年頭リリース: 2024年の中堅・中小IT活用で予想される3つのリスクとその回避策

ノークリサーチは2024年の年頭所感として、中堅・中小企業のIT活用で今後予想される3つのリスクとその回避策に関する考察を発表した。

<2024年は「想定されるリスクを回避し、IT活用の更なる活性化へと転換できるか?」が焦点>
■今後留意すべきリスクは「DXに伴う企業の分断」「システムのサイロ化」「Invisible API Hell」
■電話によるコミュニケーションに依存するDX後発ユーザにはWebサイト経由の訴求が有効
■ノーコード/ローコード開発ツールを用いた内製化ではガイドラインの充実が成否を分ける
■API連携の利点を享受するには、SREを拡張した業務シナリオの自動実行も検討価値あり

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2024年1月9日

年頭リリース: 2024年の中堅・中小IT活用で予想される3つのリスクとその回避策

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は2024年の年頭所感として、中堅・中小企業のIT活用で今後予想される3つのリスクとその回避策に関する考察を発表した。

<2024年は「想定されるリスクを回避し、IT活用の更なる活性化へと転換できるか?」が焦点>
■今後留意すべきリスクは「DXに伴う企業の分断」「システムのサイロ化」「Invisible API Hell」
■電話によるコミュニケーションに依存するDX後発ユーザにはWebサイト経由の訴求が有効
■ノーコード/ローコード開発ツールを用いた内製化ではガイドラインの充実が成否を分ける
■API連携の利点を享受するには、SREを拡張した業務シナリオの自動実行も検討価値あり

本リリースはノークリサーチが発刊する最新の調査レポートのデータを元に、2024年の中堅・中小企業におけるIT活用の展望を述べたものである。本リリースで引用されている各種の調査レポートに関する詳細は5ページに記載されている。


■今後留意すべきリスクは「DXに伴う企業の分断」「システムのサイロ化」「Invisible API Hell」
例年、ノークリサーチでは年初のリリースにおいて中堅・中小企業のIT活用に関する展望を述べた「年頭所感」を発表している。
2023年は業務システムにおけるオンプレミスとクラウドの併用が進むと共に、生成AIやノーコード/ローコード開発ツールなどの新たな技術が注目を集める一年となった。 こうした状況を受けて、2024年には中堅・中小企業の業務システムも更に多様化が進むと予想される。ただし、それに伴うリスクにも目を向けておくことが大切だ。2024年に顕在化する可能性があると考えられる中堅・中小企業のIT活用におけるリスクとしては、以下の3つが挙げられる。
・DXに伴う企業の分断
DXは中堅・中小企業にも徐々に浸透しつつあるが、依然として導入に積極的ではないユーザ企業も少なからず存在する。そうしたユーザ企業はIT企業にとっても「手間がかかる一方で収益が見込みづらい顧客」となりやすいため、このままではDX導入の有無によって企業層が分断されてしまう可能性もある。だが、実業務におけるサプライチェーンでは両者が連携しているため、こうした分断はIT活用全体におけるセキュリティ面の脅威等にもつながってくる。
・システムのサイロ化
日本の中堅・中小企業におけるIT活用レベルは欧米と比べて低いと評されることが少なくない。その要因の一つとして挙げられているのが、IT活用における内製率の低さだ。ノーコード/ローコード開発ツールはこうした状況を打開する有効な手段としても期待されている。ただし、その一方で以前のEUC(エンドユーザコンピューティング)で起きたシステムのサイロ化が再び発生する可能性もある。
・Invisible API Hell
業務システム形態がオンプレミス/クラウドの双方へと拡大しつつある昨今では、APIによる連携が重要な役割を果たすことになる。 だが、その一方で旧来のWindows環境で見られた「DLL Hell」に類似した状況が新たに形を変えて発生する懸念も生じている。そこにはAPI仕様だけでは把握できない(Invisibleな)業務上の留意点が関係している。
本リリースではノークリサーチが発刊する中堅・中小企業(年商500億円未満の国内民間企業)を対象とした調査レポートを元に 上記3つのリスクとその回避策について考察した結果をまとめている。次頁以降で3つのリスクについて順に述べていく。


