タクシー配車のスマホアプリが全国対応へ--MSと日本交通が協業 - (page 2)

 タクシーは、大正元年(1912年)に誕生してから100周年を迎えることになる。

 1960年にはタクシー無線が導入されたほか、最近では、2005年にデジタル無線が導入。これらを利用して効率的にタクシーを配車する仕組みがあるものの、配車利用の比率は約2割に留まっている。残りの8割が流しで拾われる形態だ。

 「タクシー産業の活性化を考えた場合、8割が拾って利用するというのでは、次に利用してもらうのがいつになるのかがわからず、継続的に適切なサービスが提供できない。拾うではなく選ばれるタクシーを目指し、顧客満足度を追求していく必要がある。今回のサービスを、タクシー産業の活性化のひとつに位置づけたいと考えている」と川鍋氏は語る。

日本交通 代表取締役社長の川鍋一朗氏
日本交通 代表取締役社長の川鍋一朗氏

 また、「顧客もタクシーも動いているという究極のモバイル状況にあるのがこの産業の特徴。それに対応するにはスマートフォンが最適。今回のサービスを通じて、乗ったタクシーをランク付けし、自分の好きな運転手を指名して予約し、目的地についたらその場で支払いをせずに、登録したクレジットカードでまとめて支払うということができるようになる。タクシーを自家用車の代わり、運転者の代わりといった使い方が可能になるだろう。また、観光立国支援、少子高齢化、環境対策といったサービスと連携して、総合生活輸送産業へと発展させていきたい。スマートフォンはそのための武器になる」とする。

 一方、会見では今回のサービスに参加する全国のタクシー会社も出席。エスケータクシーグループ(事業協同組合)代表理事の山澤巌雄氏は、「札幌市内で6社のタクシー会社を営業しており、1日4000〜5000件の電話配車の実績がある。そのうち25%がIVRと呼ばれる自動配車システムによるものだが、このシステムでは、利用者が設定できる配車場所は一カ所のみ。スマートフォンでは配車場所の設定が無限となり、利便性が高まる」と期待を述べたほか、三和交通 代表取締役社長の吉川永一氏は、「当社では陣痛119番という妊婦向けの即時配車サービスなどを行っているが、今回のような新たなサービスを創出することで、新たな世界を作っていける」とコメント。荏原交通代表の磯珠代氏は「当社だけではエリアが限定され、台数も少なく、配車サービスには限界があったが、今回のサービスではエリア内で他社とネットワーク化できることから補完関係ができ、参加できるようになった」とした。

 また、名鉄タクシーホールディングス代表取締役社長の山田健夫氏は、「選ばれるタクシーになるにはどうしたらいいかを日々考えている。経済活動の支援を全国ネットでできることは喜ばしい。予約配車は3〜4%伸びており、今回のサービスを活用し、さらに発展させたい」とし、国際興業大阪 代表取締役社長の迫田謙典氏は、「全国タクシー配車の仲間入りをさせていただいたことは感謝している。必ず成功させたい」と意欲をみせた。

 また、福交タクシー無線グループ(福交運輸事業協同組合)理事長の中井眞紀氏は、「いままでのタクシー業界にはなかったサービスであり、話を聞いてすぐに飛びついた。当グループでは3万8000件の登録顧客がいるが、そのなかでも個人の方々がこの配車サービスに移行してもらえば、自宅だけでなく様々な場所からタクシーを呼んでもらい、配車数も増加するのではないかと期待している」と語った。

 全国タクシー配車サービスは、今後1年以内に19の政令指定都市にサービス対象地域を広げ、3年後には6万台のタクシーを対象にサービスを行うという。これは全国のタクシー台数で30%をカバーすることになる。

 提携したタクシー会社は、初期費用のほか、配車1台あたりの従量課金方式でシステムを利用できる。具体的な費用については公表しなかったが、自社でシステムを構築するよりは10分の1以下のコストで利用できるとした。

日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏
日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏

 日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏は、「スマートフォンを利用して配車サービスを全国規模で提供する今回のサービスは、デバイスからクラウドまでを包括した新たな時代のサービスといえるものだ。会社の壁を越えた業界としてのサービスを実現する上でも、クラウドは有効であることを示したものといえる。急速な勢いでスマートフォンが普及しており、若い人たちは体の一部のようにして利用している。利用者の接点となるスマートフォンをサービスに活用しない手はない。長い歴史がある産業ほど、新たなサービスが創出できないが、タクシー業界では常に新たなサービスを切り開いてきた日本交通が、最新鋭の技術を利用したサービスを開始した。これは、競争力を高めていくものになるだろう。これを皮切りに付加価値の高いサービスをさらに開発していきたい」などとした。

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