DeNAが開発する次世代タクシー配車アプリ「MOV(モブ)」が、7月8日から大阪府と京都府でサービスを開始した。タクシー会社向けに乗務員用アプリから決済機までトータルに提供する「MOVプラットフォーム」のほか、神奈川県で実証実験をしたAI解析による受給予測を元に経路をナビゲーションし、ドライバーの探客スキルを向上させるシステムを発表した。
同日の発表会では、DeNA 常務執行役員 オートモーティブ事業本部長の中島宏氏が登壇。「日本が抱える交通不全という課題をインターネットとAIで抜本的に改善するため、まずは身近なオンデマンド交通であるタクシーを自在に使えることを目指す」と語り、他社の配車アプリとは異なり、日本独自のタクシーサービスに応じたシステムを開発していると説明した。
ポイントは、既存の配車システムとの連動で、ユーザーアプリからダイレクトに乗務員アプリに配車依頼が届く仕組みになっている。効率良く配車できるため、26.2%が3分未満、36.2%が5分未満と、顧客側が不満を持たずに待てる5〜6分を6割以上クリアでき、リピーターにつながったとしている。MOVアプリ導入による需要創出は、神奈川県での配車実績によると電話配車をのぞいて5〜6%増と、他社アプリを大きく引き離しているとアピールした。
また、業務の99%を占める流しに必要な探客スキルをAIで底上げするシステムを開発。運行中のタクシーから収集するプローブデータと公共交通機関の運行状況などのPOI情報などを組み合わせて需要を予測し、ドライバーにあわせて乗客まで効率良くナビで誘導する。神奈川県での実証実験では、「騙されたと思ってナビの言うとおりに走ってみてください」とお願いしたところ、新人でも平均程度まで探客スキルを引き上げられたという。
AIシステムを含め、既存業務に必要なハードウェアは、MOVプラットフォームとしてDeNAから一括で提供する。データを収集するBLEロガーをはじめ、ユーザーアプリとダイレクトに連携する乗務員アプリを搭載したスマートフォン(もしくはタブレット)、各種キャッシュレスに対応する決済機、広告やニュースを表示する後部座席タブレット、そしてアプリを使わない乗客にも対応できるようレシートプリンタも用意されており、空車サインも含めたオールインワンのシステムになっている。
後部座席タブレットは、シートベルトの着用案内や降車にあわせた支払い額表示、多言語対応などドライバーの負担を減らす仕組みを搭載している。アプリの使い方はトレーニングも行うが、乗務員アプリにガイド機能が搭載されており、1週間もあれば普通に使いこなせるようになるという。システムの使い勝手に関しては現場の要望を取り入れてすでに300以上の改善が行われている。今後もAIのアルゴリズムを改善し、ドライバーにあわせてレコメンド方法変えるなど、様々な取り組みを進め、タクシーのあり方や乗車体験を大きく変えるとしている
また、企業や行政ともマッチングできる新モデルとして東京で好評だった「0円タクシー」については、広告モデル以外に地域や自治体と連携して免許を返納した高齢者向けに無料タクシーを提供するといったサービスにも活用することを提案している。他にも、スマホが使えない人たち向けの配車端末も開発しており、空港や病院、大型商業施設へ導入する予定だ。たとえば将来的に、AIによる音声アシスタントで乗客対応をし、ドライバーは安全で快適な運転に集中できるようなシステムも構築されるかもしれない。
なお、大阪府では3社、京都府タクシー協会の配車アプリ推進業者である京都府では9社のタクシー業者と連携する。配車アプリに加え、後部座席にニュースや交通情報が見られる客席タブレットを提供。決済システム、空車サインも含めてタクシー向けのシステムをトータルに提供する。7月21日までMOVのロゴをラッピングしたスペシャルタクシーを撮影してTwitterに投稿するとプレゼントが当たるキャンペーンを実施。1ヶ月無料クーポンをはじめ、専用アプリで乗車が無料になるキャンペーンも同時に実施する。
サービスエリアは都市圏を中心に拡大し、兵庫県は秋ごろにサービスを開始する。また、東京で実施した0円タクシーのようなプロジェクトの運営も力を入れるほか、AIとIoTを活用した商用車向け交通自己削減支援サービス「DRIVE CHART」も6月から開始している。
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