■電話によるコミュニケーションに依存するDX後発ユーザにはWebサイト経由の訴求が有効
まず、一つ目は「DXに伴う企業の分断」をいかに回避すべきか?という点だ。以下のグラフはDX/ITソリューションの導入有無によって、IT製品/サービス導入における情報収集の手段や情報源がどう変わってくるか?を集計した結果である。 「導入あり」(青帯)と比較すると、「導入なし」(橙帯)では「IT企業の営業担当と電話で相談する」の値が他の手段と比べて高くなっている。つまり、DX/ITソリューションを導入していないユーザ企業はIT企業とのコミュニケーション手段において電話への依存度が高い状態と言える。一方、新興のクラウドサービス事業者などでは電話窓口を設けず、Webフォーム/ メール/ チャットによる受付に限定するケースも増えてきている。したがって、このままではDX/ITソリューションを導入していないユーザ企業が取り残されてしまい、導入済みのユーザ企業との差が更に拡大する可能性がある。とは言え、この結果は「電話への依存度が高いユーザ企業はIT活用への取り組み意向が低い」ことも示唆している。 そのため、IT企業としては「収益を上げにくい顧客に対して、手間のかかる電話でのコミュニケーションを続ける」という選択をしづらい面もある。
だが、DX/ITソリューションを導入していないユーザ企業への訴求策は他にもある。以下のグラフはDX/ITソリューションの導入予定があるかどうか?によって、インターネット上での情報収集における手段がどのように変わってくるか?を集計した結果だ。 「既知のIT企業のWebサイトを閲覧する」や「製品/サービスの比較サイトを閲覧する」といった項目の値はDX/ITソリューションの導入予定がある場合(青帯)とない場合(橙帯)でほとんど差がないことがわかる。情報過多となりやすい現在はSNSや検索で表示される端的なキーワードで認知を高めることに終始してしまいがちだが、DX/ITソリューション導入に踏み込めていないユーザ企業に対しては、充実した内容のコンテンツを根気強く提示していくことが有効と考えられる。その際は中堅・中小企業を取り巻くビジネス環境の変化も考慮したメッセージを発信することが大切だ。上記のデータ2点の収録元となる調査レポートでは、そうした観点からの分析と提言を述べている。

■ノーコード/ローコード開発ツールを用いた内製化ではガイドラインの充実が成否を分ける
二つ目はRPAやノーコード/ローコード開発のツール活用(以下のグラフ中では「RPA/NLDツール」と略記)に伴う「システムのサイロ化」をどのように防ぐか?という視点だ。以下のグラフはノーコード/ローコード開発ツールの活用状況によって、ツールの活用方針がどのように変わってくるか?を集計した結果である。
ノーコード/ローコード開発ツールを導入済みであり、今後も活用範囲を拡大しようと考えるユーザ企業(青帯)では、「IT企業に頼らず、自力でツールを活用する」という方針を掲げる割合が高いことが確認できる。こうしたユーザ企業はITスキルも比較的高く、他のユーザ企業向けの情報発信にも意欲的であるケースが少なくない。こうして国内ユーザ企業のIT活用レベルが高くなっていくこと自体は好ましい状況と言える。
一方で留意すべき点もある。以下のグラフはノーコード/ローコード開発ツールの導入状況によってツール活用における課題がどのように異なるか?を集計した結果の一部である。
ノーコード/ローコード開発ツールを実際に導入する前(導入予定:橙帯)と比べると、実際に導入した後(導入済み:青帯)では、「コーディングが必要となる場面が意外と多い」や「実現できる画面仕様や処理内容が限られる」という課題の回答割合が高くなっている。そのため、ユーザ企業が自力による内製を無理に進めようとすると、不完全なシステム化が業務の所々で発生し、システムのサイロ化が起きる可能性がある。これを防止するには内製が適する場合/適さない場合を切り分ける何らかの指標を提示することが有効だ。例えば、本来Webベースの簡易データベースを構築すべき用途でMicrosoft Excelが用いられている場合は内製による代替を行いやすい。一方、高度なシステム連携が必要な業務システムではIT企業による設計/指南を仰いだ方が堅実だ。こうした指標を整理したガイドラインも既に幾つか公開されている。今後、ユーザ企業とIT企業が知見を持ち寄り、ガイドラインの更なる充実を図っていけば、以前のEUC(エンドユーザコンピューティング)の弊害を繰り返すことなくツール活用が活性化していくと期待される。

