教師データの作成が不要、短時間で分析ができる「行動分析AI」を開発

製造現場の人の作業分析にかかる時間を最大99%削減



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       図1 作業分析にかかる時間と作業分析の結果から得られる改善すべきポイントのイメージ
 三菱電機株式会社は、当社のAI技術「Maisart(R)(マイサート)(※1)」の一つとして、循環する身体動作の確率的生成モデル(※2)を適用することで教師データ(※3)の作成を不要とし、製造現場の人の作業分析を数分で実現する「行動分析AI」を開発しました。一人ひとりの作業を撮影した動画から、改善すべきポイントを短時間で見える化でき、製造現場の生産性向上に貢献します。
 近年、製造現場では自動化が進展する一方、高額なコストを理由に設備投資が進まず、人による作業工程がいまだに多く存在しています。人による作業工程では、作業時間や品質にばらつきが生まれやすく、製造工程のボトルネックとなる場合があります。ばらつきの改善には、作業を構成する「部品の取り出し」や「ネジ締め」などの要素作業にかかる時間を定量化する作業分析が重要ですが、人手による作業分析は、膨大な時間と手間がかかるという課題がありました。
 この課題への対策として、AIの活用など作業分析の自動化に向けた技術開発が進められていますが、従来の一般的な作業分析AIは、導入にあたり、作業者や作業の手順ごとに人手で作業分析した結果を教師データとして作成し、学習させる必要があり、導入に時間を要します。
 当社は今回、教師データの作成が不要で、作業者の身体動作を分析し、数分で作業分析を実現する「行動分析AI」を開発しました。本技術は、作業中は同じ身体動作が繰り返し行われることに着目し、循環する身体動作の確率的生成モデルを世界で初めて(※4)作業分析に適用しました。これにより、作業分析にかかる時間を最大99%削減(※5)できることを実証しました。本技術は、当社が2019年2月13日に広報発表した「人のわずかな動作の違いも見つける行動分析AIを開発」(※6)の技術を発展させたものです。
 本開発成果は、1月31日から東京ビッグサイトで開催される「IIFES 2024(Innovative Industry Fair for E x E Solutions 2024)」に出展し、デモンストレーションを実施します。

■開発の特長
1.世界初、循環する身体動作の確率的生成モデルを適用することで、教師データが不要な作業分析を実現し、分析時間と導入コストの削減に貢献
・作業中は同じ身体動作が繰り返し行われることに着目し、その循環する身体動作の確率的生成モデルを世界で初めて(※4)製造現場の作業分析に適用
・従来の一般的な作業分析AIで必要だった教師データの作成を不要とし、作業分析にかかる時間を最大99%削減できることを実証
・計算量を大幅に低減することでGPU(※7)等の高性能な計算機も不要とし、低コストで高精度な作業分析に貢献

2.熟練者と初心者の作業を短時間で比較分析し、作業者の習熟度に応じた改善指針の立案や熟練作業の伝承を支援
・従来、作業者ごとに作成が必要だった教師データを不要としたことで、対象となる作業者が複数人いる場合でも数分という短時間で作業分析が可能
・熟練者と初心者の作業を短時間で分析し、代表的な作業の動画を自動で切り出して比較することで、一目で違いを確認することが可能
・違いに基づく作業改善の指針の立案や熟練作業の伝承を支援

3.本技術による作業分析の結果を用いて異常作業検知AI向けの教師データを短時間で作成し、品質不良の防止に貢献
・本技術により教師データ無しで作業分析した結果だけを用いて、一般的な作業分析AIなどで利用できる教師データを短時間で作成することが可能
・標準と異なる作業や、実施すべき作業を行わない作業抜けを検知するAIのための教師データとして利用することで、短時間で異常を検知することが可能となり、品質不良の防止に貢献

