再治療時に専門医の受診を希望する一般生活者の声が多数、 一方で専門医制度に課題を感じる歯科医師の声も
2023/9/19
一般社団法人 日本歯内療法学会 リンク
一般社団法人 日本歯内療法学会(所在地:東京都豊島区、理事長:佐久間克哉)は、歯の神経の治療(以下、根管治療)後の歯は「何年もつか」についてアンケート調査を実施いたしました。根管治療を経験したことのある20~60代800名と日本歯内療法学会の会員歯科医師244名、会員外の一般歯科医師39名にアンケートに御回答いただきました。
今回の調査結果では、根管治療後の歯は「10~19年」もつと回答したと回答した会員歯科医師は48.8%ですが、治療を受けた生活者の53.4%が再治療に至り、そのうち70.0%が9年以内の再治療でした。また、治療が必要な歯の早期発見には「レントゲンによる定期検診」が有効と回答した会員歯科医師が64.8%でしたが、根管治療後に定期検診を受診していなかった方の割合は52.4%と課題が見られました。
根管治療後の歯は何年もつか、一般生活者は5~9年、歯科医師10~19年程度が最多
・根管治療後の歯が5~9年程度もつと回答した方が30.4%と最多、1~4年の短期間と回答した方は25.8%
・ 歯科医師は会員、会員外共に10~19年程度が最多となり、一般生活者よりも長くもつと回答
・「一生もつ」と回答した会員歯科医師は会員外の一般歯科医師よりも比較的多い
根管治療の再治療は半数以上の53.4%が経験、70.0%が9年以内に再治療
・治療後、再治療となった期間は10年以上と回答した方が30.0%
・ 一方、1年以内に再治療となった方は22.2%、9年以内の合計は70.0%
・歯科医師が回答した再治療になりやすい期間で9年以内の合計は会員歯科医師71.3%、一般歯科医師76.9%
治療後に定期検診を受けていない方の割合は52.4%と半数以上
・一方、会員歯科医師64.8%、会員外歯科医師46.2%が再治療の必要な歯を早期発見するために 「レントゲンによる定期検査」が有効と回答
・定期検診の非受診者が受診したいと思える動機は、「口臭予防」34.4%、「美しい歯の見た目を維持」15.5%と、生活者が日常的に気にしている項目が多数。「歯科検診の義務化」も28.9%と一定の有効性が見られた
根管治療についての国内での評価が低いといった歯科医師の声も
・根管治療に対する保険点数の低さや2008年に再診料の点数に包括されたラバーダムの必要性に言及する声が多数。
・根管治療時に推奨されている専門的な機器や材料の導入が現行の保険診療内では難しいとの声があった
・医療制度や人材不足など、専門医制度に課題があるという声も
・根管治療の再治療は専門医に診てもらいたいと回答した生活者は72.4%と期待が高い
「治療後の歯は何年もつか」意識調査
■歯科医師は生活者よりも根管治療後の歯は長くもつと考えている
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■半数以上の53.4%が再治療を経験、70.0%が9年以内に再治療
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根管治療の保険点数の低さにより、有効な治療法が困難と危惧する歯科医師が多数
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再治療の必要な歯を早期発見するために有効な方法「レントゲンによる定期検査」。しかし、一般生活者の半数以上が治療後の定期検診を未受診。
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【調査概要】
調査主体 : 一般社団法人 日本歯内療法学会
調査対象 : 根管治療(歯の神経の治療)経験者20~60代800名
(20代、30代、40代、50代、60代を男女に分け、それぞれ80名を調査
「医薬品、健康食品、薬品、化学、石油化学」「市場調査」「医療、福祉」
「出版、印刷」「メディア・マスコミ・広告業」にお勤めの方は除く)
歯内療法学会会員歯科医師 244名
歯内療法学会会員外歯科医師 39名
調査方法 : WEBアンケート
調査時期 : 2023年8月3日(木) ~9月4日(月)
歯内療法とは
■多くの人が治療を受けたことがある「歯内療法」
「歯内療法」とは、自分の歯をできるだけ抜かずに治療することを目的とした治療の総称で、
「歯の根の治療」「神経を抜く」と言われる治療も歯内療法の範囲です。特に歯の根の深くに
アプローチする治療を「根管治療」と言います。
「歯内療法」は多くの方が受けたことのある基本的かつ身近な治療法ですが、根管の径は1ミリメートル以下の細い管で、形態は様々で非常に複雑なため、
歯内療法には高度な技術が要求されます。
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■「歯内療法」は滅菌消毒が生命線、様々な器具、器材で対応
虫歯は細菌の感染が原因で発生します。歯の内部を治療する歯内療法では治療時における滅菌消毒が生命線と言っても過言ではありません。日本歯内療法学会が推奨する標準的かつ適切な治療(無菌的処置)を行えば、感染リスクを極めて小さくすることができます。無菌的処置は、①術者の手指消毒、②手術野(歯の周囲)の消毒、③器具材料の滅菌・消毒を指し、この3点を完全に施すことが「歯内療法」において重要です。無菌的処置を徹底するために、以下の器具器材の使用が必要です。しかし、各歯科医院では歯の治療以外にこうした環境維持が重要となっておりますが、ラバーダムは2008年診療報酬改定にて、保険点数が初、再診料に包括された関係で、保険外で提供する歯科医院も増えています。
<ラバーダム防湿>
