物流クライシスと言われるほど、危機的状況にある日本の物流を、Hacobuが多業種企業との協業やデータ活用によって変えようとしている。9月19日、三井不動産との資本業務提携を締結。すでにパートナーシップを結んでいる、大和ハウス工業、アスクル、Sony Innovation Fund、日本郵政キャピタル、日野自動車といった多業種企業と共に、物流の課題解決を目指す。
Hacobuは、2015年に設立したスタートアップ。物流向けアプリケーションとハードウェアの開発、販売、貨物利用運送事業を手掛けており、オープンな物流情報プラットフォーム「MOVO(ムーボ)」を展開している。
対象は、倉庫間や卸から小売業間の運搬を担う企業間物流。14〜15兆円のマーケットと言われている日本の物流市場の中でも、最大規模となる10兆円がこの市場にあたるという。
しかし、企業間物流の世界は電話やFAX、紙資料といったアナログでのやり取りが一般的。現在も、荷物を受ける側で、大量のトラック待機があったり、車両手配がうまく行かず、半分の積載率でトラックを動かしたりと、非効率な状況が続いているという。Hacobu 代表取締役社長CEOの佐々木太郎氏は「非常に危機的な状況。究極的なことを言えば、スーパーにものが並ばなくなったり、今のように安価にものを買えなくなったりする」と指摘する。
ムーボは、SaaS型の物流管理ソリューション。待機時間でトラックを効率的に稼働する「バース管理」、トラックが手配しやすくする「オンライン求車」、トラックの位置情報を把握する「動態管理」などの機能を持つ。
すでに、大和ハウス工業と「MOVOバース管理ソリューション」を活用したトラック待機時間の削減や物流現場のデジタル化で協力関係を築いているほか、大和ハウス工業とダイワロジテックが開発したAI・IoT・ロボットの先端テクノロジーを導入した物流施設「Intelligent Logistics Center PROTO」内において、「MOVOバース管理ソリューション」を試験導入。アスクルでも、「MOVOバース管理ソリューション」を基幹物流センターであるAVC関西に採用しており、システム導入前に比べ、平均待機時間を従来の3分の1、1時間以上待機を4分の1に削減できたという。
Hacobuでは、三井不動産に先駆け、9月4日に日野自動車と資本業務提携契約を締結している。今後は、ドライバー不足をはじめとする物流に関する社会課題の解決に向けて、コネクティッドの領域を中心に協力していく計画。MOVOに蓄積された車両や荷物、倉庫といった物流関連のデータと日野自動車が構築を目指す「商業物流・人流プラットフォーム」上のデータを連携させ、物流プロセスの全体最適化を図り、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services)時代を見据えたソリューションの検討・開発を目指す。
三井不動産とは、三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)へMOVOバース管理ソリューションの導入を進めると共に、ビッグデータの活用に向けて検討していく計画だ。
Hacobuでは、物流に関する課題解決に向け「Sharing Logistics Platform」構想を発表。これは、IoTとクラウドを統合したオープンな物流情報プラットフォームで、会社、業種の枠を超え、ビッグデータを蓄積、利活用することで、社会最適の実現を目指す。今後は、2023年を目処に物流情報をデジタルにやりとりする基盤を確立し、2025年に物流ビッグデータを使った最適化を実現。2030年には自動運転トラックによる輸送サービスの土台を構築する。
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