「たいしたことない自分」だから、本を書いた--梅田望夫氏講演:後編 - (page 4)

永井美智子(編集部)2007年11月16日 18時43分

何かを捨てなければこの本を読んだことにならない

 「ウェブ時代をゆく」を読んでくださって、わざわざ忙しい中講演会に来てくださったのは、この本を読んで価値があったと思って下さったということでしょう。でも、皆さんが何かをやめないとこの本を読んだことにはなりません。大事なことを捨てないと、新しいことはできない。

 この本の感想を見ると、「わくわくした」とか「元気が出た」とか書いてあります。一服の清涼剤としてこの本を使うのも十分なんですが、それを超えて水を飲むような読書のための本として使ってもらうためには、何か絶対にやめないといけない。大事なことをやめないとこの本のような何かはできない。

 これから家に帰るまでに決めなきゃいけないわけじゃないけど、直感って大事だから、できれば決めていただきたい。それをやって初めて、この本は完結します。ちょうど時間になりましたので、ここで講演会を終わりにします。

(以下、質疑応答)

――梅田さんの死生観について聞かせてください。

 僕にそんなことを求めないでくださいよ(笑)。死についてなんて考えないなぁ。あまり考えないようにしている。明日死ぬかも、と思っても仕方ないですよね。僕はあまりまじめに死について考えてきていないですね。何とかこの一瞬一瞬を充実したものにしたい。 それをやっていけば、もし半年後に死ぬと言われてもそんなに悲しくないかもしれない、と思うくらい一所懸命生きてると思うときがある。もっとも、実際そう言われたら悲しいと思うけど。自分の周りとの付き合い方とか、できるだけ精一杯やってるから、仕方ないだろうと。思い残すことがないとは言わないけど。

――本の中で「流しそうめん」の例えがありました(編集部注:情報は無限に流れていて、若い人ほど欲しいものだけ取り、あとは捨てるという感覚を身に付けているという指摘)。僕はそうめんと水の区別もつかないような状況なのですが、何かアドバイスがあればお願いします。

 今は無限の情報と付き合っていかないといけない時代です。それが昔との一番の違いでしょう。

 ネットとまじめに付き合うと、自分の有限性を思い知らされるばかりです。全部の情報は読めないですし。

 この本で言いたかったのは、直感を信じるということ。年配の人は、ワーッと来ている情報が玉石混交だから、誰かがまとめたものを信じた。そこで新聞や雑誌の役割が生まれた。クオリティの高いメディアを見ていれば、無限に対して目をつぶってもいいという生き方だった。

 逃げ切り世代はそれでいいんです。僕より上の年齢――僕は1960年生まれの47歳ですが、仕事人生が残り15年以内なら何とかそれでもやっていける。でも、もっと若い人は無限の情報と付き合っていかないといけない。

 無限に対して目をつぶっている人なんか若い人の中にはいません。米国の研究で、選択肢がいっぱいあると結局ポピュラーなものを選ぶ人が全体の7割だという結果がありました。ここに生きていく上で重要なポイントがある。

 思考停止になって誰かに頼ろうとすることは、スティーブ・ジョブズの言葉を借りれば「他人の人生を生きる」ということ。ジョブズは格好いいこと言うよね。

 無限の情報と対峙するには、直感に頼るしかない。好きとか、そういう部分を信じる以外に方法がない。無限の情報から気に入った部分を信じて、そこと向き合う。自分を信じて直感を信じて、その直感の精度を高めるしかない。そこが個性になるし、磨かれれば「けものみち」で生きる上で有効な道具になる。

 3月17日の僕のブログ(※編集部注:「My Life Between Silicon Valley and Japan」の「直感を信じろ、自分を信じろ、好きを貫け、人を褒めろ、人の粗探ししてる暇があったら自分で何かやれ。」)は、酔っ払って書いたから言葉がすべっちゃって。でもあっというまにブックマークがたくさんついちゃったから直せなくなったんだけど、ブログが炎上しかけて。なんであんなもんで炎上しなきゃいけないんだと思うんだけど(笑)

 舌足らずな文章だったので補足すると、直感を信じる、ってふわふわしたことを言ってるわけじゃなくて、直感を信じないということは誰かのリコメンドを得るということで、それはみんな同じになっちゃうということ。コモディティ化する。だから、固有の自分が大したもんであろうがなかろうが、しょうがない、そこを信じてやっていくしかない。

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