テストマーケティングでも、実際のマーケティング施策でも、PDCA(Plan・Do・Check・Action)を回すことは重要だ。実施前に熟慮を重ねてプランを練り、さまざまなシミュレーションをしてリスクを洗い出したとしても、一度で完璧な答えを得られるとは限らない。
そのため、事前に決めた評価指標を活用して、キャンペーン開始数日後の早い段階から必要に応じて施策の微調整をすることもあり得るのだ。マーケティングには、それだけの臨機応変さも必要になる。さらにキャンペーン終了後に、その成果や各種指標数値を検証したデータマネジメントを実施し、次回以降のキャンペーン戦略をプランニングする際の参考にするのだ。
釈迦に説法かもしれないが、ここで評価指標について簡単におさらいしておきたい。一般的に用いられるのが、KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要行政評価指標)という概念だ。KGIは最初に定められた目標の達成度合いを定量的に測る指標。KPIは、そこに至る過程で、目標を達成するためのプロセスの実施状況を測るための指標、つまりは実行の度合いを定量的に示す指標だ。そのため、まずは目標に対してKGIを明確化したうえで、プロセスごとの中間指標(KPI)を設定するという順番になる。その結果、意図したとおりにユーザーが動かなかったと分析した場合には、「次回はインセンティブを設ける」「導線の設計を見直す」などの検討をする必要が出てくる。あるいは、新規ユーザーは想定どおりの動きをしたけれど、既存ユーザーはそうではなかったとすれば、どこに問題があるのか、既存ユーザーはなぜ動かなかったのかを考え、計画を修正する必要があるだろう。
インターネット広告にはCVR(コンバージョンレート)という指標がある。これは、ウェブサイトへのアクセス数(=ページビュー)やユニークユーザーのうちどれだけの割合のユーザーが、商品購入やキャンペーン参加、登録などの行動を起こしたかということを示す指標だ。たとえば、あるメール広告からウェブサイトにアクセスしてくれた人数は少なかったが、購入者の比率が高い場合、そのメール広告のCVRは高いということになる。
この手法を、オンラインだけでなく旧来の手法にもあてはめ、どのメディアから流入したユーザーのCVRが高いかをみていく。その結果「リスティング広告にもっと予算を充てていこう」「チラシは初期の立ち上げに絞っていくべきか」「店頭ポスターやのぼりのメッセージを再考しよう」といったことを決める材料にできる。
すべての手法を同一線上でとらえ、評価することが重要だ。その結果、メディアごとの予算の配分や、広告メッセージのチューニングが可能になる。これもまた重要なPDCAであり、そうやって知見をため、クライアントもエージェントも共通認識を持ちつつ、一段階ずつ先に進んでいく必要がある。
「策士、策に溺れる」ということわざがある。このことわざの教訓は、頭の中や机上だけで計算をして企画を詰めても、現場でターゲットの心には響かないことが少なくないということだ。キャンペーンを実施する、新商品を発売するなどの際に、思ったようにユーザーが動いてくれない、反応がにぶいといった場合は、数字やデータを見直すだけでなく、現場でユーザーと同じ体験をトレースしてみることも重要だ。そして、消費者視点でユーザー体験をすべて見直してみるべきなのである。
実際のマーケティングでは、データマネジメント以上にユーザーとのコミュニケーションが重要になる。ユーザー視点で本当に価値があるか、魅力的か、使い勝手がいいか、分かりにくくないか。そうした点を常に確認してPDCAを回しながら、顧客価値、消費者価値の極大化を図る必要がある。これはデジタルマーケティングでも、統合マーケティングでも同じことだ。
たとえば、外食産業のキャンペーンを例に考えてみよう。新商品の告知をする場合、提供するべき情報としては、その商品を食べた時に感じるであろう、味や食感、香りといったものを感じさせるシズル感だ。
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