中堅・中小企業で「Device as a Service」の普及が進まない要因とその打開策

ノークリサーチは中堅・中小企業で「Device as a Service」の普及が進まない要因とその打開策に関する分析結果を発表した。

<デスクトップ仮想化やリース/レンタルとは異なる固有のメリットを適切に伝えることが大切>
■違いや使い分けを適切に啓蒙していけば、2つの「DaaS」は共に今後の伸びが期待される
■簡易オフィス内でエンドポイント端末を利用しているユーザ企業は有望な訴求対象となる
■調達時のツール事前導入によって多様な端末環境を管理できることが重要な差別化要素

PRESSRELEASE(報道関係者各位) 2023年1月23日

中堅・中小企業で「Device as a Service」の普及が進まない要因とその打開策

調査設計/分析/執筆:岩上由高


ノークリサーチ(本社〒160-0022 東京都新宿区新宿2-13-10 武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニTEL:03-5361-7880 URL:http//www.norkresearch.co.jp)は中堅・中小企業で「Device as a Service」の普及が進まない要因とその打開策に関する分析結果を発表した。本リリースは既刊調査レポート「2022年版 サーバ&エンドポイントにおけるITインフラ導入/運用の実態と展望レポート」を元に更なる分析を行った結果の抜粋である。

<デスクトップ仮想化やリース/レンタルとは異なる固有のメリットを適切に伝えることが大切>
■違いや使い分けを適切に啓蒙していけば、2つの「DaaS」は共に今後の伸びが期待される
■簡易オフィス内でエンドポイント端末を利用しているユーザ企業は有望な訴求対象となる
■調達時のツール事前導入によって多様な端末環境を管理できることが重要な差別化要素


■違いや使い分けを適切に啓蒙していけば、2つの「DaaS」は共に今後の伸びが期待される
「DaaS」と表記される用語は2つある。1つはデスクトップ仮想化(VDI)をクラウド形態で提供する「Desktop as a Service」、もう1つは端末の調達、導入/設定、管理/運用、廃棄のライフサイクル全体をサービスとして提供する「Device as a Service」である。前者は大企業で既に多くの導入例があり、「Windows 365」などの登場によって今後は中堅・中小企業への普及も期待される。ただし、既存のPC環境からの変化も大きいため、移行の障壁をどうクリアするか?が課題となっている。一方、後者は既存のPC環境を大きく変えずに管理/運用の負担を軽減できるという点で中堅・中小企業に適した選択肢だ。後者は「ライフサイクル管理サービス」や「PC-LCM」と呼ばれることもあり、日本HPの「HP Device as a Service」やデル・テクノロジーズの「Dell PC as a Service」といった大手PCベンダのみならず、横河レンタ・リースの「Cotoka for PC」、PC管理/運用を支援するサービス「JasmySecure PC」を提供するジャスミーが自社サービスとPC貸与を組み合わせたDevice as a Serviceを展開するなど、様々な業態のIT企業が参入している。 しかし、年商500億円未満の中堅・中小企業700社(有効回答件数)に対して導入済みエンドポイント管理/運用の形態を尋ねた左下のグラフを見ると、「Device as a Service」の導入割合は「Desktop as a Service」と社内設置型VDI/SBCを合わせたVDI全体を4ポイント程度下回っており、広く普及した状況には至っていないことがわかる。(本リリースの元となる調査レポートでは様々なエンドポイント形態の現状と今後を集計/分析しているが、ここでは2つの「DaaS」に関連した結果のみを抜粋している。また、「Device as a Service」は「ライフサイクル管理サービス」と表記している)
一方、導入/更新を予定しているエンドポイント管理/運用の形態を尋ねた右上のグラフでは「Device as a Service」と「Desktop as a Service」のいずれも導入済みと比較して回答割合が高くなっており、両者の差も小さい。したがって、「Device as a Service」の市場は今後拡大していくことが期待される。ただし、そのためには既存のPC環境や「Desktop as a Service」との違いや使い分けを適切に啓蒙することが不可欠となる。次頁以降ではエンドポイント端末の利用場面や管理/運用の課題を尋ねた結果を元に、中堅・中小企業に対して「Device as a Service」導入を訴求していくための留意点について考察していく。


