アップルCEOが貫く強気の姿勢--就任後最大の試練と今後への懸念 - (page 2)

　ABI Researchの調査結果は、タブレット分野でAndroidがiOSを抜いて、最も売れるプラットフォームになる可能性があることを示しているが、AppleはAndroidタブレットを扱う多数の企業を相手にして、大きな利益をもたらす50％のシェアを現在も維持している。中核的なアプリに目を向けると、Googleは「Google Maps」や「Google Now」、間もなくiOS版が提供される新しいストリーミング音楽サービスによって、Appleに対する圧力を強めている。

　ユーザーから愛される企業であり続け、現在の大きい利幅を維持するために、Appleは困難に立ち向かうための新製品と、iPhoneやiPadのような業界を一変させるヒット商品を発表し続けなければならない。同社がハードウェア製品で大きな失敗、つまり、問題のあった「Maps」アプリよりもはるかに大きな失敗を犯してしまうと、Appleブランドはいつものようにとどまるところを知らない繁栄を享受するのではなく、一時的に反感を買うことになる可能性もある。

提供：NetMarketShare

　Cook氏は、Appleが進むべき道を見失っておらず、ヒット製品を開発して新たなカテゴリを発明する能力をなくしていないことについて、確信を持っているようだ。

　Cook氏はAll Things DのWalt Mossberg氏とKara Swisher氏に対して次のように述べた。「しばらく取り組んでいる素晴らしい計画がいくつかある。素晴らしいアイデアと、これまでと同じ文化があり、iPhoneとiPadをもたらした人々の多くや、『iPod』をもたらした人々の多く、そして『Mac』をもたらした人々の一部までもが、今もAppleに残っている。その文化は今でも全く変わらぬ状態で残っており、それらの製品に関わった人々の多くも在籍している。Appleは業界を一変させるものをほかにも持っていると思う」

　だが、Appleが新しいiPhoneを発表してから8カ月近くが経過し、「iPad mini」が発売されてから7カ月が経っている。テクノロジの世界の時間では、何か素晴らしいことや低価格版iPhoneのようなクールな追加製品の発表を行わずにいるには長い期間であり、より多くのチャンスを競合に与えてしまう。Appleは先日、背面カメラが省かれて薄くなった新しい「iPod touch」をひっそりとリリースしてはいるが、さほどクールなものではなかった。

　AppleのWorldwide Developer Conference（WWDC）の開幕を6月10日に控えた今、Cook氏はインタビューで、Appleウォッチャーなら誰もが知っているようなことを明かした。Jony Ive氏が率いるCook氏のチームが同イベントでiOSと「OS X」の新バージョンを披露するのだという。しかし、同氏が明かしたのはそれだけだった。Appleがテレビや腕時計、メガネ、スマートフォンを再発明することについては、一言も触れていない。

　Cook氏は、「Appleは準備が整ったときに製品をリリースする。われわれは驚きという要素の価値を信じている。それを変えるつもりはない」と述べ、Appleで偉大な製品群の誕生につながった連鎖反応という自身の考えを示した。「われわれは製品に注力し、最高の製品を作らなければならない。それを正しく行い、人々の生活を豊かにする偉大な製品を作れば、ほかのことは自然に付いてくる」（Cook氏）

　Tim Cook氏は目標を高く設定しており、前任者のやり方を受け継いでいる。ただし、今後数カ月のある時点で、業界を一変させるような新製品や、大きな困難に立ち向かうための製品を発表して、その目標を飛び越える必要があるだろう。さもなければ、同氏は心配事を抱えることになる。

2012年のAppleのWWDCで講演するTim Cook氏。
提供：CNET