アジア現地駐在員マーケティングレポート

「試験重視」で創造力損なわれがち--現地学生から見たシンガポールの教育

島田裕一(アウングローバルマーケティング)2015年10月21日 08時00分

 この連載では、アウンコンサルティングの現地駐在員による、日本・台湾・香港・タイ・シンガポールでのマーケティングに役立つ現地のホットトピックを隔週でお届けします。今回はシンガポールから、試験の結果と学校の成績次第で人生が決まる、現地の超成果主義の教育システムについてお伝えします。

近視と勉強量の相関関係

 シンガポールで生活をしていると、メガネをかけている子どもをよく見かけます。集団でバス通学をしている風景のなかでは、メガネをかけていない子どもの方が珍しいほどです。

 Ministry of Health(健康促進局)の調べによると、2011年時点でシンガポール人の12歳の子供の約65%以上が近視であり、その後も年々増え続けています。日本の約25%、オーストラリアの約12%、イギリスの約30%と比べても、非常に高い数字であることがわかります。

 興味深いデータとして、National Center for Biotechnology Information(国立生物工学情報センター)の調べによると、健康診断を受けた15~25歳の男性42万1116人のうち近視と診断された人は、学校教育を受けていない人の約15.4%に対し、専門学校や大学を卒業した人では約62.6%にものぼるとのことです。

 シンガポールの子供たちは日本の子供たちのように外遊びをする機会が少なく、机上での勉強が生活の大きな割合を占める、という現実が近視にも影響しているようです。

 試験の結果と学校の成績次第で人生が決まる超成果主義の教育システムにおいて、優秀なエリートコースを歩むための熱心な取り組みは、早ければ幼稚園に入る3~4歳から始まります。その流れができたのには、具体的にどのような経緯があるのでしょうか。

これまでの教育システム

 建国から50年間、資源もなく国土も狭いシンガポールにとって、優秀な人材の育成は、国としての最優先課題のひとつでした。

 そのなかで、シンガポールは国策として、経済発展に向けて外資を積極的に誘致し、外国企業の進出にともない赴任してくる外国人マネジメント、いわゆるPMETs(Professionals、Managers、Executives、Technicians。上級職員や技術者)をいかに補佐するかという「スキル教育システム」を組み立てていた、と認識されています。

 決められたことをマニュアル通りにこなすのは得意だが、新しいことを生み出したり、臨機応変に対応したりすることはあまり得意ではない――というのがシンガポール人全体の実情です。それが、これまでのシンガポール経済の発展に大きく貢献し、経済政策に沿った教育システムの側面として、個人の労働者としての質に影響を及ぼした可能性があると考えます。

 もちろん、数少ないエリート層は、官僚となって政府に入り、医師、弁護士並みの高給をもらいながらダイナミックな仕事をしています。近年ではシンガポール人のアントレプレナーも増えているなかで、一概には言えませんが、得てしてこのようなシンガポール人労働者像を持つ外国人マネジメントも多いようです。

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