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ラバーダム防湿は治療対象の歯のみを口腔内から隔離、また、
手術野を消毒することで、だ液の侵入を防ぐことができます。
無菌に近い状態で歯科治療を行う有益な方法です。
< 口腔外バキューム >
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切削時の飛沫を吸引し、口腔内のだ液や
血液を含んだ飛沫が室内に浮遊するのを防ぎます。診療室内の空気汚染防止に有効。
< タービン >
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歯を切削する道具で、先端にダイヤモンドが
付いたポイントや刃のついたカーバイト製バーを
差し込み、圧縮エアーで駆動。患者さんごとに滅菌しパックに入れて保管します。
< 滅菌装置(左)/小型滅菌装置(右)>
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歯科医療機器の滅菌を行う装置。
小型のものは、タービンなど頻繁に滅菌するための装置。
■アメリカでは歯内療法が専門領域として確立
アメリカ歯内療法学会(AAE)の「ガイドライン2017年版」によると、「過去 20 年間にわたり、技術、材料、歯内治療手順が大幅に進歩してきた」としてミリ単位の根管治療で使用する歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)、汚染された根管をきれいにするNi-Ti ロータリーファイル、振動を加えながら細かい汚れを除去する超音波装置など新しい治療法が定着しつつあります。一方で、複雑な解剖学的形態を持つ歯の治療を行う歯内療法の専門医と、一般歯科医によって提供される治療では質の格差を生んでおり、専門性を持つ歯科医師の役割についても議論されています。日本国内においてはこうした最新治療は保険適用外となっており、専門医の位置づけに関する議論はほとんど行われておりません。
また、歯内療法が専門領域として確立されているアメリカと比較すると、日本の歯内療法の治療費は低く定められています。
この傾向はアジア諸国との比較においても同じ傾向にあります。海外の歯科治療は自費診療や民間の保険会社から支給される治療費で対応しています。一方、日本は多くの場合公的な医療保険制度の診療報酬で対応している点が海外と大きく異なります。歯内療法を専門領域の治療として認識している国と、そうでない日本において治療費に差が出ている状況です。
日本歯内療法学会からのメッセージ
今回のアンケートでは、根管治療後の歯は「10~19年」もつと回答した歯科医師は48.8%ですが、実際治療を受けた一般生活者の53.4%が再治療に至り、そのうち70.0%が9年以内の再治療という回答結果でした。再治療の原因としては、根管の治療が不完全であったり、新たな感染や損傷が起こった場合に必要となります。しかし、日本歯内療法学会会員の歯科医師たちは、現在の治療技術を持ってすれば、成功率の高い治療をご提供いたします。根管治療の考え方からすれば、「歯を抜く」ということは、非常に稀なことです、結果として「歯を残す」ということが、いかに大切であるか、そして、健康であることの大切さを一本の歯が教えてくれると思います。
また当学会はさらなる研鑽を積み、症例審査、筆記試験、並びに口頭試問を通過した会員に「専門医」の資格を与え、国民が「専門医」を受診し易いように学会のホームページにその名簿を公開しております。
日本歯内療法学会HP(リンク)
日本歯内療法学会 概要
■名 称 : 一般社団法人日本歯内療法学会(Japan Endodontic Association)
■理事長 : 佐久間克哉
■所在地 : 〒170-0003 東京都豊島区駒込1-43-9 駒込TSビル
【設立経緯】
1960~70年代は世界的に歯科医学の研究教育ともに画期的に飛躍をとげた時代と思われる。日本の歯科大学においても教育内容の充実に目覚ましいものがあった。しかしながら、開業医の臨床の実態はかなりかけ離れているのが実情であった。
当時日系二世の歯科医W.T.Wakaiが歯内療法専門医としてハワイにおいて開業していた。彼はのちにアメリカ歯科医師会の副会長にノミネートされた指導的人物であった。彼は母国日本の実態を理解していたので、日本も世界の水準に遅れないように歯内療法学会を設立しなければならないと、識者に呼び掛けていた。この時期に大谷歯内療法研究会の存在が彼の目にとまった。この研究会が学会設立の中枢になりうるものと考え強くこれを要請した。かくして日本国内外にも学会設立の気運が高まり、学会設立の呼び掛けに応じた臨床医グループがこれに加わり、多数の大学の歯科保存学の関係者の賛同を得て1980年(昭和55年)1月に日本歯内療法協会が設立され発足した。(学会名称は昭和55年1月26日より平成5年6月12日までは日本歯内療法協会、平成 5年6月12日より平成14年7月20日までは日本臨床歯内療法学会、以後日本歯内療法学会と改称した)
現在では、大学の先生方の参加が増え開業医主体であった会も研究者の発言、指導が取り入れられ、臨学一体となった当初の理念に近づいている。特に学術大会、セミナー、学会誌等は大学の教室単位の協力を得て充実して行われている。
【学会設立の趣旨】
歯内療法の基礎と臨床を研究し、正しい歯内療法を実践することにより国民の福祉と健康に貢献する。
【学会設立以降の主な活動】
1.会員制度の確立(一般会員、準会員)
2.年一回の総会ならびに学術大会開催
3.平成6年以降、専門医セミナー秋期1回開催
4.学会認定専門医、指導医制度の制定
5.協力団体設立支援
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