グルーポン・ジャパンは事業規模の拡大に伴い、人材増強も急ピッチで行っている。全国区で増員中の営業スタッフと同じく、システムを支えるエンジニアの存在は極めて重要だ。米国発の人気クーポンなどで負荷急増が予想される場面でも、米国本社からは「システムは絶対落とすな」との指示が下る。
グルーポン・ジャパンが求めるIT技術者とは、どのような人なのだろうか。
システム開発・運用の責任者である開発本部マネージャーの信川亮太氏は真っ先に「ユーザーとしての経験の有無」を挙げた。
「基本的にはWebの開発経験があり、できれば自社のコンテンツをやってこられた方を求めています。いわゆる受託開発系の方ではなく、自社の企画の方と一緒に自社コンテンツや自社サービスをやられてきたエンジニアの方ですね。自分たちのサービスなので、自分で作ったものを自分で責任持てるかということが大切になるわけです。つまり、お客さまに対して自分たちのバリューを出せるかどうかを日々考えるような人、いわれたことだけをきっちり仕様に沿ってやるというだけの人ではなく、自分たちのサービスをより良くしていく人が必要になります」
システム開発の手法でいえば、従来のウォーターフォール型ではなく、アジャイル型で対応できるエンジニアということになる。それが、信川氏の「受託開発ではなく、自社コンテンツをやられてきた人」という言葉に現れている。
受託開発ではまずシステムの要件を固め、それに沿って設計、開発というプロセスが続いていくことになる。それに対し信川氏は「要件を固めるということは、できあがるものも見えているということになります。そういうことではなく、『こういうことをやってみたいね』、『それじゃ、作ろう』というようなスピード感が必要です」と指摘する。エンジニアにそのスピード感がなければ、フラッシュマーケティングという新しいビジネスモデルに対応できないであろうことは、容易に想像できる。
同社では、システム開発は細分化しているものの、基本的には短期間で完結するような形になっているようだ。
「システム開発は長くても1〜2週間くらいで、むしろ朝考えて夕方には完成するというようなスピード感をもってやっています」
それも、エンジニアが自分自身で発想して作り上げたものが多い。
「これまでもRSSやAPIなどエンジニアからの発想で実装されたものがいろいろあります。また外には見えないバックヤードでの機能でも、エンジニアが『これ必要だよね』と考えて実装したものが数多くあります。1週間でも1つや2つはこうしたアイデアを確実に実装しています」
アイデアが上がれば、早ければ1日でその機能が実装されているということも多いようだ。つまり、エンジニア自身がそのようなアイデアを発想し、自らそれを実装する。同社にあるのは従来のITエンジニアのような、エンドユーザにインタビューし、それに基づいて要件を定義し、それから開発に取りかかるという世界とはまったく異質な世界である。
そこで求めているのは、エンジニアとしてのスキルに加え、自ら発想し、それをすぐさま実装するというスピード感のようである。
クーポン共同購入サイトは、今や競合サイトが毎日のように増えているのが現実だ。莫大な初期投資が必要というわけでもなく、アイデアがあれば容易に参入できる。その中で、どのように優位性を保ち、生き残っていくのかは重要な課題だ。
その優位性を一言でいえば、「顧客満足度」だという。
誰にも、知っているけど行ったことがない、行きたいけど行ったことがないという店はたくさんある。そうした利用者に対してひとつのきっかけを作り、そこでのいい発見、いい体験でその店のファンになってもらうことを目的としているということだ。
そこで不可欠なのが「サービスのクオリティと利便性だ」だ。同社には、単なる“安売り”のクーポンを売ることは考えず、その地域を活性化させることが重要との認識がある。
eコマースのビジネスでありながら、インターネットだけで完結するのではなく、人が実際に動いて店舗でサービスを受け、体験して初めて完結する。人が動いてその地域が活性化することが重要と考えているのだ。そのため、クーポンを購入した後もいい体験ができるまでの利用者やお店をきちんとサポートすることが大切になるのだという。
今では、入社したばかりの営業マンやIT技術者が、グルーポン・ジャパンの現在の原動力や優位性を生み出している。同社がその優位性を守り続けるためには、こうした人材が何より重要になりそうだ。
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