アーティスト視点のテクノロジ活用

音楽イベントに「IoT」の波--センサ活用、生体情報で“最適化”図る - (page 2)

生体情報によって最適化される音楽体験

 IoTの仕組みは、各デバイスやシステムが生活者に対して最適と思われる“挙動”、“振る舞い”を提供することが大きな価値であるが、そのために空間や人の状況を感知するさまざまなセンサが重要な役割を果たす。

 イベント「2045」は、アーティストの真鍋大度さんとプログラマの徳井直生さんによって開催されたクラブイベントだ。このイベントには、「音楽を学習した人工知能は、人間を感動させることができるのか?」というテーマが設けられ、iBeaconを含むいくつかのセンサによる来場者の情報収集と、そうした情報を人工知能に認識させ、フロアに流す楽曲を最適化するという試みが行われた。

 具体的には、来場者のiTunesのプレイリストデータ、来場者が会場内のどこにいるのかという位置情報、酒気を検知するセンサによって来場者の呼気のアルコール濃度、加速度センサによる盛り上がり度合いといったものを収集した。そうした情報を人工知能が咀嚼(そしゃく)し、その“場”に最適化した選曲をDJとして提供するというものであった。

 その日その時の会場において最適と思われるコンテンツを提供するというこのイベントは、「音楽を学習した人工知能が人間を感動させることができるか」を試すものとなった。


IoTは“人によるおもてなし”を代替しうるのか

 モノが満ち足りた現代にはおいて、人はサービスを超えた「価値ある体験」を求めている。「価値ある体験」には自分自身への最適化が重要な要素となる。そもそも人は、五感だけに留まらないさまざまなセンサを通じてその場や人の情報をキャッチしておもてなしを提供できるが、IoTという仕組みはこうした「人によるおもてなし」を代替しうる仕組みだ。

 DJが自らのセンサでオーディエンスを見てその場の空気を感じ、選曲するように、さまざまなセンサを通じて情報を集め、人工知能によって提供されるプレイが、実際にどこまで「生身のDJによるおもてなし」を代替できるのかは非常に興味深い。

 今後は、来場者の位置、移動先やそのスピードと情報に加え、体温、心拍数、脳波、酒気など細かな生体情報を含め、今その人がどういった状況にあるのかということがセンサによって感知され、選曲、音色、ステージ上の照明や映像の内容への反映がなされていくだろう。また何より、アーティスト自身がそうしたIoTの仕組みの中の1つのパーツとなり、各センサによって集められた客観的な情報を認識してパフォーマンスに反映させることが当たり前になっていくのではないだろうか。

矢野悠貴

芸能プロダクション・エイベックスでアーティストのマーケティングおよびマネージャーを担当し、アーティストとファンのコミュニケーションのため、早くからFacebookやTwitterアカウントを活用。その後、コンサルティング企業で、企業のソーシャルメディアの活用支援のほか、 講義やセミナーなどを行ってきた。現在はインターネットサービス企業にて新規サービスの立ち上げに携わる。

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