■簡易オフィス内でエンドポイント端末を利用しているユーザ企業は有望な訴求対象となる
本リリースの元となる調査レポートでは以下のような選択肢を列挙して、導入済みエンドポイント端末の利用場面(複数回答可)を尋ねている。
・自社オフィス内 例) 自社が所有する、または恒常的に利用しているオフィスビル
・簡易オフィス内 例) 企業が契約するシェアオフィス、レンタルオフィスなどの小規模な貸しオフィス
・本業を担う現場 例) 工場(製造業)、建設現場(建設業)、倉庫(卸売業、運輸業)、店舗(小売業、サービス業)
・顧客や取引先 例) 商談のために顧客や取引先を訪問して、PCを用いたプレゼンテーションを行う
・移動中/外出中 例) 移動中の電車内でスマートフォンを使う、外出中の待ち時間にカフェでノートPCを使う
・ワークスペース 例) 個人が主に時間課金で利用する共用スペースや個室型ブース
・従業員の自宅 例) テレワークの一環として、従業員が在宅勤務を行う
そこで、「Device as a Service」を導入済みのユーザ企業における利用場面に何らかの特徴が見られれば、今後の導入提案において、どのような顧客にアプローチすれば良いか?を知ることができる。 実際に「Device as a Service」と「デスクトップ仮想化」を導入済みのユーザ企業に対してエンドポイント端末の利用場面を尋ねた結果を中堅・中小企業全体と比較したものが以下のグラフである。(「デスクトップ仮想化(VDI)」は前頁の「Desktop as a Service」に該当する3つの選択肢をまとめたもの)
「Device as a Service」や「デスクトップ仮想化」を導入済みのユーザ企業では中堅・中小企業全体と比べると、「本業を担う現場」「顧客や取引先」「移動中/外出中」「ワークスペース」「従業員の自宅」といった項目の回答割合が高い。つまり、2つの「DaaS」を導入しているユーザ企業はエンドポイント端末の利用場面が多岐に渡っていることが改めて確認できる。
ここで注目すべきなのは「Device as a Service」における「簡易オフィス内」の値が中堅・中小企業全体と比べて24.2ポイント高く、さらに「デスクトップ仮想化」と比較しても11.7ポイント高くなっている点だ。つまり、「Device as a Service」を導入するユーザ企業では「簡易オフィスでのエンドポイント端末利用が多い」という特徴が見られる。中堅・中小企業においても、営業拠点の配置や従業員の事情に応じて各地に簡易オフィスを設ける場合がある。だが、こうした遠隔かつ少数の端末を管理する目的で中堅・中小企業が「デスクトップ仮想化」を導入することは必ずしも得策ではない。 「デスクトップ仮想化」は同じOS/アプリ環境を持つ多数の端末が存在する状況では管理/費用の面で効率化を実現しやすい。しかし、簡易オフィスに勤務する従業員は業務形態が本社と異なることもあり、個別の端末環境が構成されやすいためだ。こうしたケースでは既存のPC環境からの変更が少なく、OSや基本アプリケーションを遠隔で統一管理しながら、個別構成も許容しやすい「Device as a Service」が有効な選択肢となってくる。このように 「Device as a Service」の訴求対象としては、簡易オフィスでエンドポイント端末を利用しているユーザ企業が有力候補の1つとなってくる。 次頁ではエンドポイント端末の管理/運用における課題と「 Device as a Service」導入提案との関連性を見ていくことにする。


