筆者は「iPad Pro」の画面を見ながら、木の床の上を走り回って、巨大な仮想のボールをかわそうとしている。これはボウリングのレーンの設定だが、バスケットボールのコートのように感じる。見ている人たちは歓声を上げている。筆者の反対側には米CNET同僚のEli Blumenthal記者が立っており、iPad Proを前に突き出して、筆者の顔をめがけてボールを投げた。筆者は足を踏み外してしまい、ボールが勢いよくそばを通過した。ボールを追いかけたが、手遅れだった。ボールはピンを倒し、筆者はまた負けてしまった。
だが、この大きなコートには、実際にはわれわれとテスト用iPadのほかに何もない。われわれの目には、大きなボールとボウリングのピン、そして、その中を走り回っている自分たちの姿が見えている。あたかも、そのすべての物体がこの共有スペースに実際にあるかのように。まもなくやってくるAppleの拡張現実(AR)の未来へようこそ。動きは速く、コラボレーションの要素もあるが、ヘッドセットはいまだにない。
Microsoftには「HoloLens 2」があり、Magic Leapにも魔法のような独自のARゴーグルがあるが、Appleは(Googleのように)フラットな画面を通してのARを模索している。Googleの近頃のARへの取り組みでは、実用性とすばやい補助的な機能に焦点が当てられているのに対し、Appleは、これまでよりもさらにリアルなグラフィックスと効果を押し出そうとている。Appleは開発者会議「Worldwide Developers Conference」(WWDC)で、「Reality Composer」と呼ばれる包括的なAR作成ツールキットなど、2019年秋に提供開始予定のARツールを多数披露した。筆者が体験したボウリングゲーム「Swift Strike」は、「ARKit 3」(その優れた効果を体験するには、最新の「A12」チップを搭載する「iPhone」またはiPadが必要)の能力を見せることが狙いだ。そしてこのゲームは、この1年でのAppleによるARの進歩も示していた。
これはマルチプレーヤー対応のARゲームであり、筆者が1年前に今回と同じ場所でプレイしたゲームによく似ている。それは、ボールでテーブル上のブロックを倒すゲームだった。だが、2018年にプレイしたそのゲームは、動きが乏しかった。今回、筆者と対戦相手(過去にこのようなARゲームをプレイした経験のないBlumenthal記者)は、前回よりもはるかに多くのスペースを走り回った。
プレイし終わった後、あと足りないのは、ARメガネに対応して利便性を高めることだけだと思った。それが実現すれば、頻繁に下を向いて、iPadの画面を確認する必要がなくなるからだ。
「オクルージョン」は、Swift Strikeが提供する最もクールな魔法のような機能だ。これまで、iPhone上のARの物体(IKEAのバーチャルソファーなど)の前を人間が通ると、その錯覚は粉々に砕け散ってしまった。だが、ARKit 3では、このオクルージョンによって、人間がARの物体の前を歩くと、あたかもそれらの物体が実際に人間の後ろにあるかのように、その物体を遮れるようになった。ARKit 3では、仮想の物体を現実の人間の世界に重ねることも、現実の人間を仮想のARの物体の世界に重ねることもできる。「Minecraft Earth」もSwift Strikeもこの手法を使用する。
Swift Strikeはデモ目的で使用されているが、Appleがこのゲームを一般向けにリリースするかどうかは不明だ。
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