IIJ、自社で直接SIMカードを発行--ドコモと連携して「フルMVNO」に - (page 2)

 こうしたフルMVNOならではの特性を生かしたサービスとして、島上氏はいくつかの事例を挙げて説明した。

 機器にあらかじめSIMを組み込んでおき、後からデータをアップデートすることで、機器メーカーのニーズに応じたSIMを提供できる「SIMの部品化」、1枚のSIMで国内外の通信サービスをリーズナブルに提供する「マルチカントリーMVNO」、そしてSIMの情報を用いてアプリケーションの認証ができる「アプリとSIMの連携」などが、フルMVNOによって実現可能になるとしている。

 そして、IIJがフルMVNOになることで狙っているのは、IoT機器に向けたネットワークを提供することで、新しい通信市場を開拓することにあるようだ。

 IIJ代表取締役会長の鈴木幸一氏は、同社がフルMVNOを目指した背景に「ワイヤレスが将来、IoTを含めたネット社会の基本インフラとして大きな役割を果たす」という考えがある話す。移動体通信は長い間モビリティを重視したものであったが、IoTの広まりによって今後はITC社会を支えるネットワーク網として重要性が高まっていくと鈴木氏は話しており、フルMVNOは新しいネットワークソリューションを作るための第一歩だとしている。

IIJ会長の鈴木氏
IIJ会長の鈴木氏
新しいモバイル通信市場
IIJはフルMVNOの実現によって、IoTを主体とした新しいモバイル通信市場の開拓を目指すとしている

 IIJはMVNOであり自社で無線インフラを持たないが、鈴木氏がIIJでISP事業を立ち上げた時も「『インフラを持っている会社が(ISPに)進出してきたらどうするんだ』と危惧された」とのこと。それでもIIJはネットワーク技術を高めることで、現在に至るまで日本のネットワークインフラで大きな存在感を発揮している。それゆえ移動体通信の分野であっても、ネットワーク技術を高め、R&Dを積極化することにより、IIJが新しいネットワークを支える基盤になることができると話している。

 なお今回、フルMVNOとして提供できるのはデータ通信部分のみである。音声通話に関しては、現状もキャリアから卸を受けているのみであり、データ通信のように自由な料金設定もできない状態にある。それゆえ音声通話も含めたフルMVNOの実現に関しては「まず開放に向けた議論が必要」と島上氏は話している。

 またHLR/HSSを自社に持つことに伴って、新たに数十億円程度の設備投資が発生するとのこと。そうしたことから今回のフルMVNOで実現するサービスに関しては、主に法人向けを対象としたものになるようだ。

 同社の「IIJmio」に代表されるスマートフォンを主体とした個人向けサービスに関して、島上氏は「SIMを別途買う必要なく、機器にSIMが埋め込まれるようになるなど、利便性を享受できる部分もある。だが今のスマートフォン市場にフルMVNOが寄与するかというと、そうではない」と答えている。

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