ところで気になるのは、ドコモがタワーレコードとらでぃっしゅぼーやを買収した理由だ。一見、関連性が薄いようにも見える2社だが、阿佐美氏は両社の共通点として「生活に密着していること」を挙げる。
まず、タワーレコードについては、ドコモはもともと同社株式の42.1%を保有する筆頭株主だったことが大きい。また「ネットだけでは生活は完結しない」(阿佐美氏)という考えから、全国に店舗を構えて一定の固定客をつかんでいることが、「今後は逆に強みになってくる」(同)と見ている。
デジタルコンテンツの領域では、ドコモはすでにレコチョクと音楽ストア「dマーケット MUSIC ストア powered by レコチョク」を展開している。ここに物販が加わることで、たとえば1曲だけ音楽をダウンロードしたユーザーに、その楽曲が収録されているアルバムCDをレコメンドするといった、相互送客も可能になる。
さらに、ドコモでは電子チケットも取り扱っている。タワーレコードではCDを購入するとライブの参加券がもらえる取り組みなども行っていることから、ドコモが自社で、音楽配信、CD物販、ライブチケット販売を総合展開することで、「デジタルからリアルへの橋渡しができるようになる」(阿佐美氏)という。
らでぃっしゅぼーやは有機野菜の宅配サービスだが、なぜドコモが生鮮食品に着目したのか。ドコモ フロンティアサービス部 金融・コマース事業推進担当部長の江藤俊弘氏は「スマートフォンという顧客が片時も手放さないものと、“食”という分野の親和性が非常に高かったため」と説明する。
また、ネットスーパーはすでにイオンやイトーヨーカドーといった大手小売企業が展開しているが、「イオンなどは一般家庭向けの商材がメイン。らでぃっしゅぼーやは、こだわりの一品が多く価格帯も高い」ことから、顧客層は被らないものと考えている。
らでぃっしゅぼーやは現在、カタログでの注文方法を採用しているが、今後はドコモのスマートフォンやタブレットから、どこでも食材を注文できるようにすることで、利便性の向上とコスト削減を図る。
また、江藤氏は無料トライアルのような形で商品を提供することも検討していると話し、ネットでの生鮮食品の購入に抵抗のあるユーザーにも広く訴求していきたいとした。「ハードルの低い仕掛けを用意して顧客の最初の間口を広くする。気に入っていただけたら継続的に注文していただきたい」(江藤氏)
モバイルを核とした“総合サービス企業”を目指すドコモの、ECへの取り組みは始まったばかりだ。
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