“分離プラン”を求める総務省の「緊急提言」に困惑--携帯大手3社の決算を読み解く - (page 2)

KDDIはドコモの値下げに追従か

 その分離プランを「auピタットプラン」「auフラットプラン」でいち早く導入しているKDDIは、1月31日に2019年3月期第3四半期決算を発表。売上高は前年同期比0.3%増の3兆7717億円、営業利益は前年同期比1.1%増の8225億円と、増収増益を記録した。

KDDIの代表取締役社長である高橋誠氏
KDDIの代表取締役社長である高橋誠氏

 ただし、分離プラン導入の影響からauの通信量収入は減少が続いており、それを他の事業で補って利益を伸ばしているのが現状でもある。実際、auの通信ARPA収入は0.7%減の5870円、au通信ARPA収入は2.7%減の1兆2975億円と落ち込んでいるが、一方でライフデザイン事業を中心とした「au経済圏」は、「auスマートパス」などの月額制サービスや、「au WALLET」などの決済事業が好調で、売上高が前年同期比23.7%増の4910億円、流通総額が2兆4600億円に達するなど順調に伸びている。

KDDIの利益増減要因。auの通信料の落ち込みを、MVNOやライフデザインなど他の事業の伸びで支えていることが分かる
KDDIの利益増減要因。auの通信料の落ち込みを、MVNOやライフデザインなど他の事業の伸びで支えていることが分かる

 KDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、au通信ARPAに関して「大容量プランの拡大や、スマートフォンの浸透率上昇によって1月からは前年同期比で反転している」と話すほか、auの解約率も前年同期比0.06%減の0.72%にまで改善しているなど、分離プラン導入の影響が減少し、明るい兆しが見えてきている様子を示す。

分離プラン導入の影響で減少が続いていたauの通信ARPAだが、2019年1月には反転するなど回復傾向にあるとのこと
分離プラン導入の影響で減少が続いていたauの通信ARPAだが、2019年1月には反転するなど回復傾向にあるとのこと

 しかし、やはり気になるのはドコモの新料金プランの影響だ。高橋氏は以前より「auは分離プランを導入済み」と話し、単純な追従はしない考えを示しているが、ドコモが現在のauの料金プランより踏み込んだ料金引き下げをしてくる可能性も否定はできない。そのため高橋氏は「同等の料金水準で来ればいいなと思うが、もう少し踏み込んでくると競争になる。しっかり対応していかないといけない」と、現在の水準より安価な料金プランが出てきた場合は、追随する考えを示している。

 総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」が打ち出した緊急提言では、分離プランの徹底だけでなく、4年間の割賦を前提として端末を購入しやすくする「アップグレードプログラムEX」などの端末購入プログラムに関しても、抜本的な見直しを求めている。この点について高橋氏は、具体的なガイドラインなどが示された段階で改めて対応を打ち出すと答えているが、一方で「我々が48ヵ月のプログラムを作ったのは、分離プランを導入すると端末が高くなり、顧客の流動性が落ちるから。流動性が落ちると困る」と話すなど、総務省の強硬姿勢に困惑する様子も見せる。

 実際、分離プランを導入したKDDIのスマートフォン販売台数は、前年同期比で30万台減の191万台と大きく落ち込んでいる。その要因について高橋氏は「第3四半期で競争が激化し、番号ポータビリティで弱含んだ影響がある」と話すが、分離プランの導入で端末が買いづらくなった影響は否定できないだろう。それに加えて端末購入プログラムも見直しが求められるとなれば、端末販売の一層の落ち込みは避けられないだけに、ガイドラインの内容次第では早急な対策が必要になってくるだろう。

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