自動化(RPA)やノーコード/ローコード開発ツールに関する定説とその検証

ノークリサーチは中堅・中小市場における自動化(RPA)やノーコード/ローコード開発ツールの訴求に際して、定説とされているポイントを様々な調査データを元に検証し、その結果を発表した。

<IT企業が考える「定説」とユーザ企業における実態との違いを把握しておくことが大切>
■RPAやノーコード/ローコード開発ツールで多く見られる「定説」については慎重であるべき
■定説1の検証:RPAは「人材不足を補う」よりも、「ヒトによるミスを減らす」という訴求が堅実
■定説2の検証:内製化を焦らずに、アジャイル開発や伴走型SI/サービスで協調体制を築く
■定説3の検証:クラウド移行とは別軸で捉えるべき、システム連携手段としての訴求も有効

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2023年4月17日

自動化(RPA)やノーコード/ローコード開発ツールに関する定説とその検証

調査設計/分析/執筆:岩上由高

ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は中堅・中小市場における自動化(RPA)やノーコード/ローコード開発ツールの訴求に際して、定説とされているポイントを様々な調査データを元に検証し、その結果を発表した。


<IT企業が考える「定説」とユーザ企業における実態との違いを把握しておくことが大切>
■RPAやノーコード/ローコード開発ツールで多く見られる「定説」については慎重であるべき
■定説1の検証:RPAは「人材不足を補う」よりも、「ヒトによるミスを減らす」という訴求が堅実
■定説2の検証:内製化を焦らずに、アジャイル開発や伴走型SI/サービスで協調体制を築く
■定説3の検証:クラウド移行とは別軸で捉えるべき、システム連携手段としての訴求も有効


対象企業: 年商500億円未満の中堅・中小企業
対象職責: 企業の経営もしくはITの導入/選定/運用作業を担う職責
※本リリースの元となる各種調査レポートの詳細については5~6ページを参照


■RPAやノーコード/ローコード開発ツールで多く見られる「定説」については慎重であるべき
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、RPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの導入状況を尋ねた結果である。(次頁以降のグラフについても、対象となるのは年商500億円未満の全国/全業種に渡る中堅・中小企業である) RPAによる自動化やノーコード/ローコード開発ツールは、従来の業務システムでは対応が難しかった手作業による業務の効率化やユーザ企業毎の個別要件への対応を実現する手段として、中堅・中小市場においても今後重要な役割を担うと予想される。中堅・中小市場におけるRPAやノーコード/ローコード開発ツールの動向に関しては、以下のようなポイントが定説として語られることが少なくない。 定説1: RPAによる自動化は人材不足を補う手段として提案するのが最も効果的である
定説2: ノーコード/ローコード開発ツールによってユーザ企業における内製が増加する
定説3: RPAやノーコード/ローコード開発ツールはクラウド移行を加速させる役割を担う
上記のいずれも実際に該当する事例は少なからず存在しており、中長期的にはこれらの定説で述べられている状況が一般的となる可能性は十分考えられる。だが、現段階では上記の定説を第一義として中堅・中小企業向けにRPAやノーコード/ローコード開発ツールを訴求することは避けた方が良いと考えられる。
次頁以降では様々な調査データを元に、上記3つの定説に対して慎重であるべき理由と共に、IT企業がRPAやノーコード/ローコード開発ツールを訴求する際に留意すべきポイントについて述べている。

■定説1の検証:RPAは「人材不足を補う」よりも、「ヒトによるミスを減らす」という訴求が堅実
始めに「定説1:RPAによる自動化は人材不足を補う手段として提案するのが最も効果的である」を検証する。以下のグラフは中堅・中小企業に対して「業務アプリケーションの導入/更新における全体的な方針」を尋ねた結果の中から、回答割合の高い項目を抜粋したものだ。つまり、ユーザ企業が業務システムの導入/更新において今後何を重視するか?を示す結果と言える。 2023年4月に施行された「中小企業における月60時間を超える時間外労働の割増賃金率引き上げ」や2023年12月に猶予期間が終了する「改正電帳法」などを踏まえて、法制度対応(※2)、従業員の働きやすさ(※3)、ペーパレス化(※4)といった項目が重視されていることが確認できる。そうした取り組みを効率化する手段として最も高い値を示しているのが自動化(※1)である。
一方、中堅・中小企業の多くは依然として人手不足の課題を抱えている。そのため、IT企業としては「法制度に起因する不可避の業務効率化が迫る中、中堅・中小企業では人材が不足している」 ⇒ 「人材不足を補う手段として、RPAをアピールすべき」といった定説1のアプローチを選択しやすい。
そこで確認しておくべきデータが以下のグラフである。これは中堅・中小企業に対して「RPA活用の基本方針」を尋ね、導入済みと導入予定の状況別に集計した結果の一部を抜粋したものだ。 人手不足(※7)や働き方改革(※6)に起因するRPA適用の割合は導入済みと比べて導入予定の方が高くなっており、定説1のアプローチは基本的には正しいことがわかる。 だが、導入予定では「ヒトによるミスを減らす手段としてのRPA適用」(※5)の方が高い値となっている点に注意が必要だ。「人材不足を補うRPA」は文脈によっては「ヒトを代替するRPA」と解釈される可能性があり、日本の中堅・中小企業では従業員の削減を伴う業務効率化を嫌気する傾向も少なからず見られる。そのため、定説1については「人材不足を補う」よりも、「ヒトによるミスを減らし、従業員の生産性を高める(その結果として人材不足の軽減にも寄与する)」といった表現の方が堅実だ。このように中堅・中小向けのアプローチにおいては根本的なロジックは同じでも、その表現を工夫することが大切となってくる。


