最近、企業がブロガーにクチコミを依頼するサービスが多く登場しているが、いしたに氏は「口コミの喚起をブログに頼るのは間違い」と語る。「ブログは、ゼロを1にすることはおそらくできない。ただ、その製品の質が高かったり、他にも面白い要素があったり、すでに1あるものであれば、10とか100まで広げる力はある」という。何でもブログに頼めばいいというわけではない。企業側にも準備すべきことがある。
コグレ氏は企業から働きかけた事例として、日産スカイラインのプロモーションを挙げた。公式ブログを長く続けてきた担当者だからこそ、ブロガーの心理を理解していたという。その積み重ねがあった上で、ブロガーだけを集めた新車発表会を開催した。
「あれはスカイラインという良質のコンテンツがあったところに、ブロガーが集ってきてそれをさらに広げた。ヒットするだろうと狙ってやってたかどうかわからないですけど、ある程度、確信めいたものがあったんじゃないかなっていう気はしますね」(コグレ氏)
「ブロガーにはいろいろな人がいるので、何かが引っかかるようにと種まきをしてるんですよね。車好きはこれに引っかかるだろう、実は車に興味がない人が来るかもしれない、そしたらこれに引っかかるだろう、音響好きはこれに引っかかるかもしれない。いろいろな準備をしてるんです」といしたに氏は語る。また、成功したキャンペーンは、担当者もブロガーである場合が多いという。
逆にネット上でやってはいけないこともある。「嘘をつく。まあネットだけじゃないですけどね」とコグレ氏。だが、ネットでは悪評ほど速く広まる。いしたに氏は「ネットユーザーは基本的にみんな、うわさ好きで、おしゃべり好き」と指摘する。「嘘をついてる企業は、その格好のネタになるわけです。今のネットはネタとして温度が高ければ高いほど伝播スピードが早いので、例えばどこかの上場企業がやらせブログやってるよっていうと、それは格好のネタになってしまう」(いしたに氏)
ステルスマーケティングという言葉もある。企業がブロガーに報酬を渡した上で、それを公にせずエントリーを書いてもらうものだ。米国のクチコミマーケティング協会WOMMAはすでにいくつかのガイドラインを示し、ブログを書く際にはスポンサーの存在や自分の立ち位置を明確にすべきだとしている。
「ブログの影響力は徐々に高まりつつありますから。影響力のあるものをどうにか利用したい、使いたいというのは自然なこと。でも、なんとかして使ってやろうとか、なんとかして利用してやろうっていう気持ちだと失敗するので、ブロガーが会話してるところに企業も来て、一緒に話をするっていう姿勢が大事だと思いますね」(コグレ氏)
「やっぱり利用しようとした瞬間にばれる」といしたに氏はいう。「ONEDARIボーイズはひどいですからね。ものはもらう、好きなものしか書かない、好きなことしか書かない。でもそれを表に出すことで、こういう風に書いてくださいっていう依頼をお断りしている。そんなことをしても、いい結果にならないってことをみんな知っているんです」
いしたに氏はブログがメディア化していく段階をコップと水に例える。ある一点を境にして状況が変わってくるというのだ。「要はコップのサイズなんですよ。水が溢れるときがメディア化する瞬間なんです。コップに水を注いでいるうちは何も起きないんですけど、でもそれは溢れてみないとわからない。だからコップに半分しか注いでないのに、溢れないって言うのは間違っているとはっきり指摘できるわけです」。これは企業ブログも個人ブログも同じだという。
コグレ氏やいしたに氏のようにブログを通して何らかの経験を得るためには、ある程度の時間が必要だということだろう。いしたに氏のブログ「みたいもん!」は今年で4年目。コグレ氏の「ネタフル」も同様に4年を迎えた。「石の上にも3年」とコグレ氏はいう。「ブログの前も長いんです。97年くらいからメールマガジンやってるんで、ネットで何か書き始めてもう10年なんです。コンテンツ芸人としては下積みが長いんですよ、すごく(笑)」
いしたに氏は「結局、日々のいろいろなことの積み重ねでしかないんだなぁと思います。こんなつまらないオチで申し訳ないんですけど」と笑う。「でも本当に、積み重ねがあるとき形になっていく。継続することのメリットが非常に高いメディアです、ブログって」
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