コンピューターストレージ技術は進化を遂げてきているが、次世代技術で使用されるのはDNAを用いた手法かもしれない。スタートアップのCATALOGは米国時間6月28日、人間の体内にあるのと同様のDNAにWikipediaの英語版の全テキストを収容したと発表した。
CATALOGは同社初のDNAライターによってこの偉業を成し遂げた。この技術がスマートフォンのフラッシュチップメモリに取って代わるのはまだ先の話になりそうだが、データをアーカイブする必要がある複数の顧客に有益だと同社は考えている。
DNA鎖はとても小さく、扱いが難しいが、この生体分子は細胞が植物や動物になる構造を司る遺伝子の他にもデータを収容することができる。CATALOGが用いているあらかじめ作られた合成DNA鎖は人間のDNAよりも短いが、数多く用いることによって、より多くのデータを収容できる。
最新の小型化技術の代わりにDNAを使用することは後退のように思えるかもしれない。だがDNAはコンパクトで化学的に安定しており、地球の生態系の根幹であることを考慮すれば、すでに廃れたフロッピードライブや今日需要が減りつつあるハードドライブやCDの回転磁気記録媒体と同じ道を進む可能性はかなり低そうだ。
ではどういった人たちがこの種のストレージを購入するのか。CATALOGが発表した提携企業のArch Mission Foundationは、地球だけでなく太陽系の他の場所に人間の知識を保存しようと試みている。同社の「Solar Library」は、2018年にElon Musk氏率いるSpaceXが「Falcon Heavy」ロケットのペイロードとして宇宙に送った「Tesla Roadster」のグローブボックスに収められている。CATALOGは顧客になる可能性がある他の企業や、同社のDNA作成サービスの価格については明らかにしていない。
「当社は複数の政府機関、大量のテストデータを生み出す大規模な国際科学プロジェクト、石油やガス、メディア、娯楽、金融などの業界の大手企業との話し合いを進めている」とCATALOGは声明で述べた。
ボストンを拠点とするCATALOGは、毎秒4メガビットの速度でDNAを記録できる独自のデータ作成機を使用している。最適化によってその速度を3倍速めれば、ハイエンドスマートフォンの容量と同程度の125GB分のデータを1日で記録できるようになる。
生物工学市場ですでに販売されている従来のDNA配列製品は、DNAデータを読み取る。「当社は、この全く新しいDNA配列のユースケースが相当なコスト削減に役立つと考えている」とCATALOGは述べ、コンピューティングビジネスがはるかに大きな市場になる可能性があると主張している。
CATALOGの最高経営責任者(CEO)のHyunjun Park氏と最高技術革新責任者(CTIO)のNathaniel Roquet氏が2016年、同社を立ち上げた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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