スマートフォンネイティブが見ている世界

「東京SNSルール」は効果あり?--10代における理想のスマホの使い方 - (page 2)

ルールは意識や行動を変える「きっかけ」

 東京都教育委員会によると、児童生徒においてインターネットの利用に関するルールを定めている割合は、2012~2014年にかけて小中高校・特別支援学校すべてで減少傾向にある。一方、利用時間に関するルールを決めている高校生は9.7%だが、そのうち利用時間のルールを守っている高校生は58.8%いた。

 ルールを定めるということは、理想的な利用の仕方や、問題のある利用について意識するということだ。家庭や学校、地域などで、問題ある利用の仕方について共通認識を持つことでもある。


 女子中高生に話を聞くと、やはり「LINEの止めどきがわからない」という子は多い。「もう終わりかなと思うとやっぱり返事がくる。返事がくると見ちゃって既読がつくから、返事をする。返事をするとやっぱり返事が返ってくる。気付いたら午前1~2時になっていたり、スマホを持ったまま寝落ちしていることは多い」。このような話は早ければ小学校くらいからある。小学5年女子が「朝までLINEとYouTubeができるから土曜日って大好き」と言っているのを聞いたこともある。

 彼女たちがやめられないのは終わらせるきっかけが見つからないからだ。しかし、もし共通認識として「夜は10時まで」などのルールがあったら、やめるきっかけにつながる可能性があるのだ。実際、スマホの利用時間制限をしている福岡県うきは市の中学校では、3割超の生徒が「ぐっすり眠れるようになった」、4割以上が「学校で友達との会話が増えた」と回答するなど、生徒からも好評のようだ。

 岡山県瀬戸内市の中学校でも、生徒たちに授業でスマホ画面の光による睡眠への影響を調べさせた上、SNSを1週間使わない「1週間SNSのない暮らし体験」を呼びかけている。その結果、全校生徒の90%以上が自主的に参加し、1日に2時間以上使用している生徒が約半数から1割に減ったという。

 ポイントは、あくまで強制ではなく、子どもが自主的に利用を制限する点にあるのではないだろうか。スマホを長時間利用することの弊害を理解し、自主的に利用時間を減らすことで、生活の改善などにつながる可能性があるのだ。

セルフコントロールが最終目標

 もちろん、どんな問題もルールさえ決めておけば解決するというわけではない。たとえば、冒頭で紹介した東京都教育庁が調査した結果でも「ルールは必要ない」と思う高校生は48.5%いる。主な理由は、「インターネットの利用は自己管理するものだから」「インターネットの利用は個人の自由だと思うから」などとなっている。

 先日私の元に、某私立中学の生徒が授業で取り組むレポートのために、著作『ソーシャルメディア中毒』についてインタビューしに来たことがある。「友だちがSNSでトラブルを起こしていた」のが興味を持ったきっかけだったというが、彼自身はLINEなどのSNSは使っていなかった。友だちの間で流行している「パズドラ」などのスマホゲームを、勉強時間の息抜きとして時間を決めて使っているだけだった。

 保護者との間で決めたスマホの利用ルールがあるということで見せてもらったが、ルールを決めるまでもなく、彼がスマホでトラブルを起こさないことは明らかに思えた。スマホにまったくはまっていないし、使いすぎることの危険性について熟知していた上、部活動などの他にやりたいことが明確にあったからだ。


 スマホはゲームもSNSもでき、動画も見られる魅力的な端末であり、はまってしまう子どもは多い。ツールとしてコントロールして利用できるようになるには、保護者が何らかの手を貸す必要があることが多いだろう。その1つがルールであり、フィルタリングサービスであり、ペアレンタルコントロール機能や、アプリなどを使った利用時間制限だ。

 ルールを決めるのは、携帯電話やスマホを利用し始める時が理想的だ。もし、すでに利用し始めているのであれば、子どもがセルフコントロールして利用できているかどうかを確認し、今からでも自分のスマホ利用は客観的にどうなのかを考えさせる必要があるかもしれない。利用しすぎることの弊害を知り、利用制限することの良さを知れば、自主的にコントロールして利用し始めるようになるかもしれない。この記事を、子どもの利用を改善するきっかけとしていただければ幸いだ。


高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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