■定説2の検証:内製化を焦らずに、アジャイル開発や伴走型SI/サービスで協調体制を築く
続いて、「定説2:ノーコード/ローコード開発ツールによってユーザ企業における内製が増加する」について見ていくことにする。
以下のグラフは中堅・中小企業に 「DXに取り組む際の基本方針」を尋ねた結果から、回答割合の高い項目を抜粋したものだ。つまり、中堅・中小企業がDXに取り組む上で何を重視しているか?を示したデータである。 真のDXを実現するためには、業務そのものを変えていく必要がある。上記の結果を見ると、中堅・中小企業としても業務システムを改善するという現実的な取り組みを進めつつ(※1)、DX人材の育成/教育(※2)の重要性を理解していることがわかる。だが、「DX人材の育成/教育」は必ずしも「業務システムの内製を目指す」ことを意味するわけではない。以下のグラフは中堅・中小企業に対して、「ノーコード/ローコード開発ツールの利点」を尋ね、導入済みと導入予定の状況別に集計した結果の一部を抜粋したものだ。
「ユーザがアプリケーションを作成できる」(※3)は導入済みと比べて導入予定での値が大幅に減少しており、今後は「ユーザの要求仕様を自由に反映できる」(※4)や「ユーザの都合に合わせて改変できる」(※5)といった項目の方が高い値となっている。つまり、中堅・中小企業の多くはノーコード/ローコード開発ツールによって内製化を進めたいわけではなく、販社/SIerが同ツールを活用することで、自由度が高く改変も容易な業務システム構築が可能になることを期待していると捉えることができる。 大企業では内製化が進みつつある一方、日本の中堅・中小企業は海外と比べて販社/SIerへの依存度が高すぎるという指摘もあり、定説2にはそうした背景も影響していると考えられる。中堅・中小市場でもExcel代替などの用途ではRPAやノーコード/ローコード開発ツールによる内製も見られ、将来的には内製の割合が高まっていくと予想される。だが、現段階で業務システム全般の内製化を無理に進めると、旧来のEUC(End User Computing)に伴う弊害を再発させる危険性もある。当面はアジャイル開発や伴走型SI/サービスなども併用しながら、ユーザ企業と販社/SIerの双方が協調してノーコード/ローコード開発ツールのメリットを享受することが堅実な取り組みとなってくる。


■定説3の検証:クラウド移行とは別軸で捉えるべき、システム連携手段としての訴求も有効
最後に、「定説3:RPAやノーコード/ローコード開発ツールはクラウド移行を加速させる役割を担う」を考察する。以下のグラフは中堅・中小企業に 「サーバ導入/更新や管理/運用の方針」を尋ねた結果から、定説3に関連する項目を抜粋したものだ。
DXに伴うクラウドファーストやクラウドネイティブに向けた動きを踏まえて、中堅・中小企業においても「クラウドの利点を活かす」(※1)が比較的高い値を示していることがわかる。ただし、「オンプレミスとクラウドの併用」(※2)が示すように、大企業と比べてオンプレミスの重要度も依然として高い点に注意が必要だ。 そうした中、定説3で触れられている「自動化によるクラウド移行の加速」(※4)や「ノーコード/ローコード開発ツールによる内製化に伴うクラウド移行の加速」(※3)を示す項目の値はいずれも1割未満に留まっている。したがって、現段階では中堅・中小市場においてRPAやノーコード/ローコード開発ツールがクラウド移行を加速させる強い要因となる可能性は低いと予想される。
では、IT企業としてはRPAやノーコード/ローコード開発ツールの訴求とクラウドとの関連において、どのような点に留意すれば良いのだろうか?そのヒントとなるのが以下のグラフだ。これは中堅・中小企業に対して、「DXに取り組む際の課題」を尋ねて取り組み中と取り組む予定の状況別に集計した結果の中から、定説3に関連する項目を抜粋したものだ。
以前は中堅・中小企業においても「DX=クラウド移行」という認識を持つユーザ企業が少なからず見られた。だが、※5や※6の値は今後減少すると予想されることから、「RPAやノーコード/ローコード開発ツールでシステム開発も容易になるはずなので既存の業務システム全てをクラウドサービスの組み合わせに移行する」などの発想を無理に進めようとするユーザ企業が増加する恐れは少ないと考えられる。
一方で、※7や※8の値は横ばいまたは微増となっている。IT企業としては※7や※8のような場面でRPAやノーコード/ローコード開発ツールを上手く活用することが大切だ。例えば、ユーザ企業は新規ビジネスの基盤をクラウド上で完結させることを望んでいても、実際は既存のオンプレミス環境との連携が必要となることもある。こうした時にRPAやノーコード/ローコード開発ツールを用いた連携を提案すると共に周辺の既存システムの改善/刷新にも同ツールを適用すれば、ユーザ企業にとって投資対効果の高いシステム構築手段となる。このようにRPAやノーコード/ローコード開発ツールの訴求はクラウド移行とは別の軸で捉えておくことが大切だ。


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