プライバシーを懸念する入居者らにとって、物理的な鍵がスマートロックに勝利した。
米国時間5月7日に和解が公表された訴訟で、判事はニューヨークのあるアパートの家主に対し、2018年9月にアパートに設置されたLatchのスマートロックを使用したくない入居者全員に物理的な鍵を提供するよう命じた。
家主のスマートホーム技術の利用について裁定する判例や法律はこれまでなかったため、今回が初のケースとなる。この技術は比較的新しいため、スマートホームデバイスの進化に追い付く時間が司法側になかった。このニューヨークでの訴訟は、スマートテクノロジーについて法廷で是非が問われた数少ない例の1つだ。今回は和解に至っているため法的な先例とはならないが、スマートロックや、意思に反してそれらを設置する家主を懸念する入居者にとって勝利を意味する。
「これは当事者である入居者やニューヨーク市全域の入居者にとって大きな勝利だ。家主が入居者の監視や追跡、威嚇に利用しているこういった類いのシステムがニューヨークで多く使用されている」「原告の入居者らはそういったシステムや、システムが自分たちの生活に及ぼすマイナスの影響の容認を拒否した」と、マンハッタンで入居者らの代理人を務める弁護士のMichael Kozek氏は声明で述べた。
Mary Beth McKenzie氏とその夫のTony Mysak氏をはじめとする入居者らは、Latchのスマートロックやアパートに入る際に必要になるアプリにプライバシーの問題があるとして、スマートロックを設置した家主を訴えた。
93歳のMysak氏はスマートフォンを使いこなせず、スマートロックが原因で自宅に閉じ込められたとMcKenzie氏は述べた。原告らはさらにLatchの個人情報保護方針にも懸念を示した。この方針は、アプリが収集した入居者の位置情報データがマーケティングに使用されるとしている。Latchはデータ収集を行わなかったとして、個人情報保護方針を改訂すると述べた。
Latchのスマートロックはニューヨーク市にある1000以上の建物に設置されているため、今回の和解により、同様にこのロックのプライバシーやセキュリティを懸念する入居者が後に続く可能性がある。
「Latchは今回の訴えの当事者ではない」と、Latchの製品担当バイスプレジデントであるSi Dhanak氏は電子メールで述べ、「当社は当事者である入居者5名と建物の所有者が、建物の共有スペースに入る手段に関する意見の相違を解決するために和解に達したと報じられたことを嬉しく思っている。当社は自宅に入る手段について人々に個人的な好みがあることを理解している」とした。
今回の和解ではさらに、物理的な鍵は家主が「提供すべきサービス」で、今後はいかなるスマートエントリーシステムもそういったサービスには該当しないとした。家主が物理的な鍵を提供しない場合、入居者らは再度この件を訴訟に持ち込むことができると文書に記されている。
家主の弁護士であるLisa Gallaudet氏は、スマートロックが設置されていたのは1つのドアで、入居者は数字コードを使って通ることができ、アプリは必要なかったと述べた。さらに、今回の和解を入居者側の勝利と見なすことは「誤解を招く恐れがある」とした。
「この件が和解に達したただ1つの理由は、私の依頼人がこれ以上この件で時間と労力を無駄にしたくなかったからだ」「今回の合意は、決してこういった問題の裁定における裁判所の意見を反映するものではない。私の意見では、当方の申し立てが認められていただろう。だが双方がこの訴訟で和解するという合意に達した場合、それはどちらにとっても勝利となる」とGallaudet氏は述べた。
この件は和解で終わったが、家主が設置したスマートロックに対する初めての法的な異議申し立ての1つであったため、入居者らは勝利だと考えている。
「今回の和解によって、入居者らは建物への入館管理に用いられる技術からいくらか支配力を取り戻すこととなった」「(米国の)建築基準では、エントランス扉は入居者の鍵によって制御されるべきだと定められており、インターネットアプリによってではない」と、今回の件で別の依頼人の代理人を務めた弁護士のSeth Miller氏は述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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