Googleはブラウザプロセスを別々のメモリコンパートメントに孤立させることで、ユーザーの目に見えない部分でも慣習からの脱却を図った。この方法ではメモリ消費量は多くなるが、セキュリティとパフォーマンスは向上する。また、開発の観点からもGoogleは速度の向上を目指している。新しい「Canary」バージョンはChromeの開発者向けリリースよりも頻繁に変更される。GoogleはChrome安定版を6週間ごとに更新していく予定だ。
最後に、Googleは同ブラウザを「Google Chrome OS」と呼ばれる本格的なOSに変えることで差別化を図るという野望を抱いていた。競合他社も、ブラウザはアプリケーションの実行基盤になるべきだということには同意しているが、Chrome OSのような大規模なものに賛成しているわけではない。Googleは2010年、Chrome OS(ハードウェアとの通信のために内部にはLinuxが隠されている)をネットブック向けにリリースする予定だが、最終的にはもっと幅広い分野での使用を想定している。
たとえChrome OSがなかったとしても、Chromeはウェブが将来のアプリケーション実行基盤であるというGoogleの哲学を具現化している。そのためにGoogleは、より高速なJavaScriptだけでなく、より強力になる可能性を秘めたほかのコンピューティングテクノロジもChromeに組み込んでいる。
そうしたテクノロジの1つめは「WebGL」だ。WebGLは3Dグラフィックスインターフェースで、ハードウェアアクセラレーションを利用したグラフィックス表示に関する「OpenGL」標準をベースにしている。2つめは「Native Client」である。GoogleはNative Clientによって、ダウンロードされたコードをPCやスマートフォンのプロセッサ上でネイティブに、そして高速に実行できるようになることを望んでいる。また、ネット経由でダウンロードされた任意のソフトウェア実行に伴うリスクを抑えられるように安全機構が組み込まれており、Googleは少なくとも一部の人々に対し、安全に使用できると納得させることに成功している。
Googleが2008年にブラウザを発表したときに当惑した人々にとって、この種の取り組みはGoogleがChromeから得る利点を最も如実に示しているかもしれない。開発作業の大部分を管理することによって、Googleは開発した新技術を、広く使われてはいるが最有力ではないブラウザにテストと宣伝の目的で組み込むことができる。これによりGoogleは、新たなウェブ標準を策定する上での新しい影響力も得られる。
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