「Windows 8 Consumer Preview」--良い点と悪い点 - (page 3)

Adrian Kingsley-Hughes (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子2012年03月13日 07時30分

悪い点

 とは言うものの、良い点ばかりというわけではない。そんなことは断じてない。

 Windows 8のConsumer Preview版に対して筆者が抱いている最大の不満は、Developer Preview版に対して抱いていたものとまったく同じである。すなわち、従来の入力機器(キーボードとマウス)を使っているシステム上でも、タッチ操作を前提としたユーザーインターフェースの使用をユーザーに強いている点だ。

 さらにこういった変更は、タッチ操作が可能な機器を使用していないユーザーにとって何のメリットもない(筆者は、Windows 8のリリースによるユーザー数の増加を考慮しなければ、タッチ操作のできない機器が90%以上を占めていると見積もっている)。つまり、これは変更のための変更であって、他の何ものでもないように思える。この点については後ほど詳述する。

 このタッチ操作については、いくらでも書くことがあるものの(別の記事で採り上げるかもしれない)、ここではスクロールという観点に的を絞ることにしたい。

 スクロール(巻物)というものは、大昔から(少なくともグラフィカルユーザーインターフェースの黎明期から)上から下に向かって(縦方向に)動いていくものと相場が決まっていた。「ページ」の一番上から始まり、その「ページ」に入りきらない内容を見るために下に向かってスクロールしていくというわけだ。これは基本的に、書籍等の「ページを読む」というパラダイムを焼き直したものでしかない。ほとんどの書籍では、左から右にページをめくるが、スクロールは上から下に向かって動かすものだ。

 Windows 8はこのパラダイムに変更を加え、左から右に向かって動いていくようになっている。このため、下に向かってどんどんスクロールしていくのではなく、右に向かって限りなくスクロールしていくのである。これによって、書籍を読んでいる時のような感覚を抱かせようというわけである。あるページを読み終えると、右のぺージへとフリックし、そのページを読み終えると、また次のページへとフリックしていく。まあ、確かに筋は通っている。

 しかしながら、Metroユーザーインターフェースでは「ページ単位」という概念がないらしく、ユーザーはスクロールの前にどこまで見ていたのかを覚えておく必要に迫られる。スタート画面の「すべてのアプリケーション」表示を見てもらうと、この問題を実感できるはずだ。

FigE

 ユーザーは上から下へと「読む」だけでなく、左から右へも読まなければならず、次にどこに視線を移動させるかも意識しておかなければならない。こういった問題は、アプリケーションの数が増加すればするほど大きくなっていくだろう。Appleが「iPad」で採用したような、アプリケーションを個別の「ページ」に分けて配置するという手法の方が理に適っており、目に対する負担もはるかに少ない。

 問題は他にもある。筆者のマウスにはスクロールホイールが付いているのだが、スクロールホイールというものは昔から、上下方向にスクロールさせるためのものとして機能してきている。筆者もその動作に慣れ親しんでいる。それが直感的であり、筆者はスクロールホイール付きのマウスを購入して以来ずっと、そのことに満足している。しかしここにきて、MicrosoftはWindows 8においてそれを変更し、スタート画面などでの上下スクロールを左右スクロールに変換しようとしている。

 ユーザーが自らに合った方式を愛用しているにもかかわらず、何のメリットもないように思える新たな方式を押しつけ、長年慣れ親しんだ方式を捨てさせるのはなぜだろうか?「従来型」の入力方式に「タッチ型」のオプションを追加し、ユーザーが気に入った方を選べるようにできないのだろうか?タイルを導入するのは構わない。ただ、既に手に馴染んだ効率的な方法を残しておいてほしいだけなのだ。

 Metroユーザーインターフェースの問題、特にタッチ操作という観点から見た問題は、親に向かってずっと手を振り続ける子どものように、片時も逃さず注意を引きつけておきたいという思惑が見え隠れする点だ。これは気に障るだけでなく、あっという間に辟易するようになるだろう。

 Microsoftが、Metroユーザーインターフェースにおいて採用しているタッチ操作中心の姿勢を最終リリースまでに改めるとともに、ユーザーからの懸念の声に耳を傾け、従来システムでも快適に動作するような方式の採用に踏み切ってくれることを願うばかりである。

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