■API連携の利点を享受するには、SREを拡張した業務シナリオの自動実行も検討価値あり
三つ目は旧来のWindows環境における「DLL Hell」のような状況が新たな形で生じる「Invisible API Hell」とも表現すべき状態に関するリスクだ。以下のグラフはユーザ企業に業務アプリケーションの導入/更新における方針を尋ねた結果の一部である。
昨今ではAIチャットを用いた業務アプリの操作改善に注目が集まっている。だが、「必要な情報を対話的に検索できるか?を重視する」の回答割合が約1割に留まる一方、「自動化によって業務効率を改善できるか?を重視する」は3割弱に達しており、ユーザ企業の関心は依然として業務の自動化に集まっている。そのためにはRPAのみならず、適切なシステム連携を進めることも大切だ。実際、「APIを用いた他社との連携/協業が活発か?を重視する」の値も2割弱に達しており、ユーザ企業もAPI連携の重要性を認識していることが確認できる。こうした連携の対象と範囲はオンプレミス/クラウドの双方に拡大しつつある。
例えば、オンプレミスの業務パッケージとPaaS上に構築した独自システムを連携させる際、『業務パッケージ ⇒ CSVデータへ出力 ⇒ オンラインストレージサービスと同期 ⇒ 連携用のiPaaSが仲介 ⇒ PaaS上の独自システム』 といった多段階の連携が必要となるケースもある。そうなると、様々なAPIを把握/管理する必要があり、旧来のWindows環境で見られた「DLL Hell」のような状況が発生する可能性もある。ただし、昨今はAPI開発/利用を支援するツール/サービス(例. Postman、Apidogなど)も充実しており、「DLL Hell」のような状況がAPI連携で起きる可能性は従来よりも低い。実際、ERP活用における課題を尋ねた以下のグラフにおいても、「API経由のデータ連携が十分に行えない」は5.2%に留まっていることが確認できる。
だが、「ワークフローとERPの機能が連携していない」や「Web会議の中でデータを参照/共有できない」といった実際の業務場面に即したシステム連携の課題は2~3割程度に達している点に注意が必要だ。例えば、API経由でPaaSにデータインポートを行う際、そのデータがPaaS上で検索可能となるまでに時間を要するケースもある。この場合、API連携には何ら問題なくても、「日時のデータインポート終了後、すぐにデータを検索したい」という業務要件への対応は難しくなる。連携対象が増えれば、API仕様だけでは確認できない業務要件との不整合が発生する可能性も高まる。これが冒頭に記載した「Invisible API Hell」の状態だ。
これを回避する手段としては、SRE(Site Reliability Engineering)の発想を業務フローまで拡張する取り組みが考えられる。SREではインフラ構成作業を自動化し、システム変更によって発生し得る不具合を的確/迅速に発見できるようにする。同じ考え方でAPI連携に伴って想定される業務シナリオをAPI仕様と共に提供し、API連携の開発作業時にそのシナリオをRPA等で自動実行する。これによって、前述のような不整合を未然に発見/防止しやすくなるはずだ。API連携のメリットを十分に享受するためにはこうした「API仕様だけでは把握できない業務要件との不整合」を事前に把握できる仕組みの検討も重要と考えられる。


本リリースで引用されている調査レポート 各冊180,000円(税別)

『2023年版 中堅・中小企業のDXおよびITソリューション選定の実態レポート』
50項目に渡る具体的なDX/ITソリューションの導入状況、ユーザ企業が抱える課題とニーズ、選ぶべき訴求手段を網羅した一冊
【レポートの概要と案内】 リンク
【リリース(ダイジェスト)】 中堅・中小市場で選ぶべき顧客接点とは?(Webサイト/SNS/メール/電話/Web会議など)
リンク
中堅・中小企業のIT支出を左右する経常利益の増減見通しとその要因分析
リンク
12分野、50項目に渡るDX/ITソリューションの活用実態における変化
リンク
中堅・中小市場で留意すべきユーザ企業とIT企業の「すれ違い」ポイント
リンク
年商別/業種別のIT支出増減予測およびIT支出を増やす商材と減らす商材
リンク

『2023年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート』
今後はレイトマジョリティへの訴求が焦点。課題/ニーズの変化を捉え、市場拡大を阻む障壁を打開するためには何をすべきか?
【レポートの概要とリリース(ダイジェスト)】
中堅・中小向けノーコード/ローコード開発ツール提案の障壁とその打開方法
リンク
中堅・中小市場のレイトマジョリティに向けたRPA導入提案における留意点
リンク

『2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート』
10分野の導入済み/導入予定の社数シェアとユーザ評価に加えて、法制度対応やデータ分析/生成AIの動向を網羅
【レポートの概要と案内】 リンク
【リリース(ダイジェスト)】
データ分析や生成AI リンク
インボイス/電帳法 リンク
ERP リンク
生産管理 リンク
会計管理 リンク
販売・仕入・在庫管理 リンク
給与・人事・勤怠・就業管理 リンク
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