に手掛け、必要なツールをつくり、改善すること。この事業で稼ごうとは思っていない。あくまで実証実験の場として作る」と説明。人材紹介会社については「不動産会社の悩みは人材。人手不足の中、優れた営業担当者はすぐに退職してしまい安定しない。この部分の悩みを解決していきたい。調べたところ不動産会社に特化した人材紹介会社は今のところない。この事業を通じて、不動産会社との連携を強化したい」(浜田氏)とした。

 両社はともに2019年度内に事業を開始する予定。浜田氏は「徹底的に不動産業界にフォーカスする」とコメントした。

2020年3月期業績見通し
2020年3月期業績見通し

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