「所有する」時代の終焉--サブスクリプションエコノミーの台頭を告げる5つのトレンド - (page 2)

Vala Afshar (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2019年07月31日 07時30分

 この恩恵を受けているのは、消費者だけではない。企業も、より新しく柔軟なサブスクリプションビジネスモデルで、変化する顧客の要求に応えることによって、飛躍的な成長を遂げている。Zuoraの「サブスクリプションエコノミーインデックス」によると、過去7年間で、北米、欧州、およびアジア太平洋地域のサブスクリプション企業の売上高は300%以上増加し、年平均成長率(CAGR)は18%を記録したという。これは、S&P 500企業の売上高および米国の小売売上高成長の約5倍の早さで、DAX(ドイツ株価指数)およびASX(オーストラリア株価指数)の10倍の売上高成長率である。

 それでは、所有の概念の終わりとユーザーシップの台頭が、いくつかの業界でどのように進んでいるのかを詳しく見ていこう。

  • 音楽:CDや楽曲ダウンロードの売り上げは減少し続けているが、音楽業界自体は5年連続で成長している。その主なけん引役がデジタルサブスクリプションだ。現在、サブスクリプションは音楽業界の総売上高の62%を占めるまでになっており、初めて100億ドルの大台を突破した。
  • 自動車:全世界の自動車販売は2017年から2.8%減少したが、全体的な走行距離は増加している。人々が自動車に乗らなくなったわけではなく、自動車のサブスクリプションやライドシェアリングサービスなどを使用して移動するようになっただけのことだ。
  • 新聞:毎朝、起床してから玄関先の新聞を取りに行く人は、どれだけいるだろうか。2018年、新聞の販売部数は約3000万部まで減少した。これは、1940年代とほぼ同じ水準だ。だが、その一方で、Pew Research Centerによれば、スマートフォンでのデジタルニュースの消費がここ数年で300%以上増加しているという。私たちはもう、リサイクルに出す古新聞の山(モノ)に埋もれたくはない。

 では、何がこうした変化の数々を引き起こしているのだろうか。消費者心理についての洞察で知られるThe Harris Pollは先頃、(Zuoraに代わって)世界12カ国で1万3000人以上の成人を対象に調査を実施し、サブスクリプションエコノミーの成長をけん引するいくつかの興味深いトレンドを発見した。

1. 調査対象者の半数以上は所有物を減らしたがっている

 世界中の10人に6人近くが、所有するモノを減らしたいと回答しているのは、意外なことではない。テクノロジーの進歩、顧客が求めるものの変化、有効な定額制ビジネスモデルの出現により、モノを所有する動機は以前に比べてどんどん弱まっている。サブスクリプションサービスが利用できる場合、人々は所有する必要性をますます問うようになった。輸送とメディアは、このトレンドによって決定的に変化した業界の典型的な例だ。

世界中の10人に6人近くが、所有するモノを減らしたいと回答
調査対象者の57%が、所有するモノを減らしたいと回答
モノを減らしたい人の割合(国別)
モノを減らしたい人の割合(国別)

2. 持ち物によって個人のステータスが決まる時代は終わった

 ひと世代前、「成功」とは、物質主義と、隣人たちに負けないように張り合うことを意味した。しかし、それはもう過去のことだ。その代わりに、現在、私たちのソーシャルメディアフィードは、運動や食事、休暇など、人々が何かをしている写真であふれている。「体験」が新たなステータスシンボルになった。

68%が、人のステータスはもはや所有物によって定義されないと思うと回答
68%が、人のステータスはもはや所有物によって定義されないと思うと回答

 そして、ステータスや個人の自己実現の概念が、物質的な豊かさから離れ、魅力的な体験に移行する中で、世界中の消費者は、より多くの価値、よりよい体験を提供し、煩わしさや手間を軽減する、柔軟なサービスをますます要求するようになっている。

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人のステータスはもはや所有物によって定義されないと考える人の割合(国別)

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