改めて、SNSの実名利用のメリットとデメリットを整理してみよう。SNSを実名で使うメリットはある。名前で仕事をしている人なら、ブランディングや新しい仕事などにつながる可能性があるだろう。発言も、匿名で発信するより信頼性が増すはずだ。一般のユーザーでも、実名で使うことで昔の知り合いと再会したり、知人に見つけてもらいやすくなったりする効果もある。
一方、実名を使うデメリットも少なくない。一番は、個人情報が流出しやすくなることだ。特にFacebookでは顔写真はもちろん、在籍校、出身校、勤務先や居住地なども登録するため、多くの情報が紐付いてしまう。投稿内容に配慮して使う分には問題ないが、多くの10代はそれができない。それゆえ、多くの炎上事件につながっているのだ。
また、リアルと投稿内容が紐づくことにより、ストーカー事件や暴行事件、空き巣被害などにもつながることがある。SNSにおける投稿がリアルに影響を与えることが多いわけだ。そのほか、なりすましなど情報が悪用される可能性もあるだろう。
日本新聞協会の報道資料研究会によると、「動画投稿サイトやソーシャルメディアに掲載された動画、画像の利用について、投稿者の許諾が得られない場合でも報道利用であれば全面的に認められる」「投稿者本人が利用を拒否した場合でも、法律面で問題ない」「ソーシャルメディアに投稿された顔写真についても同様に、報道目的であれば許諾無しで利用できる」とされている。
SNSに投稿した写真は、報道される側になった時には勝手に使われる可能性があることも知っておきたい。
立命館大学では、「SNS利用にあたって知っておいてもらいたい5つのこと」というSNSを使う上での注意点を自校の学生向けに公開している。その中で、「ネット上での『実名』の登録・情報発信についてのリスク」についても触れられている。
匿名で発信した内容でも、他の実名で登録したSNSの内容と照らし合わせて個人情報を特定されて炎上につながる件について警告を発しているのだ。
ここにも書かれている通り、「不必要に実名登録、実名での情報発信はしない」ことは重要だろう。少なくとも、実名で登録するなら、実名利用で起こりうるリスクを自覚して投稿する必要がある。
匿名で鍵をかけて利用するアカウントと、実名で公開して使うアカウントの使い分けなども、1つの方法として有効かもしれない。ただし、匿名でも内容によっては炎上などにつながることがあるので注意が必要だ。
もう1つ、「実名で発信する場合は公開範囲を適切に設定する」ことも大切だ。友だちになる相手は信頼できる相手に限定し、プライバシーに関わる内容の公開範囲は「友だちまで」にするなど、個人情報は自ら管理する必要があるだろう。周囲の大人は、若者たちにSNSを実名利用する際のリスクと対策についてアドバイスしてあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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