■調達時のツール事前導入によって多様な端末環境を管理できることが重要な差別化要素
さらに本リリースの元となる調査レポートでは20超に渡る選択肢を列挙して、エンドポイント管理/運用における課題についても尋ねている。以下のグラフはその中から「Device as a Service」または「デスクトップ仮想化」を導入済みのユーザ企業における回答割合が中堅・中小企業全体と比べて高く、かつ「Device as a Service」と「デスクトップ仮想化」の差が比較的大きな項目を抜粋して集計したものだ。この結果を見ることで、 「Device as a Service」の導入提案において留意すべきポイントが見えてくる。
「社外持ち出し端末からのデータ漏えいが心配」(※1)では「Device as a Service」と「デスクトップ仮想化」のいずれも中堅・中小企業全体と比べて値が10ポイント超高く、2つの「DaaS」を導入済みのユーザ企業は端末データ保護の意識が高いことが確認できる。 昨今、「Device as a Service」ではデータレスPC(端末内のデータをクラウドなどにリダイレクトする仕組み)のサービスと組み合わせたものもあり、※1のニーズに対応できるようになってきている。だが、「デスクトップ仮想化」もPC環境の本体がクラウドやサーバにあり、端末からデータが漏えいするリスクを最小限に抑えることができる。したがって、※1は2つの「DaaS」に共通する訴求ポイントだが、「Device as a Service」に固有の強みとはなりにくい。「Device as a Service」の提案では、こうした点に注意する必要がある。 実際、上記のグラフで「Device as a Service」の値から「デスクトップ仮想化」を差し引いた値を列挙した左記の表を見ると、 ※1は-4.3ポイントと両者の差が小さい。さらに値もマイナスであることから、「Device as a Service」よりは、むしろ「デスクトップ仮想化」を提案する際に有効な訴求ポイントと言える。
その一方で、「社外/自宅の端末を遠隔で管理/制御できない」(※4)、「ID管理や認証処理が散在して管理できていない」(※3)、「バージョンの異なるOSを統一管理できない」(※2)の値は「Device as a Service」が「デスクトップ仮想化」に5ポイント超の差をつけている。つまり、端末の利用場面(※4)、ID/認証(※3)、OSバージョン(※2)が分散傾向にあるユーザ企業には「Device as a Service」の訴求が有効と考えられる。※4は前頁の分析結果とも符合する。さらに、※2や※3の対策を効率的に行うには端末に然るべきツールを導入する必要がある。調達段階がサービスに含まれる「Device as a Service」であれば、必要なツールを端末に事前導入しておくことも可能だ。逆に※5や※6が示唆するように、端末環境の多様性よりも企業規模(端末台数)などによる要因で管理/運用の負担が大きくなっているユーザ企業に対しては「デスクトップ仮想化」の訴求が有効と考えられる。
「Device as a Service」は調達から廃棄までを含めたライフサイクル全体をカバーしていることが大きな特徴だ。だが、その点を強調し過ぎるとユーザ企業から見た時にリースやレンタルとの違いが見えづらくなる。調達段階でツールの事前導入が行えるという利点を活かして、端末の利用場面、ID/認証、OSバージョンが分散しやすいユーザ企業に「手軽に導入できる端末統合管理の手段」として訴求することが「Device as a Service」を普及させるための重要な第一歩となってくる。

本リリースで引用されている調査レポート 180,000円(税別)

『2022年版サーバ&エンドポイントにおけるITインフラ導入/運用の実態と展望レポート』
サーバ&エンドポイント、クラウド&オンプレミスといった多角的な視点からITインフラ導入の提案ポイントを解説
【レポートの概要と案内】 リンク
【リリース(ダイジェスト)】
サーバ管理における課題&ニーズとユーザ企業が求めるクラウド移行パターン
リンク
サーバ導入の注目トピック(オフコン移行/CentOS8代替/クラウド社数シェア)の動向
リンク
企業規模別に見たサーバインスタンス数とストレージ形態の傾向
リンク
エンドポイント端末(PC/スマートデバイス)の導入実態が示す有望な販売施策
リンク
PC/スマートデバイスのシェア動向とITインフラ全体に影響する課題
リンク
本リリースの内容は上記の調査レポートに追加の集計/分析を行ったものです。こうした追加の集計/分析を「ブリーフィング」や「デスクトップ調査」として提供しています。詳細は右記をご参照ください。リンク

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