「完璧主義」では海外でうまくいかない--外国人から見た日本のゲーム業界 - (page 2)

エンタメのクラウドファンディングは“夢”のサポート

 オザン氏は、日本には寄付の文化が根付いているものの、それに近しい存在であるクラウドファンディングが盛り上がらないことに疑問を持っているという。それについてジャッド氏は、災害や人命に関わることに寄付する文化があっても、エンターテインメントや“遊び”に対して寄付をすることに抵抗感があると指摘する。またギオーム氏は、海外では寄付したことを自己アピールし、それを拡散してプロジェクトを広げていく傾向にあるものの、日本では寄付の自己アピールを好まないため、知れ渡らないため盛り上がらないではないかとも付け加えた。

  • ハンサリ・ギオーム氏

 ジャッド氏は、エンターテインメントにおけるクラウドファンディングは、夢をサポートする寄付と考えている。一方で、実際に手かげた日本人クリエイターのゲームのクラウドファンディングにおいて、国内ではさまざまなところで話題になったにも関わらず、寄付を行った日本人は少なく、さらには一部でお金もうけのような見られ方もされたことをすごく残念だと語った。このサポートがなければゲームが発売されない、それはイコールとして夢が実現できないということをエンターテインメントが好きなファンに理解して欲しいと主張した。

 ヘリング氏は、ゲーム開発やコンテンツ制作といった、エンターテインメントを生み出すため工程やコストがそもそも理解されていないことも背景にあるとし、大きな成功を収めたプロジェクトも出ていることから、それらを通じて理解が広まることを期待しているという。

 このクラウドファンディングを活用したゲーム制作については、面白いビジネスモデルになりえると考えているのがジャッド氏。プロトタイプ制作でもコストがかかるため、コンセプト段階からユーザーに公表することでユーザーの期待値を計ることができ、コンセプトの見極めができるという。うまく使えば開発会社とパブリッシャーはもちろん、ユーザーにとっても欲しいタイトルが世に出てくるというメリットもあるという。

失敗を乗り越えてこそ成長する

  • ベン・ジャッド氏

 ギオーム氏は、日本のソフトウェアのエンジニアリングが産業として崩壊していることに危機感があるという。会社にエンジニアとして入ってゼロからもの作りをするのではなく、すでにあるシステムに固執しカスタマイズして活用、それを長年にわたって保守するのが日本だと指摘する。

 また「苦しい」「帰れない」「給料が低い」の“3K”状態なのも拍車をかけていると指摘する。そしてそれは、権限を持っている経営層がエンジニアリングを理解していない、CTO(最高技術責任者)と呼べる人がほとんどいないことも背景にあるという。そして新しい技術を活用したくても、失敗したときのリスクや責任が取れない、チャレンジができない環境は、エンジニアとしてモチベーションは上がらないと指摘。現実として日本製のソフトウェアで、海外で成功しているものはほとんどないことが、それを証明していると付け加えた。

  • マイケル・ヘリング氏

 クリエイターが世界進出に必要なものについて、オザン氏は「オープンな性格」「相手を受け入れること」を挙げた。文化が離れている相手と順応することは簡単ではないゆえ、うまく受け入れつつ、日本人としてのいいところを出して自信を持つことが大事だと回答。また4人が口をそろえて日本人は完璧主義すぎるとも付け加えた。商品ひとつとっても完璧なのはいいところでもあるが、失敗を繰り返しそれを乗り越えてこそ成長するものであり、失敗を恐れない姿勢が大事だと語っていた。

 4人から見た日本のいいところについては、仕事に誇りを持っていることや責任感の強さ、真面目な気質、気配りや周囲への配慮といったことが挙げられた。たとえばファーストフードや空港の清掃といった仕事で、海外ではやる気がない様子があからさまに見られるが、日本において真面目に取り組んでいる光景が見られるのは素晴らしいとも。また夜にひとりで出歩いても心配がないほどの治安の良さを皆が挙げ、 そろって日本で暮らし続けるつもりとも語った。

 ジャッド氏は幼少のころに両親が離婚したこともあり、孤独な環境を埋めたのがファミコンだったと振り返ったほか、4人とも日本のゲームが好きで影響を受けたと話す。ジャッド氏は日本のゲーム市場が縮小している現状は率直に悲しく、自身が好きな日本のゲームは出てこなくなるのでは、と危機感もあるという。エージェントの仕事を通じて自身がやりたいゲームを世に出していくようにしていきたいとし、ほかの登壇者もそれぞれがそれぞれの立場でゲーム業界に役に立つことができればと語った。

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