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「イミフ」「卍(マンジ)」--高校生の語彙力はSNSが育てる - (page 2)

読書、会話、SNSで語彙力アップ

 なお、大学生・社会人ともに「語彙力」が高い人ほど授業や仕事での発表やレポート、家族・友人・学校・職場での人間関係、仕事での活躍や出世、就職試験で語彙力が役立ったと感じている。また、語彙力が高い高校生は、思考力も高いと推察されるという。

 では、どうすれば語彙力が高くなるのだろうか。ベネッセコーポレーションの「第1回 現代人の語彙に関する調査」(2016年9月)によると、語彙力が高い人の特徴は「読書」だったという。「少しでも読書する人の方が語彙力が高い」という相関関係があったのだ。

 そこまでは容易に想像がつくが、面白いのは読書などのインプットだけでなく、会話やSNSなどで言葉を実際に使うアウトプットによっても差が出ていることだ。高校生・大学生では、親と話す機会が「よくある」と答えた人の語彙力は67.8%で、「まったくない」と答えた人より10.5ポイント高かった。

 また、LINEやTwitterなどのSNSやメールを使う高校生・大学生も語彙力が高かった。異なる年代との会話が多いことで語彙が増えるだけでなく、SNSで発信しても語彙力は増える傾向にあったのだ。

SNSは語彙力を増やすが他のメディアも大切

 「SNSでスタンプや短文のやり取りばかりしていると語彙力が落ちる」という論調はよく目にする。決まった短文でのやり取りやスタンプ中心のやり取りでは、語彙力や表現力が落ちるというものだ。確かに、短文やスタンプのみで、きちんとした長文を読んだり文章を書いたりする経験が減っている子どもは語彙が減少する可能性はあるかもしれない。

 しかし、実際にはSNSは文章中心のコミュニケーションが行われる場だ。相手の文章を正しく読み取ったり、誤読されないような文章を書かなければトラブルになってしまうのだ。ある女子高生は、「誤解されないようにLINEやTwitterの文章は読み返すようにしている」と言っていた。

 「Twitterで気軽に投稿したことで知らない人にからまれてトラブルになったことがある。言いがかりと思ったけど、後で考えたらそうとられる可能性もあったのかと思って」。SNSでは、相手の伝えたいことを正しく受け取る読解力と共に、意図した通りに受け取られるような文章力も必要とされるのだ。

 さらに、「絵文字とかつけた上で他の人からどう見えるかチェックしてから投稿する」のが自分なりのコツという。文章だけでなく、絵文字やスタンプで見た目や印象をよくする工夫をしているあたりがSNSならではと言えるだろう。メール時代には「黒メール」、つまり絵文字などを使わない文字だけで黒一色のシンプルなメールは、当時の女子大生たちから「怖い」「怒っているみたい」と嫌われていた。同様にSNSでは、相手の顔が見えないので、絵文字やスタンプで表情や感情を伝えて視覚情報を補おうとしているのだ。

 「新語」はコミュニケーションを促進するために生まれている面があり、それ自体が悪いということはない。また、SNSの利用も文章を読み書きする機会につながっており、悪いことばかりではない。ただし、SNSでは似たような相手とつながる傾向にあるので、周囲の誰もが同じ感覚や考え方であると錯覚するなど、極端化する危険性がある(エコー・チェンバー現象)。

 SNSだけではなく、他の書籍や新聞などの活字メディアにも触れたり、親世代など違う世代と触れることで、社会問題に関心が持てたり、語彙力も増えることにつながるだろう。保護者世代は、高校生たちがSNS以外の活字メディアにも触れたり、他の世代とコミュニケーションする機会を設けてあげてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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