ドコモが4年ぶりに好転、ソフトバンクは米国事業を再建へ--携帯キャリア3社の決算を読み解く - (page 3)

海外事業も伸び好調が続くKDDI--懸念はコンテンツと決済

 翌8月7日には、KDDIも2015年度第1四半期の決算を発表した。その内容を見ると、売上高は前年同期比7%増の1兆466億円、営業利益は19%増の2310億円となっており、引き続き好調な決算内容となっている。

 好調の要因は、モバイルにおける通信料収入が引き続き拡大していることだ。KDDIは今年度より、従来指標として用いていた、契約回線1台当たりの売上を示すARPUから、ユーザー数当たりの通信料や付加価値サービス料金の売上を示す「ARPA」へと指標を変更しているが、au事業の通信ARPAが90円伸びたことが大きく寄与。トータルとしては前年同期比4%増の4654億円に達したことが、増収要因となっているようだ。


au通信ARPAの順調な拡大が、好調な決算に寄与しているようだ

 もう1つ、今後の伸びに寄与すると見られるのが、タブレットの販売が好調だということ。この傾向はドコモも同様ではあるが、KDDIの場合タブレットの累計契約数が前年同期比で2.3倍に上っており、1人当たりのモバイルデバイス数も1.38台と、順調に増加している。利用デバイスの増加は通信料収入への増大へとつながりやすいだけに、伸びの大きさは期待が持てるところだろう。

 また今回、大きなトピックとして挙げられたのがミャンマーの通信事業である。KDDIと住友商事、そしてミャンマーのMPTが共同で運営するMPTのモバイル通信事業は、共同事業契約を締結した昨年7月から、利用者数が1年間で1400万を超え、2倍を超える勢いで伸びているとのこと。その伸びがグローバル事業の売上にも反映され、グローバルセグメントの営業利益は前年同期比216%増の77億円に達している。


KDDIや住友商事が参加しているミャンマーの携帯電話事業が好調に伸びており、グローバル事業の売上拡大に貢献しているとのこと

 今回も各事業の順調な伸びを示す決算だったといえるが、気になるのはau通信ARPAが大きく伸びている一方で、付加価値ARPAは前年同期比で見ると微増にとどまっており、前期比で見ると減少傾向にあることだ。「au WALLET」などによる決済手数料収入も、契約数こそ増えているものの利用自体は伸び悩んでいるようで、前年同期比20円増にとどまっている。

 確かにここ最近、KDDIは得にデジタルコンテンツに対する新しい施策をあまり打ち出しておらず、既存のサービスも停滞傾向にあるように感じる。この点は、次々と新しいコンテンツサービスを投入し、スマートライフ事業を活性化させているドコモとは対照的といえ、同社が推進する「3M戦略」の全体像を考えても懸念されるところだ。今年の夏に開始が予定されているECサービス「au WALLET Market」などで、利用拡大が進むかどうかが注目されるところだろう。


付加価値ARPAの推移を見ると、コンテンツ系の収入は落ち込みを見せており、au WALLETなどの決済手数料収入も伸び悩み傾向にある

2年縛りの見直しに対する各社の反応は?

 ちなみに今回の決算では、総務省が見直しを求めていることで動向が注目されている、いわゆる“2年縛り”に関する質問が相次いでいた。各社は総務省の要求に対し、今後どのような形で応えようとしているのだろうか。

 この件に関して、最も具体的な施策について言及していたのがKDDI代表取締役の田中孝司氏である。田中氏は「顧客に理解いただけるよう、自主的な取り組みで改善を進めている」と話すが、今後については「定期契約プランが終了した後、どのような形にするかは検討中だが、2年契約の後、自動更新がないようなものも検討しており、決まったら発表する」と答えている。あくまで2年契約を前提にするとしながらも、自動更新がなく解約しやすい仕組みの検討が進められているようだ。

 またドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は、「いくつかの案を検討しており、方向性はまだ決まっていない。できるだけお客様に納得いただけるものにしたい」と話している。やはり総務省の方針を受けて、料金プランなど何らかの施策を打ち出す方針であるようだ。

 一方、ソフトバンクの孫氏は、「そういうルールになればルールに従う。我々は2年縛りでない売り方をしてきたが、他社に追随したいきさつがある。他の2社に従ってやるのであれば大いに結構」と話している。自主的な料金施策の変更は表明しておらず、やや消極的な姿勢も見えるが、他社に追随する形で何らかの施策を打つことは確かなようだ。

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