電子書籍の価格をめぐる問題--アップルらを米司法省が提訴した背景 - (page 2)

Greg Sandoval (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2012年04月16日 07時30分

 このような取引は目新しいものではないが、Appleが2010年に提案したような契約に加えて、さらにこうした取引を重ねることはほとんどない。これらを総合して考えてみると、競争を阻害しようとしているのかどうか分からなくなってくる。ここで、1890年に制定されたSherman Antitrust Act(シャーマン独占禁止法)について振り返ってみよう。

 この法律の趣旨は非常に単純で、「消費者が支払う商品価格を上昇させることを目的とした、あるいは上昇させる傾向のある合意を防ぐことによって、消費者を守ること」だ。

 この法律は、競争を妨げることを意図したものではないし、合法的な手段によってビジネスチャンスを広げる方法を見つけた、熟練した競争者の成功を阻害するためのものでもなかった。しかし、何が合法的な競争で何がそうでないかを判断するのは、難しい問題になりかねない。

 出版社は、Appleがエージェンシーモデルの計画を持ちかける以前の2010年には、Amazonが電子書籍市場を独占していたと主張している。Amazonの電子書籍リーダー「Kindle」は大ヒットした。Amazonは電子書籍の価格を大幅に引き下げようとしたため、出版社は、Barnes & Nobleなどの小売業者の価格が相対的に高くなり、出版社と消費者の前には、書籍販売を支配する巨大な1社しか残されないのではないかと懸念した。

Hachette Book Groupのデジタル担当幹部のMaja Thomas氏。Hachetteは今回告訴された企業の1社だ。
Hachette Book Groupのデジタル担当幹部のMaja Thomas氏。Hachetteは今回告訴された企業の1社だ。
提供:Greg Sandoval/CNET

 レコード会社や映画会社などのメディア企業は、小売市場に数多くの販売業者が存在する状況を最も好む。そのような状況であれば、業者同士で競わせることができる。

 Hachetteのデジタル担当シニアバイスプレジデントのMaja Thomas氏によれば、エージェンシーモデルへの移行は小売業者の多様化につながるという。Thomas氏は、3週間前に開催されたカンファレンス「On Copyright」のパネルディスカッションで、Hachetteによるエージェンシーモデルへの移行は、小売業者間の競争の促進や、より健全な市場の育成、より柔軟な価格設定への移行に役立つだろうと述べた。

 Thomas氏は聴衆に対して、エージェンシーモデルに移行しなければ、独立系の書店は競争が困難だろうと語っている。同氏はまた、エージェンシーモデルは、ハリウッドの映画会社が映画館のオーナーと結んでいる契約と一体どう違うのかと問いただした。

 「映画会社は結託して、封切り映画を映画館で見るように強制している、と言い表すこともできる」(Thomas氏)

 Thomas氏の指摘は良い点を突いている。Amazonや「iTunes」「Vudu」で販売やレンタルが行われている映画の価格は、どれもほとんど同じだ。筆者は今でも、その理由を見つけ出せていない。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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