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はじめに
前回に続いて、2022年に公開された論文「Hashing Design in Modern Networks: Challenges and Mitigation Techniques」を紹介していきます。この論文では、ECMPなどのマルチパス技術を用いた現代のデータセンターネットワークにおける、負荷分散用のハッシュ関数に関わる課題が説明されており、論文の筆者らが考案した、数学的な理論に基づいた解決策が紹介されています。
「Color recombining」によるハッシュ関数の再利用
前回の記事では、ECMPによる負荷分散におけるハッシュ関数の課題を説明しました。複数の階層からなるネットワークアーキテクチャーでは、それぞれのスイッチが使用するハッシュ関数に相関があると、使用する経路に偏りが生じるという問題です。たとえば、図1は、Googleのデータセンターで実際に利用されていたClosトポロジーのネットワークを説明のために少し単純化したものです。このネットワークで、左下のスイッチS1から右下のスイッチS2に至る経路を考えると、ECMPによる負荷分散が8回行われます。したがって、互いに相関の無い、8種類の独立なハッシュ関数が必要となります。しかしながら、この環境で使用しているスイッチングチップには6種類のハッシュ関数しか実装されておらず、このままでは、経路の偏りを避けることができません。
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