Uberで考える、“アナログ産業のIT化”という衝撃 - (page 3)

月森 正憲(寺田倉庫)2016年09月30日 08時00分

“アナログ産業のIT化”は多方面で展開中

 米国に、「コヨーテロジスティクス」という会社があります。この会社では、4万社の運送業者と契約し、これをネットワーク化することで、空トラック(回送車)をなくしています。彼らは、トラックの効率活用を目指すべく、空トラックと貨物を適切にマッチングさせるアルゴリズムを開発しました。これにより、コヨーテロジスティクスは、2012年だけで、空トラックの走行距離を約885万キロメートル削減し、CO2の排出量を9000トンも抑え、顧客に900万ドルを還元したそうです。

 そして、2015年、コヨーテロジスティクスは、世界最大級の貨物運送会社「UPS」に日本円にして約200億円で買収されました。元々、UPSは毎年ITへの投資を積極的に進めてきましたが、これにより空トラックと貨物のマッチングのアルゴリズムの影響範囲をますます広げていくと予想されています。

 このように、アナログ産業において、ITテクノロジを駆使したマッチング・アルゴリズムは高い評価を受け、その後、買収されたとしても企業の成長因子として機能していくことがあります。日本では、2015年12月に、印刷所の遊休資産を活用したネット印刷事業社「ラクスル」が、配送希望者と配送業者のドライバーをマッチングさせる運送サービス「ハコベル」を開始したのが記憶に新しいでしょう。同社は、2015年12月に40億円、そして2016年8月に20億円を調達し、日本国内では乗りに乗っているスタートアップの1つです。

 もちろん、アナログ産業のIT化の成功要因はマッチング・アルゴリズムのみならず、それぞれの会社の強みが反映され、これさえあれば間違いないというものはありません。たまたま、同じ運輸業ということでUberとコヨーテロジスティックスが類似していただけで、他の業界・業種では異なった要因を見つけることができます。

 本連載では、アナログ産業の企業が起こすITテクノロジを駆使したイノベーションに目を向け、インターネットの本当のインパクトを読者の皆さんと実感し、それぞれの仕事において生かせる視点や視座を共有できたらと思っています。

 次回は、私が所属する倉庫業にフォーカスを当てたいと思います。



月森正憲

寺田倉庫株式会社 執行役員/MINIKURA担当

1975年生まれ。98年寺田倉庫に入社。約5年間、物流現場で重貨物の積み下ろしやフォークリフト操作など現場系作業に従事する。その後、営業職を経て企画担当へ。2012年に、顧客自身が預けた荷物をWeb上で管理できるクラウド収納サービス「minikura(ミニクラ)」をリリース。2015年からは、minikuraのシステムを活用しサービス展開するスタートアップ企業4社の社外取締役も務める

物流とITの融合に可能性を感じ、FinTechの次のトレンドとして「LogiTech」を提唱する

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