注目を集めるオープンソースの仮想化ソフトウェア「KVM」、その成功の可能性は? - (page 3)

文:Stephen Shankland(CNET News.com) 翻訳校正:緒方亮、長谷睦2007年03月08日 20時51分

 12月にKVMパッチを初めてLinuxカーネルに受け入れたTorvalds氏によると、KVMにカーネルの他の部分への悪影響や複雑化を招く要素がなかったことが、採用につながったのだという。

 「KVMのマージが非常に簡単だった理由の1つは、カーネルから見て、かなりわかりやすいコードになっていたから」だとTorvalds氏は述べている。また、Xenと比べて、KVMのプログラマーは対応しやすかったという。「政治的なところがずっと少なく、方針全般をめぐる問題はほとんどなかったように思う」(Torvalds氏)

 さらに軽視できない点として、カーネルの構築にかかわる人たちの関心度が挙げられる。KVMがLinuxカーネルを中心に据えているのに対し、Xenは実際の演算を行う頭脳部分の多くを、カーネルとは別のハイパーバイザに移している。ゆえに、カーネルを担うエンジニアたちがKVMにより興味を持つとしても、意外ではない。

 人間的な要素は、技術的な詳細事項に比べるとあまり重要でないように思えるかもしれないが、オープンソースのプログラミングにおいては、両者は密接に関係していると、Red HatのStevens氏は言う。

 「わたしはその2つを分けて考えていない。技術を(中略)作るなら、その周囲にコミュニティーが形成されるような方法をとる必要がある。KVMは単純明快でわかりやすい技術的アプローチを採用したため」プログラミングへの興味が生まれたのだとStevens氏は説明する。こうして関心を持った1人に、Red Hatのトッププログラマー、Ingo Molnar氏がいる。同氏は現在、KVMのパフォーマンス改良に取り組んでいる。

 また、Linuxカーネルとの緊密な統合についても、その重要性を軽視してはならないと、Stevens氏は話す。

 「コミュニティーを運営するなら、こちらがより自然な方法だ。Xenについては、最新のカーネルとマージする負担が継続的に発生している。非常に手間がかかる。開発者は何度も何度も作業を繰り返すことになる--これには何週間もかかる。そのため、最新のカーネルに後れを取ってしまう。その点、KVMは素晴らしい。こうした苦労がまったくないからだ。Linuxとの整合性に問題がある部分はすべて、直ちに差し戻されるか修復される」(Stevens氏)

 Qumranet側としても、カーネルへの統合によって多くの作業が軽減されるメリットがある。「KVMはLinuxカーネルの一部なので、スケジューラやメモリマネージャといった、カーネルの既存コンポーネントを利用して、プログラミングに割く労力全般を節約している。よって、オープンソースコミュニティー内で同じ作業が重複して行われることも防げる」とSchnaider氏は話す。

 Xenのプログラマーも、当初はXenをLinuxのカーネルに統合する計画だった。しかし、「paravirt-ops」と呼ばれるハイパーバイザのインターフェースを追加することを優先したため、統合には二の足を踏んだ経緯がある。「paravirt-ops」を使った場合、VMwareなどが作成した他のハイパーバイザをLinuxで扱えるようになる。

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