■今後の予定・将来展望
 今後、社内外の製造現場においてさらなる検証を進め、2025年度以降の製品化を目指します。

■特長の詳細
1.世界初、循環する身体動作の確率的生成モデルを適用することで、教師データが不要な作業分析を実現し、分析時間と導入コストの削減に貢献
 確率的生成モデルとは、データを確率変数として扱い、観測データの生成過程をモデル化したAIの一種です。今回、それぞれの要素作業に対応する身体動作が手順に従って繰り返し生成され、波形データとして観測される過程をモデル化した確率的生成モデルを、世界で初めて作業分析に適用しました。
 本技術を用いた作業分析では、まず、一連の作業を撮影した動画から骨格を検知し、作業者の身体動作を波形データとして取得します。次に、取得した身体動作の波形データを、循環する身体動作の確率的生成モデルを適用した行動分析AIで分析します。これにより、AIに対して、1サイクルの作業にかかるおよその時間を入力するだけで、作業中の身体動作から「部品の取り出し」や「ネジ締め」などに相当する要素作業を自動で見つけ出し、作業分析の結果を得ることができます。同じ要素作業同士を比較して、他と時間の長さや波形が異なる標準外作業を検知することも可能です。
 さらに、本技術では作業分析の結果を動画データと併せて表示できます。これにより、ユーザーはAIが見つけた要素作業を動画から簡単に確認し、それぞれの要素作業に「部品の取り出し」や「ネジ締め」といった名前を短時間で登録できます。
 以上のように、本技術では従来の一般的な作業分析AIで必要であった教師データの作成を不要とすることで、作業分析にかかる時間を最大99%削減しました。また、計算量を大幅に低減したことで、GPU等の高性能な計算機が不要となります。検査精度は、人手による作業分析の結果と比較して、対象が作業初心者などの非熟練者による作業の場合80%以上、熟練者による作業の場合90%以上(※8)という高精度な作業分析が可能です。

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                  図2 行動分析AIによる要素作業分析結果
2.熟練者と初心者の作業を短時間で比較分析し、作業者の習熟度に応じた作業指針の立案や熟練作業の伝承を支援
 作業分析の目的の一つに初心者の習熟支援があります。熟練者と初心者では、同じ要素作業でもやり方(身体動作)が大きく異なります。このため、従来の一般的な作業分析AIでは、一人ひとりの作業者に対して教師データを作成する必要があり、膨大な時間と手間がかかるといった課題がありました。
 この課題に対し、本技術は教師データの作成を不要としたことで、対象となる作業者が複数人いる場合でも、それぞれの作業者の作業分析を短時間で完了できます。習熟していない初心者の作業を熟練者の作業と比較することで、熟練者との違いを明らかにし、改善の指針を立てることができます。これにより、熟練者と初心者の作業を比較した習熟支援を短時間で実現できます。
 また、本技術では複数回行われた要素作業の中から、最も平均的に行われていた代表作業を自動で選択できます。熟練者と初心者の代表作業を動画で切り出せば、一目で違いを確認できるため、熟練作業の伝承の加速にも貢献します。
 なお、これらの機能は、シスメックス株式会社、住友ゴム工業株式会社で2024年度まで実証予定です。
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                   図3 熟練者と初心者の作業の比較
3.本技術による作業分析の結果を用いて異常作業検知AI向けの教師データを短時間で作成し、品質不良の防止に貢献
 人が作業する工程では、標準と異なる作業や、標準では実施されるべき要素作業が抜けるといった異常作業が生じることがあります。異常作業は、品質不良につながるため対策を講じることが重要であり、リアルタイムで異常作業を検知できるAIの技術開発が進められています。
 一般的な異常作業検知AIは、教師データから標準作業を学習し、現在行われている作業と比較することで作業の異常を検知します。一方、標準作業は製造する製品の型番ごとに異なるだけでなく、型番が同じでも製造現場の判断で標準作業が変更されることもあるため、型番ごとに、また標準作業が変更されるたびに人手で教師データを作成し直す必要があり、膨大な時間と手間がかかるという課題がありました。
 この課題に対して、本技術を適用することで、事前の教師データ無しで作業分析した結果だけを用いて、異常作業検知AIで利用可能な教師データを作成できます。対象の型番が複数ある場合や標準作業が変更された場合でも、少ない時間と手間で異常作業のリアルタイム検知を実現することが可能となり、品質不良の防止に貢献できます。
 これらの機能は、当社の製造現場で2024年度まで実証予定です。
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              図4 一般的な異常作業検知AIの教師データ作成への適用
■商標関連
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※1 Mitsubishi Electric’s AI creates the State-of-the-ART in Technologyの略。
全ての機器をより賢くすることを目指した当社のAI技術ブランド     


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※2 データを確率変数として扱い、観測データの生成過程をモデル化したAIの一種
※3 AIの機械学習に用いる、例題と正解がセットになったデータ
※4 2024年1月25日現在。当社調べ
※5 お客様との実証実験における結果。人手による作業分析、また一般的な作業分析AIにおける教師データ作成にかかる時間との比較
※6 2019年2月13日付広報発表 リンク
※7 GPU:Graphics Processing Unit
※8 作業初心者などの非熟練者は、同じ作業を行っていても身体動作のばらつきが発生しやすいため、熟練者よりも作業分析の精度が低くなる


<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 先端技術総合研究所
〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町八丁目1番1号
FAX:06-6497-7289
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プレスリリース提供:PR TIMES リンク

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