スマホを買うか、フィルタリングをするか、LINEを使うかはすべて保護者次第であり、教員は口を出せない。その一方で、問題が起きた時だけ「学校のお友達とトラブルが起きた」と苦情が持ち込まれるため苦労していると、教員から聞いたことがある。つまり、具体的な対策はできないのに指導は求められているのが学校現場なのだ。
そこで、スマホ所持などを一律禁止にしている学校も多く、私立などでは「SNSを使っていることが分かったら停学」というところもある。「指導はできないが禁止で対応する」ということなのだろう。情報教育の対象はPCであり、現状の指導要綱にはスマホやSNSは含まれていないため、対応は難しいのが現状だ。電車通学などで生徒の端末利用を許可せざるを得ない学校は、校門を入ったところで端末を預かり、帰宅時まで使えないとしているところも多い。
一方、子どもの間でスマホの利用ルールを考えさせてうまくいっている例もある。たとえば「灘区ネット・携帯・スマートフォンの自主ルール」は次のようになっている。教員側からの押しつけではなく、子ども自身で考えたルールのため、実効性が高いようだ。
年上の高校生や大学生にネットの安全利用について教えてもらっている例もある。大人側の視点ではなく実際に利用している年が近い世代の言葉は、説得力を持って響くようだ。教員側が指導が難しいのであれば、子ども同士に任せるという方法もあるのだ。
ネット安全教室の元祖的存在であるNTTドコモの「スマホ・ケータイ安全教室」が始まったのは、今から約10年前の2004年だ。10年間で4万8000回、2015年3月末時点で約704万人が受講しているという。つまり、スマホ、ネットの安全指導はごく最近始まったものであり、保護者・教員世代は知らない可能性が高いのだ。実際、今の20代の若者は学生時代にネット安全教室などの指導を受けたことがない場合が多い。
子どものスマホ、ネット利用の問題は、やっと社会の注目が集まってきた時期であり、まだまだ過渡期にある。環境は整っていなくても、子どもの間で問題は起き続けている。保護者・教員たちは、できる限りの対策をし続けなければならない。当連載でも、スマホネイティブ世代の利用状況とともに、できる限りの対策についてもお伝えしていきたいと思う。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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